B1 ウォールにて「観光研究部からのオススメ図書」を展示中です

B1 ウォールにて「観光研究部からのオススメ図書」を展示中です
  • B1展示ウォール

「旅の図書館」は、観光の研究や実務に役立つ専門図書館として、多くのお客様にご利用いただいております。特に、観光について学ぶ大学生の皆さんには、学習や研究のための資料を探す場としてもご活用いただいております。

このたび、観光研究部の研究員が、観光について学ぼうとする大学生の皆さんに向けて、おすすめの一冊を選定いたしました。

選定した全23冊を館内にて展示しております。
ぜひご来館いただき、今後の学習や研究にお役立ていただければ幸いです。

概要

期間 2026年8月~
場所 B1ウォール
展示図書一覧 『ヒストリカル・ブランディング 脱コモディティ化の地域ブランド論』久保健治、KADOKAWA、2023

著者は、共に現地に足を運び、現地の方の意見を聴きながら観光地の計画策定に取り組んだ同志でもあります。そうした現場経験あふれる著者は、生まれ育った町、学んだ町、訪れた町で抱いた問を調査し続け、遂には実践的な地域活性化ノウハウとして理論化しました。
観光を学ぶ学生にとって「なぜ観光を選んだのか」「なぜこの研究に取り組むのか」といった問に答えるのは案外難しいことです。そうした時、本書は「何に疑問を持つか」という原点を教えてくれる一冊でもあります。

『選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義』シーナ・アイエンガー 著、櫻井祐子 訳、文藝春秋、2010

私たちは日々、さまざまな「選択」を繰り返しています。自分の意思で自由に選んでいるつもりでも、実際の判断は、選択肢の数や提示のされ方、周囲の評価、文化的背景などに大きく左右されています。本書は、社会心理学や意思決定研究の知見をもとに、私たちがどのように選択し、その結果をどのように受け止めるのかを明らかにした一冊です。
観光においても、旅行者は数多くの情報や選択肢のなかから、行き先や宿泊先、現地での体験などを選ばなければなりません。旅行者が何を基準に選び、なぜその選択に満足したり後悔したりするのかを考えるうえで、多くの示唆を与えてくれる一冊です。

『近代日本の国際リゾート 1930年代の国際観光ホテルを中心に』砂本文彦、青弓社、2008

現在のインバウンド政策につながる国際観光振興は、戦前の日本でも進められていました。本書は、外国人観光客を受け入れるため、上高地や雲仙、阿蘇、日光などで国際観光ホテルや交通基盤が整備されていった過程を描いています。国立公園制度が形成された時期とも重なり、自然風景の保護と観光利用、地域開発がどのように結びついていたのかを知ることができます。現在の観光政策や観光地づくりを、歴史的な視点から考えるきっかけとなる一冊です。

『法のデザイン 創造性とイノベーションは法によって加速する』水野祐、フィルムアート社、2017

まちづくりのルールは、もともと地域の側から生まれ、やがて法律にまで育ったものが少なくありません(景観条例から景観法へ、など)。そこには、地域特有の事情に応えるという「まちづくり」の性質が関わっています。さらに、需要に左右され地域差の大きい「観光」という要素が加わると、法を上から与えられるルールではなく自分たちで設計するものとして捉える、本書の説く「リーガルデザイン」の発想がいっそう効いてきます。法律に馴染みがなくても読み進められるので、観光を学ぶ皆さんにぜひ手に取ってほしいです。

『DMOと観光行政のためのマーケティングとマネジメント』高橋一夫、学芸出版社、2024

最大の魅力は、DMOと観光行政の「どちらが何をやるのか」に踏み込んだ点です。両者が同じことを考えてしまう現場の混乱を、マーケティングとマネジメントという役割の違いから解きほぐします。JTB出身でDMO理事長も務める著者が、事例と図表を豊富に用いて実務の「勘どころ」を伝授。事業を委託する場合でも的確にディレクションできる力が身につきます。観光地経営戦略の策定が必須化された今こそ、担当者が手元に置きたい一冊です。

