歴史・文化観光に関する国内旅行市場調査(その2)

2015.07.23

レポート2.歴史文化資源の魅力と歴史文化観光への志向

                                       観光政策研究部 塩谷 英生

 「歴史文化観光に関する国内旅行市場調査」は2段階に分けて調査を実施している。
1次調査では、歴史文化観光への関心度、関心分野、実施回数等について聞いており、その調査結果については前回「レポート1.国内市場における歴史文化観光の需要構造」として紹介したところである。

 2次調査では、1次調査回答者の中から、中関心度層以上(「歴史文化観光地への旅行」に「非常に関心がある」または「ある程度関心がある」層)、かつ「歴史文化観光地を目的地に含む国内宿泊旅行」を年に「2回」以上実施した層を2千人抽出し、30問に及ぶ歴史文化観光の実態と志向に関する質問を行っている。
 スクリーニング条件において、調査対象から低関心度層を除くだけでなく、高関心度層であっても、宿泊旅行をほとんどしない層を対象から除いた理由は、現実の歴史文化観光市場の中核を担っているプレイヤーに対してより詳細な調査を行うためである。この条件を通過する人の比率は、1次調査回答者の39.7%にあたる(2次調査の抽出数は2千票に留めている)。そして、この層は、歴史文化観光の延べ回数の68.8%をカバーしている。
 なお、2千票のうち、矛盾回答や回答時間等をチェックすることによって無効票と判断した99票を除外した(有効票1,901票)。

 2次調査の結果については、本稿を含めて主要設問を中心に2回に分けて紹介することとしたい。今回は主に、歴史文化資源の魅力や歴史文化観光への考え方・志向を中心にとりまとめる。 また、次回のレポートでは、歴史文化観光の実態(旅行内容)と今後希望する訪問地・サービス・土産品等についてとりまとめる予定である。 (文中の写真は筆者撮影)

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4. 歴史文化観光の魅力(2次調査結果より)

①好きな歴史文化資源に関する活動 ~ 性別による差も。高関心度層で目立つ「仏像」「蔵」

 歴史文化観光の活動は多岐にわたり、限られた選択肢で網羅することは難しいが、ここでは歴史文化資源に関する活動として18の選択肢を任意に用意し、好きなものを選んでもらった(図表12)。
 全体でみると、「神社めぐり」が71.9%と最も高く、「城郭・城跡めぐり」が63.1%、「小京都めぐり」57.2%、「歴史散策・ウォーキング」55.9%、「庭園めぐり」53.3%、「仏像めぐり」49.9%の順となっている。

 

●性・年代別の傾向
 上位10項目について、男性の回答が目立つのは「城郭・城跡めぐり」「写真撮影」、女性で目立つのは「小京都めぐり」「歴史散策・ウォーキング」「庭園めぐり」「蔵の町めぐり」「洋館めぐり」である。年代別では、20代で「写真撮影」、60代以上で「庭園めぐり」の回答率が高い。

 

●関心度層別の傾向
 回答率が3割を超える活動のうち、高関心度層と中関心度層間の回答率の比がやや大きいものとしては、「仏像めぐり」「蔵の町めぐり」がある。逆に、回答率の比が小さい活動としては、「庭園めぐり」「小京都めぐり」が挙げられる。
 下位の活動では回答率の比が大きいものが多く、高関心度層の関心分野の広さが窺われる。
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②歴史文化資源について強い関心があるテーマ

