セミナー・シンポジウム

平成24年度 観光実践講座

2012年11月8日(木)・9日(金)

人を活かし、まちを活かす観光の考え方 ~見えない価値を見せる「まち歩き」の実践

公益財団法人日本交通公社では、主に自治体で観光・地域振興に携わる職員の方々を対象として、毎年6月に「観光基礎講座」、その応用編として11月に「観光実践講座」を開催しています。「観光実践講座」は、地域の現場で活躍されている方々を講師としてお招きし、より実践に役立つ内容で構成しています。

今年度は、各地で人気高まる「まち歩き」に着目しました。それは単に点(名所旧跡や観光施設)と点を移動するのではなく、ガイドさんとぶらぶら歩きながら地元の人と話し、食べ、笑う-その時間、その空間(まち)を楽しんでもらう観光です。

社会の成熟とともに観光も変化し、自然や歴史文化といった従来型の観光資源だけではなく、地域に根ざした生活のあり方や人そのものが魅力的な観光資源として認識されるようになってきました。この“見えない何か”に共感し、楽しみ、日常に持ち帰る成熟した旅行者が増えています。
精神的な豊かさが大事になり、有形のものから無形のものに価値を見出すようになってきたのです。

「長崎さるく博」の成功から5年を経た長崎市には、なんと博覧会時をも上回るまち歩き参加者が訪れ、400人以上のさるくガイドが今も楽しく生き生きとまちを案内しています。
「遠くから来る朋あり長崎を自慢たらたら歩かせており」(作:西部稔さん)※
市民の自負と誇りを取り戻した長崎では、「人」を活かし「まち」を活かす、まさに地域主体の新しい観光が生まれ、進化しています。

本講座では、「長崎さるく」、また現在は大阪で市民主体の「大阪あそ歩」(第4回観光庁長官表彰受賞 2012.9.21)を仕掛けるプロデューサーの茶谷幸治氏を特別講師に招き、長崎はもちろん、各地の事例を多様な角度から取り上げます。“見えない価値を見せる「まち歩き」”の意味を一緒に考え、実践に役立つヒントをお持ち帰りください。もちろん「まち(都市)」限定ではなく、中山間地にも十分応用できる内容です。
観光行政のご担当者様、観光による地域振興を志す皆様のご参加をお待ちしております。

※ 「長崎さるく博」で開催された短歌コンテストで大賞を受賞した長崎市の西部稔さんの作品

概要

テーマ 人を活かし、まちを活かす観光の考え方 
~見えない価値を見せる「まち歩き」の実践
開催日時 2012年11月8日(木)~9日(金)
会場 公益財団法人日本交通公社 大会議室(JR東京駅日本橋口徒歩2分)
主な対象者 観光による地域振興に携わる地方自治体のご担当者
観光関連事業・商工会議所などのご関係者
主催 公益財団法人日本交通公社
協力 NPO法人 観光頭脳集団 長崎コンプラドール

スケジュール

■11月8日 (木)

9:45 開講(開場 9:15)
10:00

●講義1 講座のねらい/時代が求める「まち歩き」の意味と可能性
<講師:公益財団法人日本交通公社 常務理事 小林 英俊>

◎Profile
兵庫県生まれ。旅行現場での豊富な経験を踏まえた観光マーケティング、地域活性化が専門。観光と環境、観光と健康の実践的研究、エコツーリズムの推進はライフワーク。北海道大学観光学高等研究センター客員教授。東京大学非常勤講師。

11:40 昼食
12:40

●講義2 基調講演 「まち歩き」の思想~なぜ「長崎さるく」は成功したのか
<講師:プロデューサー 茶谷 幸治 氏>

◎Profile
大阪府生まれ。イベントとツーリズムのプロデューサー。「アーバンリゾートフェア神戸’93」チーフプロデューサー、「ジャパンエキスポ世界リゾート博」(94年)催事プロデューサー、「ジャパンエキスポ南紀熊野体験博」(99年)総合プロデューサー、「しまなみ海道’99」広島・愛媛両県総合プロデューサーなど、一貫して地域主導・住民主体の地域活性化イベントを主唱。その集大成が「長崎さるく博」(06年)で、日本で初めてのまち歩き博覧会を市民主体で成功させた。現在、一般社団法人大阪あそ歩委員会代表理事。大阪大学CSCD招聘教授。

