機関誌「観光文化」

道路と観光 (観光文化 173号)

道路と観光 (観光文化 173号)

※転載はご遠慮ください

 特集 :道路と観光 ・・・今、道路に期待されること

発行年月
2005年09月発行
判型・ページ数
B5判・32ページ
価格
定価1,540円(本体1,400円 + 税)

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[巻頭言]道路と観光 社団法人道路緑化保全協会会長 鈴木忠義

 観光は人間が広大無辺の時空を超え巡り、自らドラマを展開する行為である。そこでは、 さまざまな“みち”を辿り、人それぞれの体験を享受している。それゆえみちは、野山や 村々の小径、門前街の参道、古都、近代都市の街路、技術の粋を集めた高速道路まで、その種類と機能は限りない。しかし、いずれにしても、道路は意味をもって人間が創造した ものである。そして観光のための道路で、最も完成度の高いものはアメリカで早くから発生と発達を見たパークウェイである。私はこれを自動車の散歩道とみている。わが国は、自動車の普及と発達においては先進諸国の仲間入りをすることができた。以下では、ゆるされる紙幅で本質論的なことを述べることとした。
 人間は文明をもった生き物である。しかも好奇心を抱き、さまざまな文明を開いてきた。わが国とドイツは文明と文化を使い分けている。私も文明は手段で、文化は目的と理解し、ものごとを考えることとしている。たとえば、自動車はエネルギー問題に課題を残しているが、文明の利器(手段)としては優等生である。
 ところでその手段をどう使うか、そして人間の生き様(文化)をどう築くかということを進歩の尺度としなければ、手段の目的化という罠にはまってしまう。そこで“みち”の造り方次第で、自動車文明は自動車文化に変わるはずである。したがって、国づくり、地域づくり、まちづくりには文化の視点が重要になってくる。
 文明はわが国に富と時間の余剰を生み出した。天変地異と貧資源の国であっても文明国になることができた。しかし“生活があって人生のない一生ほどわびしいものはない”と作家の遠藤周作さんは言っている。私も生活は文明、人生は文化と解釈している。
 観光は自分の人生を発見したり、成長させたりする文化現象といえる。そして、余暇活動の主要なものであろう。人間としての生きがい対象は、経済型、政治型、理論型、審美型、宗教型、愛情享楽型の6つに分類できるといわれる。観光は、これらが複雑にからみあって、生きがい感を生み出し、意外な土産品、土産話、学んだこと、美しさに感動し、心が安まり、人の情を体験することができる。
 道路は人間が創るもの、その手段に溺れることなく、人生の発見と成長にこたえるべく、美しく、楽しく創らなければならないはずである。

(すずき ただよし)

掲載内容

巻頭言

道路と観光 社団法人道路緑化保全協会会長 鈴木忠義

特集

特集1 国土と道路、観光・文化・景観 P2 野村和正
特集2 動き始めたシーニックバイウェイ北海道の現状と今後の課題 P6 和泉晶裕
特集3 道の駅とみうら「枇杷倶楽部」を語る P10 加藤文男
特集4 新たな北海道観光スタイル確立に向けて
  ・・・外国人観光客のレンタカー観光実証実験・調査と将来展望 P14
久保田貴宏

連載

連載I あの町この町 第11回 旧家の訓・・・長野県須坂市 P18 池内 紀
連載II 英国物語13 英国の立法、行政、政党 P24 長谷川洋子
連載III ホスピタリティの手触り32 「定刻」の美学と呪縛 P26 山口由美
視点 未知普請という考え方 P28 鈴木和平
新着図書紹介 P32