 次に、より具体的で細かな歴史文化資源に関するテーマとして19の選択肢を示し、強い関心があるものを選んでもらった(図表13)。
 全体では、「世界遺産に登録された(される予定の)文化財を訪ねる」50.0%、「特別公開・特別拝観を訪れる」42.6%、「ライトアップや薪能など夜のイベントを観る」33.6%、「昔の建築技術や産業技術を知る」33.1%の順となっている。
●性・年代別の傾向
 男性で関心が高いのは「昔の建築技術や産業技術」「昔の地域づくりや都市計画の跡をたどる」「古戦場めぐり」「古地図を手に町を歩く」などである。女性では「特別公開・特別拝観」「ライトアップや薪能など夜のイベント」「煉瓦作りの建物めぐり」などが高い。
 年代別に回答率が高い項目は、20代で「ライトアップや薪能など夜のイベント」「開運祈願・御利益の旅」「古地図を手に町を歩く」「おもてなし武将隊やおもてなし忍者隊」、30代で「大河ドラマの舞台」「昔の地域づくりや都市計画の跡」、40代で「開運祈願・御利益の旅」「古戦場めぐり」、50代で「昔の建築技術や産業技術」、60代で「司馬遼太郎の『街道をゆく』を訪ねる」「柳田國男の『遠野物語』を訪ねる」、70代で「世界遺産の登録文化財」「特別公開・特別拝観」「藩校・教育遺産めぐり」「平家落人伝説を訪ねる」「語り部に話を聞く」などである。
 「ライトアップや薪能など」「開運祈願・御利益の旅」「古地図を手に町を歩く」は、若年層が高く、中高年層で低い傾向がある。
●関心度層別の傾向
 上位10項目について、高関心度層と中関心度層間の回答率の比が大きいものとしては、「古地図を手に町を歩く」「古戦場めぐり」「昔の地域づくりや都市計画の跡」が挙げられる。

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③歴史文化資源の魅力 ~ 高関心度層では背景を含めた魅力も

 歴史文化資源を訪れる際に感じる魅力について聞いた(図表14)。
 全体では、「美しさや芸術的なものを感じる」66.8%、「壮大さや力強さを感じる」54.2%、「昔の人の知恵や技術に感心する」53.6%、「昔の人々の暮らしや営みに触れる」45.6%、「歴史文化資源と自然との共存を感じる」42.6%の順となった。
●性・年代別の傾向
 性別では、全般に女性で延べ回答数が多い。男性の回答率が若干上回る項目は、「歴史文化資源と自然との共存を感じる」「気分転換や運動になるので」のみである。
 年代別では、20代で「美しさや芸術的なものを感じる」「壮大さや力強さを感じる」「気分転換や運動になるので」などが高い。30代では、「歴史文化を現代に活かす知恵に感心する」、40代では「歴史上の人物の気持ちを身近に感じる」「歴史文化資源を作り上げた人々のパワーを感じる」「開運祈願や御利益に期待して」が多い。70代では「昔の人の知恵や技術に感心する」「昔の人々の暮らしや営みに触れる」「日本人の先祖の考え方や底力を感じる」など先人を敬う内容の回答が目立つ。
●関心度層別の傾向
 高関心度層と中関心度層間の回答率の比が大きいものは、「歴史文化を現代に活かす知恵に感心する」「歴史文化資源と自然との共存を感じる」「歴史文化資源を作り上げた人々のパワーを感じる」などであり、高関心度層では、単体としての歴史文化資源だけではなく、その背景にあるものを含めた魅力を感じ取っていることがわかる。
 逆に回答率の比が低いものは、「美しさや芸術的なものを感じる」「壮大さや力強さを感じる」などであり、視覚的で一般客にもわかりやすい魅力の要素と考えられる。

