観光地づくりオーラルヒストリー<第2回>原 重一氏  3.「観光」に関する失敗と反省

2017.02.22

(1)観光分野で何を失敗し、何を反省しているか

 当然、反省はいろいろありますが、我々観光に関わる専門家が、これまで観光をする人―観光“者”を観光“客”―マーケットとしか見てこなかったのではないということがあります。
 改めて言うまでもなく、観光という活動・行動は、人間にとって必須な大事な活動の一つです。このことを再認識した上で、観光者を満足させるにはどうしたらいいのか、観光者の立場に立ってもう一度総論を構築しなければならないのではないか。僕自身は、以前からそういう主張をしてきたつもりですが・・・。そんな立場で、僕は今、心ある人達に1999(平成11)年版観光資源写真集「美しき日本」の巻末にまとめた鈴木委員長が語る「観光旅行と観光資源」の再読、一読を奨めています。
 僕が故麦屋さん達の活躍のお陰で都の観光事業審議会の委員をやっていた頃、青島知事の時代です。東京都の観光担当部署は生活文化局にありましたが、折からのインバウンド時代に呼応して産業労働局に移されました。東京都も遅ればせながら、都心観光も含めて、海外から観光客にどんどん来ていただいて産業として活性化しようとなったわけですが、今振り返ると、あの時代、観光事業と生活文化について審議会でもっとていねいに議論しておけばよかったのでは・・・。生活文化局にあるからこそ先取りできた観光政策を打ち出せたのではないかという反省もあります。
 観光者をマーケットとしか見ないことがなぜ問題かというと、海外旅行を経験した日本人も増え、国民の観光活動も成熟しつつある中で、それに合わせて、観光地や旅館も変わらなければならないにもかかわらず、何も変えようとせずに、新しいマーケットを求めているからです。今、国内の観光者が萎縮しているのは、供給地側にも責任の一端があると思っています。温泉観光地や宿泊施設がボディーブローを浴びて、段々と衰弱しているにもかかわらず、変わろうとしないことは問題だと思います。
 繰り返しになりますが、日本の成熟した観光者は少数のお気に入りの旅館には出かけますが、温泉観光地には興味を示しません。観光地そのものを楽しめない、居心地が良くないことは、問題だと思います。旅慣れた観光者に対応する観光地づくり―再生、再開発が必要です。
 農業が製造業と無用な(生産性)競争にさらされ、農家の後継者が育たず、農民が減少、高齢化し、農家は残っても多くの農村集落は限界集落と言われています。農村が限りなく都市化し、農業、農民、農家、集落、農村はどうなるか、どうするかという農業問題は、出口も見つからず模索しています。この農業問題と重ねてみると、観光問題も温泉観光地や旅館の先行きが心配なのです。

第2回・・・元(財)日本交通公社 常務理事 原重一氏 

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