セミナー・シンポジウム

平成24年度 観光基礎講座

2012年 6月14日(木) ・15日(金)

~地域の“キラキラ”を生む視点~
公益財団法人 日本交通公社による短期集中型講座

社会の成熟とともに観光も変化し、多くの産業と広く深い関わりを持つようになったことで、観光関係者が取り組むべき課題も多岐にわたり、複合的な考え方が必要とされるようになってきました。観光振興への取り組みも、観光の基礎的知識だけではなく、まちづくりやコミュニティのあり方など幅広い考え方が求められています

本講座は、観光に携わる自治体などの方々の一助となるべく、平成8年度より開講しているもので、今年で17回目を迎えます。私どものこれまでの経験とノウハウを活かした独自の視点と切り口で構成され、基礎的知識の習得に加えて実践的な内容の講座です。約30名の少人数制により講師への質問や参加者同士の意見交換の時間も充実させています。

今回の講座では 「地域の“キラキラ”を生む視点」をメインテーマといたしました。私たちを取り巻く社会・経済環境は必ずしも明るいとは言えませんが、観光こそ人の心を明るく楽しくするものであり、観光は地域を、そして人を変える力があると、私どもは信じています。皆様と考え方を共有し学び合う場を持ちたいと思っています。
観光をさらに学びたい皆様のご参加をお待ちしております。

概要

テーマ ~地域の“キラキラ”を生む視点~
開催日時 2012年 6月14日(木) ~6月15日(金)
会場 公益財団法人 日本交通公社 大会議室(JR東京駅日本橋口徒歩2分)
主な対象者 観光による地域振興に携わる地方自治体のご担当者
観光関連事業・商工会議所などのご関係者
主催 公益財団法人 日本交通公社

スケジュール

■6月14日 (木)

9:30 開場
10:00 開講・オリエンテーション
10:10

講義1 : 地域の“キラキラ”を生む観光とは何か
 地域の課題解決や活性化にあたり観光に寄せる期待はますます大きくなっています。また、時代とともに観光のあり方も旅行者の価値観も確実に変化しています。
 本講義では、成熟化した社会における消費行動としての旅行を読み解きながら、観光振興に携わる方々にまず捉えていただきたい、現代社会における観光とは、について解説します。そして、地域が主体となり地域の“キラキラ”を生み出す観光について、国内外の事例を交えながら考えます。

○講師:(公財)日本交通公社 常務理事 小林 英俊
兵庫県生まれ。旅行現場での豊富な経験を踏まえた観光マーケティング、地域活性化が専門。観光と環境、観光と健康の実践的研究、エコツーリズムの推進はライフワーク。北海道大学観光学高等研究センター 客員教授。

11:30 休憩
11:40

旅行マーケットの最新動向と震災後の人々の価値観変化
 地域の観光戦略を考えるには、旅行者の動きを読み、ニーズを把握する必要があります。本講義では、当財団の独自調査レポート『旅行者動向』などをもとに、まず旅行者や旅行市場の実態について解説し、今後の変化の方向についてお話しします。
 さらに、東日本大震災や福島原発事故などが社会全体や人々の価値観に与えた影響を考察し、旅行市場への影響、及び回復の道筋を最新の調査結果をもとに分析し解説します。

○講師:(公財)日本交通公社 主任研究員 黒須 宏志
千葉県生まれ。専門は、日本人の国内・海外旅行者市場動向の解析と予測。海外にも研究者ネットワークを広げ、国際的な視点から日本の旅行マーケットをウォッチ、観光産業界への提言を行っている。

12:50 昼食休憩
13:50

講義3:「顔が見えるおつきあい」が地域の産業をおこし、心豊かな交流を生む
~(株)四万十ドラマの発展プロセスに学ぶ

 1年持たないと言われた通行量1000台の道の駅「とおわ」。ところが開業から4年半で延べ来場者数は70万人を超えました。「ここにしかないもの」を提供することで、わざわざ訪ねたくなる価値を創り出すことに成功したのです。
 この目的型・滞在型道の駅を運営管理するのが(株)四万十ドラマ。地域の産業をおこし、それによって風景を守ることを目的とする住民主体のじゅうみん株式会社です。
 大切にしてきたのは、商品だけでなく地域の「考え方」を併せて伝えること。「考え方」は共感や交流を生み、外の人との関わりが生産者の意識を変えて循環する。そんな大きな地域戦略の中で観光を考える地域観光を学びます。また、「ジョイント役に徹しているだけ」と語る畦地社長のつなぎ、つなげる仕掛けづくりやファンづくりのノウハウをお聞きします。

○講師:(株)四万十ドラマ 代表取締役社長 畦地 履正 氏
昭和39年 高知県十和村(現四万十町)生まれ。高知東高校では野球部のエース、リーダーとして活躍。同校卒業後、通信関連企業、地元農協勤務を経て、平成6年 四万十川中流域町村でつくる(株)四万十ドラマに勤務。「四万十ひのき風呂」「しまんと緑茶」「四万十川新聞バッグ」など、地域資源を活かした様々な商品開発に携わり、四万十地域の新しい産業の創出に取り組む。平成19年 代表取締役に就任。

15:30 休憩
15:40 受講者による事例報告・意見交換会 (~19:00)
○課題の共有、意見交換ほか
ご参加の皆様の地域での取り組みや課題を共有化し、講師や参加者が意見を交換します。17:00からは交流会を開催します(軽食をご用意いたします)。毎年たいへん好評いただいていますので、続けてのご参加をお願いします。