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5. 歴史文化観光への志向

①行程パターン ~ 1箇所にじっくり滞在が6割。女性は飲食や買物も重視

 歴史文化観光地を訪れる際に希望する観光の仕方(行程)について4つの選択肢から選んでもらった(図表15)。
 全体では、「1つの歴史文化観光地にじっくり滞在し、歴史文化資源にできるだけ時間を掛けたい」21.9%、「1つの歴史文化観光地にじっくり滞在し、飲食や買物等にも十分時間を掛けたい」38.3%、「主な歴史文化資源を訪問したら、他の歴史文化観光地に移動したい」23.7%、「主な歴史文化資源を訪問したら、他の観光地や宿泊地に移動したい」16.1%という回答状況であった。1つの歴史文化観光地にじっくり滞在したいとの回答が6割となっている。
●性・年代別の傾向
 性別では、男性で「1つの歴史文化観光地にじっくり滞在し、歴史文化資源にできるだけ時間を掛けたい」が25.3%と高く、女性では、「1つの歴史文化観光地にじっくり滞在し、飲食や買物等にも十分時間を掛けたい」が43.3%と高くなっている。
 年代別では、20代で「主な歴史文化資源を訪問したら、他の歴史文化観光地に移動したい」が28.4%と多い。
●関心度層別の傾向
 高関心度層では「1つの歴史文化観光地にじっくり滞在し、歴史文化資源にできるだけ時間を掛けたい」が28.9%と高く、「飲食や買物等にも十分時間を掛けたい」を合わせると“じっくり滞在派”が3分の2を占める。
 
image005 ②歴史文化観光地に関する考え方 ~ 高関心度層で目立つ真正性の重視

 歴史文化観光地に関する10の考え方を示し、同意するか否かを4段階(「そう思う」「少しそう思う」「あまりそう思わない」「そう思わない」)で聞いた(図表16)。全体で「そう思う」との回答が多かった考え方は、「天守閣や櫓の復元は史実に忠実に進めて欲しい」で37.3%であった。以下、それぞれの考え方についての回答傾向について簡単に記述する。

1) あまり有名でない歴史文化資源にも関心がある
 全体では「そう思う」が20.7%、「少しそう思う」が53.8%である。
 年代別では、「そう思う」は20代から40代で多い。関心度層別では、「そう思う」は高関心度層で35.6%、中関心度層で8.6%と回答率の差が大きい。
2) 異なる時代の歴史文化資源がミックスされている観光地の方が好きだ
 全体では「そう思う」が9.8%に留まり、「少しそう思う」が44.2%となっている。
 年代別では、「そう思う」は20代で高い。関心度層別では、「そう思う」は高関心度層で16.9%、中関心度層で4.2%となっている。
3) 異なる種類の歴史文化資源がミックスされている観光地の方が好きだ
 2)の“異なる時代のミックス”と類似した回答結果になっている。全体では「そう思う」が9.7%、「少しそう思う」が16.0%となっている。
 年代別でも、「そう思う」は20代で20.0%と高めである。関心度層別では、「そう思う」は高関心度層で16.0%、中関心度層で4.7%となっている。
4) 歴史文化資源を見ることが旅行の主目的になることが多い
 全体では「そう思う」が16.7%、「少しそう思う」が44.4%である。
 年代別では、「そう思う」は20代から30代で多い。関心度層別では、「そう思う」は高関心度層で30.7%と高く、中関心度層の5.4%との差が大きい。
5) 天守閣や櫓の復元は史実に忠実に進めて欲しい
 全体では「そう思う」が37.3%、「少しそう思う」が45.3%であった。
 年代別では、「そう思う」は30代、20代の順で多い。関心度層別では、「そう思う」は高関心度層で52.4%と過半数に上るが、中関心度層では25.3%に留まる。
6) 江戸城の天守閣の復元に賛成だ
 全体では「そう思う」が23.9%、「少しそう思う」が40.5%であった。但し、前問の「天守閣や櫓の復元は史実に忠実に進めて欲しい」に肯定意見が多かったことから、「条件付き」の肯定意見と考えられる。
 年代別では、「そう思う」は30代から50代で27~29%程度と高めである。性別では男性が26.7%と高い。関心度層別では、「そう思う」は高関心度層で34.1%、中関心度層で15.7%となっている。
7) 歴史文化観光地の「ゆるキャラ」や「おもてなし武将隊」には抵抗感がある
 全体では「そう思う」が17.8%、「少しそう思う」が32.6%である。「あまりそう思わない」が33.7%、「そう思わない」も13.2%あり、肯定派と否定派は拮抗している。
 年代別では、「そう思う」は70代で高く、「そう思わない」は20代で高い。関心度層別では、「そう思う」は高関心度層で21.6%と、中関心度層の14.7%よりやや高めである。
8) 歴史文化資源に関心の無い観光客は訪れないで欲しい
 全体では「そう思う」が6.7%、「少しそう思う」が18.8%に留まった。
 年代別では、若年層で「そう思う」が高めである。関心度層別では、「そう思う」は高関心度層で11.3%、中関心度層では2.9%となっている。
9) 歴史文化資源の観光活用よりも保全を重視すべきだ
 全体では「そう思う」が9.7%、「少しそう思う」が38.1%であった。「あまりそう思わない」は38.1%、「そう思わない」は9.2%であり、保全重視派と活用重視派は拮抗している。
 「そう思う」は性別では男性、年代別では30代で多い。関心度層別では、「そう思う」は高関心度層で14.7%、中関心度層では5.7%であり、高関心度層でやや保全重視派が多い。
10) 歴史よりも文化の方に関心がある
 全体では「そう思う」が4.3%、「少しそう思う」も25.5%に留まっている。
 年代別では、「そう思う」は若年層で幾分高い傾向がある。関心度層別では、「そう思う」は高関心度層で6.1%、中関心度層で2.8%であった。

