新しいタイプの鉄道車両の開発と観光利用 [コラムvol.3]

2007.10.10

研究調査部 有馬義治

要旨

ここ数年、新しいタイプの鉄道車両の開発が進められ、一部は実用化されている。鉄道はそれ自体が観光資源の一つとなり得るし、鉄道利用者が増加することにより、観光地にも一定のプラス効果が期待できる。鉄道を観光地づくりに活用することをあらためて検討してはどうか。

1.開発が進む新しいタイプの鉄道車両

 ここ数年、従来の鉄道車両とは構造やメカニズムが異なる新しいタイプの鉄道車両が開発され、実用化されています。鉄道とバスの両方の機能を持つ車両も誕生しています。主なものをあげると、軌間可変電車(フリーゲージトレイン、Gauge Change Train=GCT)、ハイブリッド車両、デュアル・モード・ビークル(Dual Mode Vehicle=DMV)などがあります。
 GCTは、線路の幅(軌間)に合わせて自動的に車輪の幅を変えられる車両で、日本では主に、標準軌(1435mm)の新幹線と狭軌(1067mm)の在来線を直通できる電車として開発が進められています。GCTを使用すると、山形新幹線、秋田新幹線のようにわざわざ在来線を標準軌に改軌しなくても、新幹線電車を在来線に直通させられます。1998年に試験車両が完成し、国内外で走行試験が続けられています。現在、整備新幹線の一つである九州新幹線長崎ルートに導入が予定されている他、いくつかの路線で導入が検討されています。
 ハイブリッド車両は、バッテリーを搭載して、ブレーキ時に発生するエネルギーをバッテリーに回生させて、発進時の動力や走行時の補助動力として利用する車両で、省エネルギー・クリーンエネルギーの車両とされています。その仕組みは電車にも気動車(ディーゼルカー)にも応用でき、電化区間と非電化区間を直通することも可能です。今年7月から世界で初めて、JR東日本の小海線でハイブリッド気動車「NEトレイン」(New Energyから命名)の営業運転が始まりました。
 DMVは、JR北海道が開発した鉄道の線路でも一般道路でも走れる車両で、線路では鉄車輪を、道路ではゴムタイヤを使って走行します。2004年に試験車両が完成し、今年4月から、釧網本線の浜小清水~藻琴間で「試験的営業運行」が行われています。往路は線路、復路は道路を走るコースで1日3回運行され、7月からは、復路に藻琴湖や涛沸湖を回るコースになっています。販売座席が12席と少ないため、JR北海道の企画旅行商品として販売されています。

2.鉄道自体が一種の観光資源

私は鉄道に乗るのが大好きで、2001年にはいったん、日本の鉄道(普通鉄道、軌道、モノレール、新交通システム)全線を乗りつぶしたほどです。新しい車両にも関心がありますが、上記のNEトレインにもDMVにも、まだ乗る機会がありません。
 個人的なことはともかくとしても、寝台特急「北斗星」「カシオペア」「トワイライトエクスプレス」や各地のSL列車などに根強い人気があり、「ローカル線を旅する」という類の雑誌やガイドブックが多数発行されていることからもわかるように、鉄道旅行そのものが、十分観光旅行の動機・目的の一つとなり得ると思います。
 その意味で上にあげたような新しい鉄道車両も、単に移動の手段としてだけでなく、それに乗ることも旅行の魅力と感じる観光客を誘発することが期待できます。さらにDMVは、現在多くの観光地で二次交通の確保・整備が課題となっている中で、今の開発段階ではまだ輸送力が小さいという問題はありますが、地域の鉄道の拠点駅から鉄道の通っていない観光地にも直通できる交通手段として、その活用を検討している観光地、鉄道事業者がいくつかあるようです。

3.観光地づくりに鉄道の活用を

 鉄道に乗ることが主な目的という旅行であっても、私自身がそうであったように、途中の乗換駅や目的地では、それなりに観光、宿泊、飲食といった現地での消費行動が伴います。したがって、鉄道を活用した観光振興ということは、それなりに効果が期待できることではないでしょうか。
 折から「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」が今年5月に成立し、10月から施行されます。この法律では、地域の公共交通を維持・活性化するために、次世代型路面電車(LRT)の導入や、廃止届のあった鉄道の維持、DMVによる運送事業の実施などに対して、国が支援できることとしています。高齢化社会が今後も進展する中で、ますます鉄道など公共交通機関の果たす役割が期待され、これを機会に鉄道と観光地づくり、地域づくりについて、あらためて検討してみるのもいいと思います。

フリーゲージトレイン デュアルモードビークル
フリーゲージトレイン(GCT)試験車両
(国土交通省鉄道局ホームページよりコピー)
デュアル・モード・ビークル(DMV)
(WebサイトWikipediaよりコピー)

 

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