訪日団体旅行客は日本のどこで何をしているのか? ―「JTBF訪日旅行商品調査」の結果から― [コラムvol.332]

2017.01.23

観光経済研究部 主任研究員 柿島 あかね

確実に存在感を増す外国人旅行者の存在

 近年、訪日外国人旅行者数は好調に推移し続け、先日の観光庁の発表によると、2016年は過去最高となる2,404万人を記録しました。2,000万人と言われてもピンときませんが、以前に比べて私の日常生活でも外国人旅行者の存在感が増していることは確かです。例えば、通勤途中、信号待ちをしているとガイドブックやタブレットを持った外国人旅行者に道を聞かれる機会が格段に増え、銀座を少し歩けば中国人のツアー客を見ない日はないほどです。世界都市・東京であるがゆえかもしれませんが、ここ数年の身近な「変化」を感じられる方は多いのではないでしょうか。

 そこで疑問に思うのは、これだけたくさん来ている外国人が日本のどこで何をしているかです。特定の訪日外国人に密着する番組等を通じて断片的にその行動を知ることはできますが、各国の訪日団体旅行商品では、どのようなルートで、何をして楽しんでいるのか、国ごとにどんな違いがあるのかという点を調査した例はなく、その概要はあまり知られていないのではないでしょうか。

 そこで、本コラムでは2015年度より当財団の独自調査として、団体ツアー利用比率が高い台湾、香港、中国の団体旅行商品を対象とした「JTBF訪日旅行商品調査」(以降「本調査」)(表1)の分析結果の一部を雑感とともにお伝えしたいと思います。詳細については「観光文化232号」「旅行年報2016」をぜひご参照ください。

表1:(公財)日本交通公社「訪日団体旅行商品調査」調査概要
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どこをどう回って楽しんでいるのか?

 ―じっくり派の台湾・香港/欲張り派の中国―

 各国・地域の旅行商品の都道府県訪問率(全旅行商品に占める当該都道府県を訪問した商品の割合)では台湾や香港が各都道府県の訪問率がおよそ20%以下で分散傾向であるのに対し、中国は一部の都道府県に訪問が集中し、大きな偏りが生じています(図1)。

図1:都道府県への訪問率
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資料:(公財)日本交通公社「訪日団体旅行商品調査」より作成

 また、訪問ブロック数(訪問した地方ブロックの数を指す/例:九州ブロックのみ訪問している場合は1ブロック、北海道ブロックと東北ブロックを訪問している場合は2ブロックとカウント)別では台湾や香港の半数以上の商品が1ブロックであるのに対し、中国では4割が4ブロックとなっています(表2)。

 これらの結果から、中国の場合、訪問率が高い都道府県からも分かるようにゴールデンルート周遊型、台湾・香港は地方ブロック周遊型の旅行商品が多いことが浮き彫りになってきました。

表2:訪問ブロック数別旅行商品割合
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資料:(公財)日本交通公社「訪日団体旅行商品調査」より作成
※地方ブロックは「北海道」「東北」「関東」「甲信越」「東海」「北陸」「近畿」「中国」「四国」「九州」「沖縄」で集計

何をして楽しんでいるのか?

 ―買い物は依然人気、見学等の手軽な体験も好まれる―

 「爆買い」が世間一般に浸透したように買い物は各国とも行程の中でも目玉としているケースが少なくありません。しかし、具体的に訪れているスポットを見てみると、中国、台湾では免税店を好む傾向にあり、香港では商店街への訪問率が最も高いことや、中国や台湾と比べて市場や道の駅等への訪問率も高く、地域に根差した商業施設を好む傾向にあること等が分かってきました(図2)。

図2:買い物スポット分類
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資料:(公財)日本交通公社「訪日団体旅行商品調査」より作成

 各国、各社の行程表を見ていても団体ツアーは基本的に「見る」観光が中心となっていますが、旅行者が参加できるような体験プログラムも取り扱われています。例えば、各国・地域に共通して多いのが、移動の「手段」ではなく、乗ること自体が「目的」となっている乗車・乗船体験。具体的な例では柳川のライン下りや箱根の観光船等が挙げられます。また、お菓子やお酒等の工場見学も人気を集めています(図3)。いずれも手軽な体験ではありますが、こうした体験プログラムを旅程に組み込む商品も徐々に増えているようです。

 

図3:体験プログラム分類
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資料:(公財)日本交通公社「訪日団体旅行商品調査」より作成

 また、これは余談になりますが、特定の国の旅行商品に頻繁に登場するスポットがあります。その顕著な例が御殿場市の平和公園です。調査対象である中国の492商品(2015年7~8月出発商品)のうち、なんと21.5%(106商品)が平和公園に立ち寄っており、訪問率は、中国の旅行商品の立寄り先、全459ヶ所中10位とまさに人気観光地になっています。表3の通り、10位以内は比較的著名な観光地が続きますが、平和公園はこれらに比べて認知度が高いとは言い難く、異色な観光地といえるかもしれません。人気を集めるその理由は富士山の眺望ですが、これに加えて入場無料であること、観光バスの駐車場が整備されていることも大きなポイントです。魅力的な資源がそこに存在していることもさることながら、団体旅行においてはこうした利用者のための十分な整備も重要です。平和公園の場合はこの2つの条件が合致した結果とも考えられます。
 

表3:観光スポット別訪問率上位10位(中国)
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資料:(公財)日本交通公社「訪日団体旅行商品調査」より作成

おわりに

 本調査の結果から、台湾や香港を中心に日本の地方に強い関心を持っていることが分かりました。しばらくすると、中国でも地方を周遊するツアーが増えるかもしれません。その際、本調査が外国人旅行者を受け入れる地域にとって、外国人旅行者の来訪による観光効果(経済的な効果、社会的な効果、文化的な効果等)を促進するための参考資料となるよう調査を進めていきたいと思います。

 例えば、工場見学が人気を集めているとお伝えしましたが、外国人旅行者を受け入れる地域の側に立てば、地場産業を外国人に知ってもらい(地域の資源の保存や伝承)、購入につなげるための機会(地域への経済波及効果)として活用することも期待できます。訪日団体旅行商品の現状を把握した上で、外国人旅行者を受け入れる地域にとってどんな効果が期待できるのか、また、その効果を生み出し、促進していくためにはどのような取組をしていくことが重要なのかといった点についても意識した上で、今後も分析を進めていきたいと思います。

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