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③歴史文化観光地に関する情報収集等の志向

 歴史文化観光地の案内や情報について18の項目を用意し、あてはまるものを選んでもらった(図表17)。
 全体でみて回答率が高い順に挙げると、「町中に歴史に関する案内板があると立ち止まって読む」60.3%、「郷土資料館や博物館には立ち寄ることが多い」49.4%、「おすすめのモデルコース・順路があれば利用する」43.2%、「駅や町中の観光案内所で情報収集することが多い」41.6%、「宿泊施設で情報収集することが多い」38.8%、「町歩きのガイドツアーがあれば参加したい」35.3%となった。
●性・年代別の傾向
 性別では、男性で「スマートフォンの音声ガイドアプリがあれば利用したい」が17.6%と高い。女性では「おすすめのモデルコース・順路があれば利用する」が47.9%、「町歩きのガイドツアーがあれば参加したい」が39.9%と高くなっている。
 年代別でみると、若年層で高めの回答には「事前申込が必要なガイドは敬遠する」「スマートフォンの音声ガイドアプリがあれば利用したい」「歴史文化資源のスタンプラリー企画があれば参加する」などがある。一方、60代以上で高めの回答は「町中に歴史に関する案内板があると立ち止まって読む」「郷土資料館や博物館には立ち寄ることが多い」「町歩きのガイドツアーがあれば参加したい」「現地に住んでいるガイドの方の説明が聞きたい」「定期観光バスがあれば利用することが多い」「少し料金が高くても専門的なガイドの説明が聞きたい」などである。
●関心度層別の傾向
 全般的な傾向として、高関心度層では多様な情報収集が行われており、関連する選択肢の回答率は高めである。
 上位10項目で高関心度層と中関心度層間の回答率の比が大きいものは、「歴史文化観光地を訪問する前に歴史文化資源の情報を収集」「郷土資料館や博物館には立ち寄ることが多い」「駅や町中の観光案内所で情報収集することが多い」などである。
 下位項目で回答率の比が大きいものとしては、「歴史文化資源のスタンプラリー企画があれば参加する」「歴史をテーマにした着地型ツアーがあれば利用することが多い」「少し料金が高くても専門的なガイドの説明が聞きたい」「団体客と個人客の順路を分けて欲しい」などがある。
 逆に回答率の比が低いものは、上位項目では「おすすめのモデルコース・順路があれば利用する」「ボランティアガイドなら利用したい」「道の駅で情報収集することが多い」、下位項目では「事前申込が必要なガイドは敬遠する」「定期観光バスがあれば利用することが多い」などがある。

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