『まちづくりはノーサイド』川端五兵衞、ぎょうせい、1991 『続・まちづくりはノーサイド』川端五兵衞、学芸社、2017

「観光は終の棲家の内覧会」
『続・まちづくりはノーサイド』の劈頭(へきとう)を飾るこの言葉ほど、まちづくりと観光の本質を射抜く至言(しげん)を私は知りません。かつて全国が観光振興に躍起になる中、我が町は「観光都市ではない」と最も強くそして長く抗い続けた近江八幡の指導者・川端五兵衞氏が同地の観光の概念として提示した言葉です。安易な観光の否定/批判ではなく、観光に正面から向き合い続けた者のみが辿り着く、透徹(とうてつ)した視座であるといえます。それは、同地が描く「終の棲家のまちづくり」に対して、観光をその豊かな日常を披露する「内覧会」と位置付ける思想に他なりません。更に氏は、「訪(おと)なう人」「究極の観光客」とは何かを問いました。
観光が地域政策とより不可分となる現代にあっても、氏のまちづくりと観光の哲学の射程に届く地域は無いでしょう。現在、田中宏樹氏(近江八幡観光物産協会事務局長)が「観光地としての本望とは何か」を探求し具現化する営みは、こうした軌跡の延長線上にあると言えます。
両図書は単なる成功録ではありません。「まちづくり」という確固たる日常の中に観光を如何に位置づけるかを刻んだ、実践者のバイブルです。これから観光学やまちづくりを深く学ぼうとする学生にこそ、自らの「観光の答え」を見出すための道標として、紐解かれるべき書であると考えます。

『旅の民俗学』宮本常一、河出書房新社、2006

旅(旅行)を単なる観光や移動ではなく人びとの暮らしや文化を知る営みとして考えさせてくれる一冊です。宮本常一先生は日本各地を歩き、土地の歴史や生活に触れ、そこで暮らす人びとの声に耳を傾ける旅(旅行)は、自分の世界を広げる豊かな経験であると説きます。この本からは本来の旅の魅力を学ぶことができると思います。観光、地域、文化、まちづくりに関心のある学生はもちろん、これから旅に出る人にもぜひ読んでほしい、旅(旅行)に出たくなる本です。

『調査されるという迷惑 フィールドに出る前に読んでおく本』宮本常一 安渓遊地、みずのわ出版、2008

ヒアリングやアンケート、参与観察など、私たちは様々な調査を行いますが、調査にご協力いただくのは決して当たり前のことではありません。「調査される側」の大切な時間をいただき、時には迷惑をかけている可能性もあります。
「仮説」という名の思い込みや自分の都合を押し付けていないか、無意識に上から目線になっていないか、そして研究成果をきちんと報告できているか。本書で紹介される様々なエピソードは、研究者としてのモラルや礼儀にとどまらず、「研究とは何か」という本質的な問いを投げかけてくれます。フィールドワークを行う方はもちろん、あらゆる調査研究に携わる方に手に取っていただきたい一冊です。

『ジェントリフィケーションの功罪 ゆるやかな都市成長のためのケーススタディ』服部圭郎 編著ほか、学芸出版社、2026

近年、国内外の多くの観光地や都市部において、古民家や倉庫をリノベーションしたお洒落なカフェ、アートギャラリーなどが軒を連ね、街が急速に活性化する事例を目にする機会が増えています。一見すると、地域経済の発展や治安の向上といった「功」の側面が際立ちますが、その影には、地価や家賃の高騰によって長年その土地で暮らしてきた地域住民や個人商店が立ち退きを余儀なくされるという「罪」の側面、すなわち「ジェントリフィケーション」の問題が生じています。
本書は、この事象を都市開発の成功と前置きしつつ、国内外のケーススタディを通じて極めて客観的かつフラットに紐解いた一冊となります。著者は、都市がもたらす経済的な恩恵を正当に評価しつつも、地域コミュニティの崩壊や街の均一化というリスクを数値や住民の生の声から生々しく描いています。
今後の都市観光のあり方を考えるにあたり、本書で挙げている「ゆるやかな都市成長(スロー・ジェントリフィケーション)」は、多くの気づきを得られるものと思います。

『世界の納豆をめぐる探検』高野秀行 文・写真、スケラッコ 絵、福音館書店、2024

子供には、たくさんの「旅の本」を読んで欲しい。私のお薦めは、福音館書店「たくさんのふしぎ」シリーズ傑作集『世界の納豆をめぐる探検』(高野秀行)です。本書では、著者が納豆作りの工程や伝統、起源をたどりながら、世界へと視野を広げていきます。ミャンマーのトナオ、ネパールのキネマ、中国ミャオ族のガオヨウ、韓国のチョングッチャン、ナイジェリアのダワダワなど、世界各地の「納豆」を、現地での出会いや驚きとともに紹介します。納豆という身近な食べ物を手がかりに、世界の食文化と食卓の楽しさを教えてくれる一冊です。「たくさんのふしぎ」シ リーズには、大人も唸らせる旅の名著が数多くあります。
鉛筆づくりを通して世界の暮らしや労働を描く『いっぽんの鉛筆のむこうに(谷川俊太郎)』、多彩なタータンチェックにまつわる世界の歴史を紹介する『すてきなタータンチェック(奥田実紀)』、分水嶺を探して日本各地を旅する『分水嶺さがし(野坂勇作)』なども、ぜひ親子で手に取って楽しんでいただきたいです。

