観光地づくりオーラルヒストリー<第10回>鈴木 忠義氏  ◎計画に必要な5つの要素とは

2016.09.07

 観光計画に必要なのは、「主体」、「目的」、「対象」、「手段」、「構成」という5つの要素ですね。主体と目的からニーズが決まり、対象と手段から受け入れ側が決まり、それらをまとめるのが構成となります。これは観光に限ったことではなく、どんな計画にでも使えます。

 例えばユースホステルなら、主体は若者となります。主体というのはお客さんですね。目的というのは、お客さんが何を目的とするかということです。ユースホステルなら、単なる遊びではなく、地域の情報や地域学の基礎を知るといったことも目的になり得ます。その上で、対象地はどういうところを選ぶかとなるわけです。この場合は、特に温泉地でなくてもいいわけですね。

 そういう風に考えていくと、いろいろな観光の企画を考える時にも、どういう主体に向けて行うのか、資源として何が不足しているかということもわかるわけです。常にこの5要素を頭に入れて考えることは、誰がお客さんかを考えることでもあります。

 主体の目的も時代に応じて変化します。かつて、熱海などでは宴会や接待が主な目的でした。昔は熱海で総会をやる会社も随分多く、午前中から午後3時くらいまで総会をやって、夜は懇親会と称する宴会を開くんです。今、そういう企業はないんじゃないかな。

 ホテルや旅館の経営者もそういう観点から自分たちの商売を見てみると、現状がよくわかるし、将来どうなるかということも考えられます。

 例えば、車社会になって車という手段が出て来ると、駐車場が宿泊施設の決め手になってきたわけです。そこで最初に出て来たのが、アメリカで発達したモーテルで、ポイントは車を自分の泊まっている客室のすぐそば、目の届く所に置けるということですよね。僕もそうでしたが、車を最初に持った時には傷つけられないかというのが、とにかく心配でしたから。

 計画の5要素をちゃんと押さえているのがプロです。宿泊施設などでも「どういうお客さんを狙っているのか」が大事になりますよね。計画主体は何かということをはっきりさせると。それにどういう行動がふさわしいか、どういう対象を準備したらいいのかということですよね。学生が主体で、修学旅行が目的なら、その目的に叶った対象が決まってくるわけです。

 京都はある程度遊興施設があるけど、奈良は未だに少ないのは、修学旅行が多いことにも関連すると思います。例えば斑鳩の里に何か作りたいと相談されて、アドバイスをする場合、飲み屋を作るのは違うなということになりますね。計画の5要素をちゃんと押さえることは、観光地の性格を考えることにもつながりますね。

 地域としては変えていいものと変えてはいけないものをはっきりしてくると思うんですね。ここは我々の大元になるところだから変えない、後のところは近代化してもいいけどというように。松本で言えば、お城の周囲のゾーンとかね。地域としては小さく残すところもあるでしょうし、子孫のために大きく残すところもあるでしょう。そういうことを考えるきっかけとしても、観光の意義と役割があるんじゃないでしょう。

第10回・・・ 東京工業大学名誉教授 鈴木忠義氏

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