最近刊行された図書の中から当館のおすすめをご紹介します。
ご来館の際はぜひご一読ください。
(大原一興 著 (株)鹿島出版会 1999年発行)
エコミュージアムは、「地域環境全体を博物館と見立てた」概念であり、「従来型のように博物館の建物内に場を限定せず、ある地域の一定の[領域]において、そこに点在する[遺産]や無形の[記憶]を対象として、従来型博物館では[専門家]と[公衆]によって担われている役目を、エコミュージアムでは地域[住民]が担う」という特徴を有する(かっこ内は本書からの引用)。
大学で建築学(テーマ:博物館建築の計画手法)を学んでいた推薦者は、当時この考え方に触れたことで、計画すべき対象の関心が「建築」から「地域」に移った(ちなみに、本書の著者は推薦者の大学時代の恩師)。博物館学という観光以外の分野からのアプローチであるが、地域資源と住民の関係性などは観光(観光まちづくり)を学ぶ学生にとっても、参考にし得る部分は多いのではないだろうか。
(田村明 著 岩波書店)
なぜ「まちづくり」は平仮名で書くのでしょうか?
「まちづくり」という言葉の頭にはあらゆる名詞が付けられ、今日では「観光」に限らず多くの「○○まちづくり」で溢れています。
著者は横浜市職員として都市づくりを推進してきた都市プランナーで、「まちづくり」の理念を提唱された方です。
本書では、市民によるまちづくりについて、各地の事例を交えながら紹介されています。約20~40年前に発刊された古い本ですが、まちづくりの理念は決して色褪せるものではないと思います。
観光分野に限らず、まちづくりに携わりたいと思っている皆さんに是非読んで(そして実践して)頂きたい「まちづくり3部作」です。
(森岡毅 著 KADOKAWA 2016年発行)
低迷していたテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」の業績をV字回復させたのは、徹底した「マーケティング思考」だった。敏腕マーケターとして知られる森岡毅さんの一冊。マーケティング初心者にも読みやすく、観光を学ぶ学生にオススメです。
(遠藤英樹 ほか編著 新曜社 2019年発行)
この図書は主に社会学の視点から観光についての主要なトピックを紹介している。図書の前半部分では、数ページほどの短い章でポストモダンや真正性、パフォーマンス、モビリティ、植民地主義の問題など、ともすればとっつきにくい人文社会学の議論を観光の視点から簡潔に解説する。また後半では、こうした理論を踏まえたうえで、国内外の観光地の事例が紹介される。
これから観光研究に取り組む学生には社会学や人類学の知見を取り入れる手引きとして、すでに社会学などの関連分野を学んでいる学生にとっては観光いう視点から新たな刺激をもたらす図書として、大変有益な一冊である。
(由布院の百年・編集サロン 編 日本旅館協会由布院連絡会 2021年発行)
由布院は、観光まちづくりの成功例として語られることが多い。本書は、観光地としての由布院の基礎を作り上げた溝口薫平氏・中谷健太郎氏らを中心とした関係者の座談会を記録したものである。彼らが由布院のまちづくりに取り組んだ背景や思いが伝わる一冊となっている。