観光地づくりオーラルヒストリー<第5回>古賀 学氏  1.「観光」への接近

2015.03.31

【PDF版(786 KB)】

観光地づくりのプロフェッショナル
-楽しむことが長続きする

-元(社)日本観光協会 総合研究所長 古賀 学氏
 (現 松蔭大学 観光メディア文化学部 教授)

 1949(昭和24)年福岡生まれ、1972(昭和47)年東京農業大学農学部造園学科卒業。同年(社)日本観光協会(現公益社団法人日本観光振興協会)入協。観光地づくり、観光計画の策定、観光地の活性化に取り組む。業務部計画調査課長、情宣部情報システム課長、総務部総務課長、調査企画部長、総合研究所長等を経て、現在に至る。

(1) なぜ観光の道を選んだか

●生まれ~観光との出合い

 生まれは九州・福岡の大牟田で、父が勤めていた三井東圧の社宅に2歳まで住んでいました。その後、父が東京にある社団法人に転職したので、東京の調布に移ってそれからずっと東京です。小中高、桐朋でした。

 母方の実家は下関の「八代館」という旅館で、今も営業しています。当時は大洋漁業の指定旅館で、祖父はふぐの調理ができました。東京に移ってからもよく母方の実家には行っていましたが、私が食べ物で初めてうまいと思ったのが、この旅館で食べたふぐの吸い物です。幼稚園か小学校1年の頃ですね。ふぐは皿に並んでいるのを集めて食べないと食べた気がしないし、ウニも丸ごと一つ食べるのが当たり前という感じでした。食材を仕入れるため、祖父と一緒に唐戸市場に行ったのも覚えてます。今は観光客も気軽に入れるけど、当時の唐戸市場は業者しか入れませんでしたね。

写真1 取材風景

写真1 古賀学氏への取材風景
(2014(平成26)年7月24日、松蔭大学厚木ステーションキャンパス)

 観光との最初の出合いは1964(昭和39)年、中学3年の時に房総半島を自転車で1周したことです。私は当時柔道部にいて、最初は部の友達同士で行こうとしたんですが「中学生だけで旅行してはダメ」と言われ、高校生の先輩も3人くらい誘って合計6人くらいで行きました。予約は全然しない3泊4日の旅行でした。

 鴨川で風呂に入った時、私が真っ赤に日焼けしてるので、隣にいたおじさんが話しかけてきて「今日泊まるところがないんです」なんて話をしてたら、「学校の宿直室にみんなよく泊まってるよ」と教えてくれて。行ったらそこは満員だったんだけど、「お寺で泊めてくれるかも」と言われて、近くのお寺に行ったら本堂の横に泊めてくれたんです。そういう旅ができたのは楽しかったなと思います。

 高校1年の時には、九州一周の旅をしました。当時は地域ごとの国鉄周遊パスがあり、「九州一周21日間」というパスがあったので、それを買って友達3人と一緒に回りました。福岡から阿蘇、鹿児島などほぼ1周しました。印象が強かったのは長崎県の平戸です。神社と教会が重なり合っていたり、大きいソテツが生えている風景が印象的でした。10年前に再訪しましたが、ほとんど風景が変わっていませんでしたね。

 キャンプをしようと思ってテントを持参したんですが、結局3回しか張らなかったですね。ほとんど旅館に泊まっていました。当時、1泊600円くらいでした。宮崎の旅館で、仲居さんにどうやって泊まったの?と言われ、こういう風に聞いて泊まったと言うと、「そういう時は込み込みでいくらかって聞かないとダメよ」と言われました。サービス料と税を入れた料金のことですね。それを聞いてから、いつも旅館では「込み込みでいくらか」と聞くようになりました。

 平戸の旅館に泊まった時も、「本館と別館があって、本館の方がきれいだけど別館の方が安い」と言われたり。観光地側がいろいろ、旅の仕方を教えてくれたんですね。そういうのが面白かったです。

●東京農大入学から卒業まで

 大学は東京農業大学に1967(昭和42)年に入学しました。もともと図面を書くのが好きで建築家になりたかったんですが、なぜ東京農大を選んだかというと、小学校から中高とずっと同級の友人に中島君という友人がいて、彼は中島健という造園の大家の息子だったんです。高校の頃に中島さんのところで草取りのバイトをやったり、彼の家に遊びに行って造園の話を聞いているうちに、建築より造園の方が面白いかなと思うようになりました。中島君も東京農大に進み、学部も一緒でした。 

 農大では造園工学について専攻しました。水に興味があったので噴水について勉強していたんです。金井格教授(当時助教授)が担当の先生でした。設計まではできなかったんですが、日比谷公園や飛鳥山公園で噴水の写真を撮ってきたりしていました。

 大学時代、観光の授業もありました。当時、高橋進先生が日本観光協会の業務部長だったんですが、非常勤で「観光および風景計画」という講義を教えていました。高橋先生は景観という言葉を使わず、風景という言葉にこだわっておられました。

 大学に入ってからは友達と四国一周して、3年の時にはアメリカに1ヶ月くらい行きました。初めての海外旅行です。ロスを中心に回り、メキシコにも足を延ばしました。大学4年になって就職活動をするという時、金井先生からいろいろな就職先を紹介されたんですね。「観光が好きです」とたまたま一言言ったら、「じゃあ日本観光協会(日観協)に行ってみろ。図面は大きくなるけれど。」ということで紹介されたのが高橋先生でした。 