『ブランド・ストレッチ 6つのステップで高めるブランド価値』デビッド・テイラー 著、グロービス・マネジメント・インスティテュート 訳、英治出版、2004

ブランド・ストレッチ(拡張)とは、確立したブランドの力を借りて周辺の商品や事業へ展開することを指します。追加の収益が見込める一方、失敗すれば本体まで傷つける脆さをはらみます。本書の題材は企業が生み出す商品のブランドですが、観光も無縁ではありません。ホテルチェーンが客層や価格帯に応じてブランドを使い分けるマルチブランディングは、その好例とも言えます。ブランドを多様な主体が担う観光地では、企業と同じようにはいかない部分もある。それでも、拡張の是非を見極める本書の考え方は、地域ブランドを考える土台になります。

『統計分布を知れば世界が分かる 身長・体重から格差問題まで』松下貢、中央公論新社、2019

定量調査などで頻繁に現れる代表的な3つの統計分布(正規分布・対数正規分布・べき乗分布)と、それらが発生するメカニズムをわかりやすく解説した一冊です。
世の中の現象の多くはいずれかの分布として現れ、そこには明確な理由が存在します。そして、これらの分布からの「ずれ」に着目することで、データからより深い考察を引き出すことが可能になります。シンプルに見える統計分布からでも、驚くほど多くの情報を読み取れることがよく分かります。

『多元世界に向けたデザイン ラディカルな相互依存性、自治と自律、そして複数の世界をつくること』アルトゥーロ・エスコバル 著、大野大二郎 水内智英 ほか監訳、ピー・エヌ・エヌ、2024

持続可能な世界へのトランジションに向けて「デザイン」の再定義を図る一冊です。
本書は生態学、仏教、音楽など様々な分野を横断していますが、基本的には「デザイン人類学」に分類されるものであると言えます。従来の人類学が 多様な世界を記述する学問であったのに対し、デザイン人類学は場所に根ざした多様な世界を“作り出す”アプローチを重視しています。
観光を単なるビジネスではなくこの「デザイン」の手段のひとつと見立てることは、リジェネラティブ・ツーリズムを研究する推薦者にとって多くのヒントが詰まった一冊になっています。

『企業と地域でつくる関係人口 事例から学ぶ地域共創プロジェクト』NTT東日本株式会社地域循環型ミライ研究所 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 編著、学芸出版社、2026

「一過性の観光」から「継続的な関わり」へ。本書は、企業と地域が紡ぐ「関係人口」の多様なあり方を事例から紐解くガイドブックです。少子高齢化が進む日本の地域において、外部の人材や組織とどのような共創関係を築くべきか、多角的な視点からヒントを提示してくれます。これからの観光学が向き合うべき「地域社会との共生」というテーマについて学びを深め、自身の問いを育てるための解像度を上げてくれる一冊です。

『都市のドラマトゥルギー 東京・盛り場の社会史』吉見俊哉、弘文堂、1987

本書は、明治からバブルに至る東京の盛り場(繁華街)について研究した古典的名著です。盛り場を闊歩する市民が、盛り場に<演出>されながらある種の<ドラマ>を演じているとする見方に基づき、浅草、銀座、新宿、渋谷といったその時々の盛り場に着目し、演じられたドラマの内容を分析しています。
刊行から約40年。今でもなお渋谷のスクランブル交差点はアイコニックな空間であり、世界から観光客が押し寄せています。一方、近年は綺麗な再開発モールと絢爛なタワマンこそが東京だ、とすまし顔で語る人たちもいます。現代の東京の色々な場所で、市民として、あるいは観光客として、自分がいまどのような<ドラマ>を演じているのか、改めて考えてみると面白いでしょう。