14:10 ○休憩
14:20

●講義3 市民プロデューサーが語る、「市民主体」はこうして実現した!
<講師:NPO法人 長崎コンプラドール 副理事長 川良 真理 氏>

◎Profile
東京都生まれ。中学2年から長崎在住。タウン情報誌「ザ・ながさき」編集長、NBC長崎放送、NHK長崎などテレビレギュラー出演や、洋館保存運動など市民運動にも関わり、長崎市行政改革審議会、長崎県美しい街づくり委員会委員など公職を多数歴任。長崎2006観光アクションプラン推進委員会ワーキンググループ副座長(03年)、長崎さるく博公式ガイドブック制作(05年)、長崎さるく博市民プロデューサー就任(06年)。さるくガイドとして観光客も多数案内。09年、NPO法人長崎コンプラドールを設立。2010年にはバッファロー企画を立ち上げ、取材、ライティング、企画、講演など精力的に活動中。

15:35 ○休憩
15:45

●体感・実践講座 まちは“生きてる”から面白い!
<体感案内人:川良真理氏 /ゆさぶり案内人:茶谷幸治氏>

-「長崎さるく」や「大阪あそ歩」に参加しているような疑似体験を通じ、「まち歩き」から伝わる“見えない何か”を自分なりに感じ、その伝え方について考えます。

17:30~19:00 ○交流会

■11月9日(金)

9:15 ○開始
9:20

●講義4 「まち歩き」のしかけ方~「大阪あそ歩」で大阪を変える!
<講師:茶谷幸治氏 /進行:当財団主任研究員 吉澤清良>

-講師と受講者の双方向のやりとりを通じて学びます

10:50 ○休憩
11:00

●講義5 各地の「まち歩き」体験取材から学んだヒント~長崎、新潟、弘前、横浜などの取り組み
<報告:当財団主任研究員 久保田美穂子>

12:00 昼食
13:00

●講義6 新潟市のまち歩きとまちづくり~観光とまちづくりはどう融合できるか
<講師:新潟市都市政策部次長 池田 博俊 氏>

◎Profile
新潟市生まれ。08年初版発行以来、増刷に増刷を重ねているベストセラーのまち歩きマップ「新潟の町、小路めぐり」の仕掛け人。企画制作した「路地連 新潟」は、イラストレーターやデザイナー、池田氏ほか行政職員など数名が集まって活動を始めたまちづくり団体(小路の魅力が市民に浸透しメンバー増殖中)。マップは2011年、(公社)日本都市計画学会の自治体優秀まちづくりグッズ賞受賞。
78年新潟市役所入庁。06年まちづくり推進課長、09年政策監を経て現職。下水道課職員時代には、周年事業として絵本制作も手がける。

14:30 ○休憩
14:45~16:25

●総括・みんなで長談義(パネルディスカッション)
<登壇者:茶谷幸治氏、川良真理氏、池田博俊氏、小林英俊、久保田美穂子>

-ここまでの講義を通して見えてきた「まち」と「人」を活かす重要なテーマ(例えば、真の住民主体、行政の役割、観光とまちづくりの融合、継続のためのしくみづくりなど)について講師陣と一緒に議論し、深掘りします。受講の皆さんの悩みや意見も聞きながら、Q&A方式で進めます。

16:30 ○閉講

※講義内容・講師は、やむを得ず変更となる場合がございます。

参考図書: ぜひご一読をお勧めします。

  教材(受講前にお送りします。受講料に含まれています。)
まち歩きが観光を変える 「まち歩き」をしかける
『まち歩きが観光を変える 
長崎さるく博プロデューサー・ノート』
(茶谷幸治著、学芸出版社、2008)
『「まち歩き」をしかける 
コミュニティツーリズムの手ほどき』
(茶谷幸治著、学芸出版社、2012)