観光地づくりオーラルヒストリー<第10回>鈴木 忠義氏  5.これからの「観光」・「観光地づくり」・「観光計画」への提言

2016.09.07

 (1)これからのわが国の観光、観光地づくりに必要なことは何か

 自然と歴史と文化をもう一度、基本にしっかり立ち戻って見直すことですね。施設ばかりに目がいくけれど、大元になるのはその地域の自然と歴史と文化で、

 各省庁には観光というものを、もう少し必需品としてとらえてもらいたいですね。食べるためだけに働くのではなく、余暇社会が到来しているわけです。その中で観光というのは、人生の目的であり、喜びなんですよね。

 ですから、いろいろな省庁の仕事に関連するはずなのに、今までは観光に関わる省庁が限られていたでしょう。例えば旧建設省などいろいろなところで、観光というともうダメなんですよ。「運輸省があるじゃないか」と言われて、弾かれちゃう。旧運輸省も、旅館ホテルの代弁者みたいなところがありました。観光に関しては、行政が縄張り争いをしないで横断的に仲良くやっていくようなことができないのかなと思っています。

 今は観光庁ができましたが、旧運輸省の延長線ではなく、本来の観光のあり方を考えたり、観光と国づくりについて取り組んでもらいたいですね。観光庁は寄り合い世帯と言われているそうだけど、それは悪いことではなく、むしろ寄り合い所帯の中で、観光というものをしっかり位置づけていくと、彼らが媒体になってくれるのでは。それによって、いろんな方面に理解が広がると思いますよ。

 要するに、「いい国とはなんぞや」ということですね。いい国になれば、人は来るんですよ。中国も韓国も東南アジアも、生産力が上がって、余裕が出て来ていますから。いい国づくりを見せないと、世界全体がよくならないし、日本の人達もまた彼らのところに行って、彼らの自然、歴史文化にふれることが必要だと思います。

 物質的にはもちろん、人間の移動手段や行動、喜びも、グローバル化してきて、それだけ文明が栄えているということですよね。それで、数億の人が動き出したら、一体どういうことが起きるのかということですね。そこでも、人間の喜びとは何なのかを考えることが、非常に大事になってくるんじゃないですかね。

 工業技術とは違って、観光の場合は、ヒューマンタッチに関わるいろいろな要素があるので人的交流が大事です。観光客を送り受け入れるという、観光の一番根幹である国際交流を促す意味でも、日本交通公社のようなシンクタンクは観光のアカデミズム集団として、東南アジアなどの発展途上国から、どんどん学生を呼び込んだらいいと思います。

 (2)どうすれば「よい観光地」が出来るのか、よい観光地とは?

 観光地での教育ですね。その教育というのは、観光とはなにかという根本的なものです。観光産業についてはいろいろ専門学校があるけど、もっと真剣に、観光の教育体系を作る必要があるんじゃないかと思います。

 (3)これから「観光計画」が果たすべき役割とは何か

 余暇社会が到来しているわけですから、観光需要をどう吸収するかを考えるには、労働時間がどう下がってきているかということをみれば、自ずとわかるわけです。

 しかしその前に、生産についてはこれまで真剣にいろいろ考えられてきたけれども、観光というのは人間本来の目的、喜びに関するということを、観光計画を考える上でもまずベースに置く必要があるのではないでしょうか。余暇というものは、本来の人間の目的であり、喜びなのだから、そのことを真剣に考えましょうということですね。

第10回・・・ 東京工業大学名誉教授 鈴木忠義氏

【PDF版(1.00MB)】