『観光危機管理ハンドブック 観光客と観光ビジネスを災害から守る』髙松正人、朝倉書店、2018

インバウンド観光客数も過去最高を記録する中で、大地震や津波、台風、土砂災害などの災害は、日本のどこで、いつ起こってもおかしくない状況にあります。観光客の安全を守り、災害を経ても観光事業を継続させていく方策を備えることは、持続的な観光産業の発展のためにも重要ではないでしょうか。
本ハンドブックでは、観光危機管理の基礎的な考え方から実践的な事例までを紹介しています。日本の観光が直面し得る課題への手がかりとしても、ぜひおすすめしたい1冊です。

『農民芸術概論』宮沢賢治、八燿堂、2021

童話作家のイメージが強い宮沢賢治ですが、多くのエッセイや論考も遺しています。その代表作の一つである本作品において、「その地に住む人自らが主体となり、日常生活に根付いた芸術や文化を生み出すこと」を彼が奨励していたことが分かります。また、それらは都会の人、ひいては世界全体をも見据えたものでした。科学・芸術・宗教・日常生活の統合を目指した賢治の世界観は、現代でも色褪せず、地域文化の振興を考える上で、多くの気づきを与えてくれます。100年前の文学から、現代にも通じる身近で本質的な問いをぜひ読み解いてみてほしいと思います。

『神山 地域再生の教科書』篠原匡、ダイヤモンド社、2023

徳島県神山町においてプロジェクトが連鎖的に生まれる姿を描いた、地域再生のバイブルのような一冊です。本書が描くのは単なる過疎対策ではなく、IT企業のサテライトオフィスや高専の開校など、知恵を持つ人材を呼び込んで町の形を変えていく「創造的過疎」のプロセスです。次々に新たなプロジェクトが連鎖していく様子から、人を惹きつけるまちの本質がよく分かります。課題に対して自ら動き、周囲を巻き込んでいく神山の人々の姿勢は、これから社会に出る学生の皆さんが将来困難に直面した際、必ず大きな糧になるはずです。

『「無理しない」観光 価値と多様性の再発見』福井一喜、ミネルヴァ書房、2022

観光振興は人口減少時代における地域活性化の特効薬として語られることが多い一方、観光への過度な投資や依存は、経済的・文化的な格差を拡大させるおそれもあります。本書は「観光による経済発展」が抱える構造的な問題や矛盾を丁寧に読み解きながら、地域の暮らしや多様性を尊重した持続可能な観光のあり方を提案する一冊です。経済的な成長や利潤の追求だけでは測れない、観光の価値を考える視点を与えてくれます。

『宿泊産業論 ホテルと旅館の事業展開 改訂版』徳江順一郎 編著、創成社、2023

宿泊産業は観光産業の中核を担う存在です。本書は、宿泊施設の分類・形態、事業内容、マーケティング、関連政策などの基礎知識に加え、世界と日本における宿泊産業全体の歴史、さらに主要なホテルチェーン・企業の歴史・特徴についても解説しています。宿泊産業全体の構造や動向を体系的に理解することができる、宿泊産業論のスタンダードな入門書です。宿泊産業への理解を深めるための最初の一冊としておすすめしたいです。

『沖縄イメージの誕生 青い海のカルチュラル・スタディーズ』多田治、東洋経済新報社、2004

ソーシャルメディアで誰もが旅の「映え」を発信する今、私たちがスマホの画面越しに見る沖縄のイメージは、いつ、どのようにして作られたのでしょうか。
本書は、沖縄をめぐるまなざしの変遷を社会学的に分析した一冊です。青い海や楽園といった沖縄のデスティネーションイメージは、決して自然発生したものではなく、時代の要請や送り手の意図によって戦略的に創り出されてきました。その固定化された「旅先のイメージ」を疑い、その背景にある社会構造や消費の仕組みを見通す力は、単なる観光客から脱却し、これからの時代に求められる新たな観光開発や地域振興を構想する上で強力な武器になります。まずは本書を開き、私たちが消費しているイメージの正体を探る旅に出てみませんか。

『フィールドから読み解く観光文化学 「体験」を「研究」にする16章』西川克之 岡本亮輔 奈良雅史 編著、ミネルヴァ書房、2019

観光学は他の学問と比較して、フィールド調査が重要な鍵を握る学問です。本書は、観光に対して多角的なプローチをしている研究者たちが、フィールドで得た知見をどのように研究へと昇華させているのかを示しており、観光学を研究したいと考えている学生にとって多くの視座を与えてくれます。
また、文化人類学、都市計画、宗教学など、幅広い分野から観光を分かりやすく読み解いているため、研究の方向性に悩んでいる人や観光を多面的に捉え直したい人に最適な一冊です。