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アムステルダムの観光経済政策の最新動向

公益財団法人日本交通公社
観光研究部 主任研究員
後藤健太郎

 アムステルダム市は、2022年に『観光経済ビジョン2035』を策定し、現在は、シティーセンターアプローチとビジターエコノミーの両プログラムを実施している。両者は、毎年、対策の調整がなされる長期的なアプローチである。
 前者は、2020年に「バランスの取れた都市」プログラムと統合され、6つの優先事項のもとで進められてきた。都心部を対象に住民が快適に過ごせる魅力場所にすることを目的とする。
『実施プログラム:2025年のシティーセンターアプローチ』(Gemeente Amsterdam, 2025)では、7つの新しい変革目標が設定された〔図〕。そのうちの一つが「2.市内中心部への訪問者は減り、訪問者は敬意を払う」である。多くの場合、各変革は複数の目標に影響を及ぼし、目標間には大きな相互依存性があるという。
 後者は、観光産業セクターの変革に焦点を当てたものである。『実施プログラム:2025年の観光経済』(Gemeente Amsterdam, 2025)には、53プログラムが掲載されており、そのうち18プログラムが新たなプログラムとなる〔図〕。 新規取組のうち、具体的な内容を一部整理したものが下記である。
 アムステルダム市のバランスを図る観光経済政策に関する動向を今後もウォッチしていく必要がある。

新規取組のうち本特集に関連するもの(一部)

●新規調査、研究の実施
―公共空間での待ち行列と混雑削減に向けた調査
̶観光税の影響に関する調査
̶住民の観光経済に対する意識調査(Amsterdam & Partnersが実施)等
●欧州との関わり:自治体を超えた国際及び国内協力の強化
̶都市におけるモノカルチャー化や小売業の多様性強化に関する新たな研究
 (欧州バランス都市観光同盟(European Alliance on Balanced Urban Tourism)に加盟する
 都市と共同で実施)2025年第2四半期に完了し、発表予定
̶住民への還元
 (欧州の幾つかの都市で導入されている、観光経済の恩恵を伝える取組や
 観光税収を地域住民のためのプロジェクトに還元する取組等をもとに、
 訪問者が都市と住民に貢献できる方法をより強調)