インバウンドにおけるクチコミ発信の現状 [コラムvol.342]

2017.04.03

観光経済研究部 研究員 外山昌樹

 昨年の秋から冬にかけて、「観光文化234号」(今月発行)の特集記事執筆のために、インバウンドと地域経済活性化という話題に関連した取り組みを行っている企業や団体を取材してきました。訪日外国人旅行者のお客さんが増えたきっかけを尋ねると、どの取材先も共通して「SNSやトリップアドバイザーへの書き込み」をあげていました。インバウンド客増加におけるクチコミの影響力が高いことはかねてから指摘されていましたが、改めてそのことを実感した取材となりました。

クチコミの影響力が高い理由

 私たちがモノやサービスを購入・利用するときは、広告やパンフレットなど、いろいろな情報源を参考にすることができます。その中でもクチコミは、特にサービスを利用するかしないかを検討する場面において意思決定への影響力が高いといわれています。サービスは実際に経験してみないと善し悪しを判断しづらいことが多いため、自分より先に経験した人の感想や意見は、サービス内容を推測する際の有益な判断材料となるからです。旅行で利用する宿泊、飲食、買い物といった多くの消費活動はサービス消費と見なすことができるので、インバウンド客の増減にクチコミが大きく影響するのはもっともな話といえるでしょう。

訪日外国人旅行者のクチコミ発信状況

 このように、クチコミはインバウンド消費の拡大にとって重要な要素であると考えられます。そこで、日本政策投資銀行と当財団が共同で実施したアンケート調査(「DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査(平成28年版)」)において、訪日旅行経験者の「クチコミの発信状況」を探ってみました。

 具体的には、まず、どのような内容のクチコミを発信したことがあるかについて、「満足したり、嬉しく思ったこと(ポジティブな内容)」「不満を持ったり、怒りを感じたこと(ネガティブな内容)」「満足や不満ではなく、旅行の感想など(中立の内容)」の3種類に分けて尋ねました。次に、それぞれの内容について、どのような方法で発信したか(口頭で話したか/SNSに投稿したか)を尋ねました。

 結果については、下のグラフをご覧いただくとお分かりのように、発信方法を問わず、ポジティブな内容の発信率が高いことが分かりました。日本への旅行時に満足したり嬉しく思ったりしたことを拡散してくれていることになりますので、これは良いニュースであるといえるでしょう。その一方で、ネガティブな内容を発信した人が一定割合でいることも無視できません。日本に関する悪評も広まっており、特に訪日経験がない人がそうした情報に接触した場合、日本への訪問を思いとどまらせてしまうことにもなりかねません。SNSなどを定期的にチェックし、ネガティブな内容の投稿で多くの人から指摘された箇所を継続的に改善していくことが求められます。

 また、発信方法による違いを見てみたところ、発信内容を問わず、友人や知人に話した場合の方が発信率は高いことが分かりました。フェイスブックやインスタグラム、トリップアドバイザーといったオンライン上のクチコミの拡散力が高いことは確かですが、リアルな友人や知人を通じたクチコミ情報の流通量もそれなりにあると推測できます。こうしたオフラインのクチコミについても、引き続き注目していく必要があるといえます。

図1 訪日旅行経験に関するクチコミ発信率
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今後の課題

 今回のアンケート調査では、クチコミの発信内容と発信方法に関する大まかな現況を明らかにすることはできました。しかし、「SNSのクチコミ内容は外部の人間もある程度把握できるものの、旅行者が友人や知人に話した内容をどのように把握すればよいか」という点や、「ポジティブな内容のクチコミ発信を促すためにはどうすればいいか」という点までは踏み込めていません。今後はこうした視点からも検討を加えていき、インバウンドにおけるクチコミマーケティングの活用に向けた有益な知見を積み上げていきたいと思います。

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