1930年代「国際観光ホテル」の時代

1930年代「国際観光ホテル」の時代
  • 古書ギャラリー

 日本のホテル産業のはじまりは、幕末・明治維新期(1860年代)に開港地となった横浜・長崎・神戸等における外国人居留地ホテルや、江戸・大阪で幕府及び明治新政府が設置した日本資本によるホテルなどでした。1870年代には、東京・名古屋・大阪・京都の都市と、箱根・日光・軽井沢・雲仙などのリゾート地において、日本人先駆者による開設が相次ぎ、日本人によるホテル経営の原点ともなりました。さらに、 1890(明治23)年に開業した帝国ホテルは、「外来賓客の接遇」を目的とする政府の迎賓館的ホテルとして、わが国のホテル産業を牽引していきます。

 このように、外国人を需要対象として発展してきたわが国のホテル産業は、1900年代に入り、金融恐慌と国際収支の蔓延的不均衡による経済的困窮を背景に、国レベルで外客招致、ホテル設置促進の機運が高まっていきます。そして 1930(昭和5)年には、帝国議会で外客誘致の建議案が提出・可決されたことを受け、国際観光局および国際観光委員会が設置され、国際観光政策が国を挙げて推進されていきました。

 国際観光局では対外観光宣伝を行うとともに、外国人観光旅客受け入れ体制の整備促進のため、国内主要観光地に「国際観光ホテル」の設置助成を決定します。これによって1930年代~1940年代初めまでに15の「国際観光ホテル」が各地に誕生し、近代ホテル産業発展の方向性が確立されました。これらのホテルを立地よりみると、都市型は3ホテルのみで、多くは観光地・リゾート地に整備され、国際的に通用する観光地の基盤づくりに大きく寄与しました。

 本企画展示では、これら15の国際観光ホテルの中から、当館が所蔵する貴重書をもとに6ホテルを紹介します。

概要

期間 2020年1~3月
場所 1F古書ギャラリー
展示図書一覧
  • 『観光行政百年と観光政策審議会三十年の歩み』内閣総理大臣官房審議室、1980
  • 『ホテル経営常態論』国際観光局、1937
  • 『日本ホテル略史』運輸省、1946
  • 『続日本ホテル略史』運輸省観光部、運輸省、1949
  • 『横浜復興博覧祭はまおどり』ホテル・ニューグランド
  • 『ホテル・ニューグランド50年史』白土秀次、ホテル・ニューグランド、1977
  • 『横浜の時を旅する ホテルニューグランドの魔法』山崎洋子、春風社、2011
  • 『Memories of HOTEL NEW GRAND 時代を超えて愛され続ける横浜クラシックホテルの軌跡』 ホテルニューグランド 編著、神奈川新聞社、2017
  • 『名古屋観光ホテル』戦前
  • 『名古屋観光ホテル五十年史』名古屋観光ホテル 社史編集委員会 編、名古屋観光ホテル、1986
  • 『THE KAMAGORI HOTEL(蒲郡ホテル英文案内)』1934年頃
  • 『東海唯一の別天地』蒲郡ホテル、戦前
  • 絵葉書「常盤館・蒲郡ホテル」蒲郡常磐館、戦前
  • 『国際観光 琵琶湖ホテル』琵琶湖ホテル
  • 『創業20年の歩み』琵琶湖ホテル、琵琶湖ホテル、1955
  • 『琵琶湖ホテル五十年のあゆみ』琵琶湖ホテル、琵琶湖ホテル、1984
  • 『富士ビューホテル』戦前
  • 『阿蘇観光ホテル』戦前
  • 『近代日本の国際リゾート 1930年代の国際観光ホテルを中心に』砂本文彦、青弓社、2008
  • 『日本のホテル産業100年史』木村吾郎、明石書店、2006
  • 『ホテル物語 日本ホテル史』重松敦雄、柴田書店、1966
  • 『ホテルと日本近代』富田昭次、青弓社、2003
  • 『日本のホテル小史』村岡實、中央公論社、1981
  • 『ホテル物語 明治・大正・昭和初期のホテル』重松敦雄、アドエース出版、1989
  • 『明治・大正・昭和ノスタルジック・ホテル物語 』富田昭次、平凡社、2000
  • 『ホテルと日本人』山口由美、千早書房、2008
  • 『昭和の品格 クラシックの秘密』山口由美、新潮社、2019