■6月15日 (金)

9:30

演習(トレーニング):あなたも考える、地域発想のプログラムづくり
~青森県八戸市の取り組みを事例として

 本演習は、今年度より初めて行う新しい形式の講座です。ある地域の取り組みの経緯を物語風に編集した教材をまず読んでいただき、皆で考えるプログラムです。 今回は事例として青森県八戸市を取り上げました。講師と受講者とのやりとりを通して、“地域発想のプログラムづくりとは何か”、その根幹となる考え方を学び、それぞれに自らの問題として考える力を養います。
*青森県八戸市:八戸市は全国屈指の水産都市、北東北随一の工業都市。観光的な知名度は高くなかったが、平成18年に地元の代表的な家庭料理である「せんべい汁」がB級グルメとして大ブレイクし、全国から大きな注目を集めた。これ以降、「あさぐる」(朝市、銭湯を乗合タクシーで巡る)や「まちぐる」(街を巡って体験・満喫)といった地域密着プログラムが作られるなど、まちおこしの取り組みが活発化。

○講師:(公財)日本交通公社 主任研究員 吉澤 清良
埼玉県生まれ。バリアフリー、温泉、産業観光など多様なテーマから地域を見つめて20年。主役は地域の人をモットーに観光・交流による地域の活性化に取り組む。

10:45 休憩
11:00

講義4 : 「解決したい」が生んだ着地型~老舗観光地 鳥羽の新たな挑戦!
 伊勢志摩国立公園を有する鳥羽市では、旅行市場の変化への対応に苦慮しており、変革に向けた地域ぐるみでのチャレンジを続けています。
 本講義では、ワークショップやアンケート調査から明かとなった「鳥羽一番の魅力である “食”の楽しみが提供されていない。何とかしたい」との思いが生んだ食の着地型イベント「ぐるとば(3/16-25)」の事例より、皆の“やる気”を引き出す関わり方を学びます。
 このイベント開催のポイントは、目線を合わせた本音の付き合い、“壊してつないだ”プログラム開発の手法、モニターツアーを通じた気づきや学びの誘発などにありました。これらを具体的に裏方で支援し続けた当財団研究員がお話しします。
 そして、同時に行った「鳥羽市住民意識調査」から見えてきた地域による観光の考え方や参画意識の違いもあわせて紹介します。

○講師:(公財)日本交通公社 研究員 福永 香織
東京都生まれ、徳島県・千葉県育ち。市町村の観光振興計画の策定や中山間地域の交流事業等に関する調査・研究に携わる。

12:15 昼食休憩
13:15

講義5 : 続・地域の“とがった”に学ぶ、インバウンド推進のツボ
 震災後、大幅に減少したインバウンド(訪日外国人旅行)も緩やかながら回復傾向にあり、中長期的には重要な旅行マーケットであることから、多くの自治体でインバウンド関連の取り組みが行われています。
 本講義では、最新のインバウンド関連調査から見える外国人旅行者の動向について概観した上で、当財団が独自に取材した個性的・特徴的な取り組み(広島県・愛媛県「しまなみ海道」等)を紹介します。
 地域特性や強みを徹底的に磨き上げることで、他地域との差別化に成功している地域の価値“とがった”から、「インバウンド推進のツボ」を学びます。

○講師:(公財)日本交通公社  研究員 石黒 侑介
東京都生まれ。学生時代より中南米の地域振興、観光開発に関する開発援助プロジェクト等に関与。現在は海外経験を活かして我が国のインバウンド振興に関する調査研究等に携わる。

14:30

講義6 : 観光地における長期ビジョンの必要性~阿寒湖温泉にみる計画実現への歩み
 本講義では、団体・周遊型観光地から滞在(2泊3日)できるレイクサイド・リゾートへの脱皮を目指し地域一丸となって取り組んできた、ここ10年の阿寒湖温泉の動きをもとに、観光地における長期ビジョンの必要性とその実現に向けたプロセスや手法をお話しします。
 阿寒湖温泉では、まず関係者の意識改革を重視し、長期ビジョン策定時から「ニュースレター」を継続して発行するなど情報共有に力を入れてきました。こうした地道な取り組みが将来の共通イメージを持つことにつながり、地域の一体感を生み出し、その後の事業展開をスムーズにしていました。また計画推進の中核となり、時代に応じて組織の形態や機能、事業を大きく変容させてきた観光推進組織(現・NPO法人阿寒観光協会まちづくり推進機構)のあり方は他地域の参考となることでしょう。
 観光まちづくりの先進地とも言われるようになった阿寒湖温泉の観光構造変革のプロセスを、同温泉地に深く関わっている当財団の部長が解説します。
 また、この先10年を展望した新しい挑戦-観光地のダウンサイジングと質の向上、湖・大自然・アイヌ文化を基幹とした長期滞在リゾートの創生-についてもお話しします。

○講師:(公財)日本交通公社 研究調査部長 梅川 智也
新潟県出身。観光リゾートを主体とする都市・地域振興計画の策定、プロデュースに多数従事。美しい国土づくりをモットーに長年にわたり全国各地を訪れ、具体的な計画づくりを実践。課題解決型から個性創造型のビジョンづくり、プランづくりを重視。

16:00 総括(ふりかえり)
(公財)日本交通公社 常務理事 小林 英俊
16:30 閉講

※講義内容・講師は、やむを得ず変更となる場合がございます。その節はご了承ください。