 高橋先生に会いに行ったら、「夏頃に一般公募の試験をやるので受けに来い」ということでした。私はそれからアメリカ旅行の時に知り合った友人と東北から北海道一周して、下関まで行って、瀬戸内海、和歌山を回って東京に帰るというトータル40日くらいの旅をしたんですが、戻った次の日が公募の締切日でした。試験は受かりましたが、一般公募で日観協を受けたのは私だけでしたね。

 大学卒業の時、日本の中で行っていない都道府県は沖縄県だけでした。いろんなところに行きましたが、自分が旅好きだと感じたことは一度もないんですよ。ただ、何となく行くのが義務みたいな…。休みになるとどこかに行かなきゃいけないという強迫観念があって。なぜなのか、よくわからないんですが。

 家族旅行は年に1回くらい行ってましたが、うちの親は本ばかり読んであんまり旅行に行かないタイプだったから、「自分から動かないと」という思いがあったのかもしれません。あとは友達が後押ししたというのもありますね。高校生の時、九州一周に行く前は、何度も学校で集まってスケジュールを作ったりしてました。

表-1 古賀学氏の略歴

【経歴】
1949(昭和24)年 福岡県生まれ
1972(昭和47)年 東京農業大学農学部造園学科卒業
1972(昭和47)年 社団法人日本観光協会入協
※業務部主査、業務部計画調査課長、情宣部企画宣伝課長、同情報システム課長兼務、旅フェア実行委員会事務局長兼務、関東支部事務局長、総務部総務課長、調査部長、調査企画部長、を経て2006年に社団法人日本観光協会総合研究所設立、所長に就任
1985(昭和60)年-現在 日本離島研究会幹事長
2006-2008(平成18-20)年 日本観光研究学会理事
2007(平成19)年 自動車旅行推進機構幹事・事務局長を経て現在顧問
2008(平成20)年 松蔭大学経営文化学部教授
2009(平成21)年 松蔭大学観光文化学部教授
2010(平成22)年-現在 日本観光研究学会監事
2010(平成22)年-現在 NPO法人観光文化研究所理事長(松蔭大学内)
2013(平成25)年-現在 松蔭大学観光メディア文化学部教授(観光概論、観光文化論、地域資源論、地域振興論)
2014(平成26)年-現在 NPO法人かやぶき集落荻ノ島理事
2014(平成26)年-現在 NPO法人交流・暮らしネット理事

【表彰等】
1989(平成元)年 利賀村(現富山県南砺市)より「感謝状」授与
1997(平成9)年 東京農業大学より「造園大賞」授与
2004(平成16)年 利賀村より「村政功労者」表彰
2005(平成17)年 高柳町(現新潟県柏崎市)より「感謝状」授与

【主な講師等】
1980-1983(昭和55-58)年 立教大学ホテル観光講座講師(観光計画論2)
1983-1985(昭和58-60)年 トラベルジャーナル旅行専門学校講師(観光事業論)
1986-1989(昭和61-平成元)年 国際観光文化学院講師(観光企業論)
2001-2007(平成13-19)年 東京家政学院大学家政学部非常勤講師(観光リゾート論)
2002(平成14)年-現在 東京農業大学環境科学部造園科学科非常勤講師(観光計画論)
2008-2010(平成20-22)年 東京大学まちづくり大学院非常勤講師
2010-2014(平成22-26)年 立教大学観光学部兼任講師(国際観光政策論、観光行政・政策論)

【主な委員等】
・南砺市観光大使
・国土交通省「水源地域対策アドバイザー」
・地域活性化センター「地域振興アドバイザー」
・国土交通省「観光統計の整備に関する検討委員会」委員          
・国土交通省「まちめぐりナビプロジェクト(まちナビ)」選考委員
・観光庁「観光圏整備・観光地域づくりプラットフォーム支援事業検討会」委員等
・観光庁「“地域いきいき観光まちづくり事例集”有識者委員会」委員
・内閣府・国土交通省「観光カリスマ選定委員会」委員
・国土交通省東北運輸局「観光圏相互の連携を基軸とした観光復興に関する調査検討委員会」委員
・都市農山漁村交流活性化機構「農林漁業体験宿泊施設等整備調査委員会」委員
・都市農山漁村交流活性化機構「都市住民とグリーン・ツーリズムの行動を活性化させる新たな手法」選考委員
・松江市「松江市観光振興プログラム策定委員会」委員
・全国離島振興協議会「離島振興法改正検討会議」委員
・高柳町荻ノ島地域協議会「農林水産庁:食と地域の交流促進対策交付金事業(集落活性化対策)」指導
・新潟県「新潟県満足度調査委員会」委員長
・山梨県「観光振興計画策定」委員、「山梨県観光懇話会」委員
・東京都日の出町 「野鳥の森・こども自然公園設置構想検討委員会」委員長
・小金井市「小金井市観光構想計画策定委員会」委員長
・総務省「地域人材ネット」アドバイザー
・小牧市「小牧市観光計画策定委員会」委員長

*上記及び講演、業務実績等の詳細は、「日観協二十五年史 本編・資料編」(日本観光協会編、1991(平3)年)等を参照。

第5回・・・元(社)日本観光協会 総合研究所長  古賀 学氏

【PDF版(786 KB)】



新着情報News