館内展示

旅の図書館では毎回テーマに沿った館内展示を行なっています。

「古書からひもとく戦前の京都観光」

日本のみならず海外からも高い知名度と人気を誇る京都ですが、その歴史をみると、行政、民間、市民が連携しながら作り上げていったことがわかります。


その背景となっているのが1869(明治2)年の東京遷都です。京都は千年以上続いた都としての座を奪われたことで、人口は約半数にまで減少し、まちは衰退していきます。そのことに危機感を持った地元の豪商は明治4年に博覧会を企画・開催します。


翌年には、第1回京都博覧会を開催しますが、勧業の意味合いを強め、娯楽要素を増やしました。今でも京都の風物詩となっている「都をどり」や「鴨川をどり」はこの時から始まりました。また、当時は自由に国内を周遊することができなかった外国人の入洛制限の解除を政府に陳情し、約700人の外国人が入場しました。好評を博した京都博覧会は、明治・大正にかけてほぼ毎年開催されることになります。


また、明治以降、都市整備にも力を入れ、琵琶湖疎水の整備、水道事業、道路の拡張、電気軌道敷設による交通網整備事業などをおこないます。インフラを整備することで伝統産業も大きく発展しました。このように都市機能が充実したことも博覧会の見どころになっていきます。


1889(明治22)年の皇室典範により、即位式や新嘗祭は京都で開催することが定められましたが、皇室行事や、平安遷都千百年記念祭といった周年事業など、ハレとなる機会を契機に観光地としての整備が進んだことは京都の特徴でもあるといえます。


このように数々の博覧会を開催し、国内外から多くの喜賓、来訪客を受け入れてきた京都市は、1930(昭和5)年に行政として初めて観光課を設置します。1932(昭和7)年には全国の観光協会等とともに日本観光地連合会を結成するなど、日本の観光行政を牽引してきました。


京都を代表する年中行事や観光施設の中には、この時代に整備されたものも多く存在します。近代京都の歴史をふまえて、ぜひ現代の京都観光を楽しんでみてください。