セミナー・シンポジウム

平成25年度 観光基礎講座

2013年 6月27日(木)・28日(金)
平成25年度 観光基礎講座

地域主体の観光に取り組むための、考え方と進め方
~進化する田辺市熊野ツーリズムビューローに学ぶ意識改革と着地型観光

公益財団法人日本交通公社では、主に自治体で観光・地域振興に携わる職員の方々を対象として、毎年6月に「観光基礎講座」、その応用編として11月に「観光実践講座」を開催しています。18年目となる今年の「観光基礎講座」は、基礎的知識に加え、実践に応用できる知恵をプラスした講座です。

今回は、主に田辺市熊野ツーリズムビューロー(以下、熊野TB)の実践例から、地域主体の観光に取り組むための「考え方」と「進め方」を学びます。
熊野TBは2005年の市町村合併を機として広域観光促進のために発足し、欧米豪の成熟した客層をターゲットに絞り込んだプロモーション活動を始めました。海外との交流をきっかけに、実際に来てもらうしくみづくりが必要だと認識すると、2010年に、コミュニティと世界をつなぐ地域に根ざした旅行会社を立ち上げます。こうしてインバウンドを含む新たな旅行需要を創出、確実に実績を伸ばし、今ではユニークな活動を続ける着地型観光推進組織として大いに注目されています。

しかし、私たちが熊野TBから学ぶべきは組織のカタチというより、地域の人たちを「自ら主体的に考え、問題を解決しようとする人」へと変化させたことにあるのです。熊野TBは、何のために(外国人)観光客を受け入れるのかを地域の人々と共有し、地域の人の意識と行動を変えたのです。
今回のメイン講師は、この変革を起こした中心的人物のブラッド・トウルさんです。

観光関連部署に配属されたばかりの方はもちろんですが、長く観光に関わってこられた方にとっても、地域の観光振興のためのユニークな視点、斬新なアイデア、確実に進めるための手がかりを得る貴重な機会になるものと確信しています。
観光を学び、実践したい皆様のご参加をお待ちしております。

概要

テーマ 地域主体の観光に取り組むための、考え方と進め方
~進化する田辺市熊野ツーリズムビューローに学ぶ意識改革と着地型観光
開催日時 2013年6月27日(木)~6月28日(金)
会場 公益財団法人 日本交通公社 会議室
東京都千代田区大手町2-6-1 朝日生命大手町ビル17階
03-5255-6073
JR東京駅 日本橋口から徒歩2分
東京メトロ 大手町駅 日本橋寄りB6出口から徒歩1分
主な対象者 観光による地域振興に携わる地方自治体のご担当者
観光関連事業・商工会議所などのご関係者
主催 公益財団法人 日本交通公社

スケジュール

■6月27日 (木)

9:30 開場
10:00 開講・オリエンテーション
10:10

◆講義1:地域主体の観光のススメ
地域の課題解決や活性化にあたり観光に寄せる期待はますます大きくなっています。また、時代とともに観光のあり方も旅行者の価値観も確実に変化しています。
本講義では、成熟化した社会における消費行動としての旅行を読み解きながら、観光振興に携わる方々にまず捉えていただきたい、現代社会における観光とは、について解説します。そして、地域が主体となった観光の進め方について、国内外の事例を交えながらお話します。

○講師:(公財)日本交通公社 常務理事 小林 英俊
兵庫県生まれ。旅行現場での豊富な経験を踏まえた観光マーケティング、地域活性化が専門。観光と環境、観光と健康の実践的研究、エコツーリズムの推進はライフワーク。北海道大学観光学高等研究センター客員教授、東京大学非常勤講師、琉球大学非常勤講師。

11:30 休憩
11:40

◆講義2:独自調査から見えてくる旅行マーケット最新の動き
地域の観光戦略を考えるには、旅行者の動きを読み、ニーズを把握する必要があります。本講義では、当財団の独自調査レポート『旅行者動向』などをもとに、まず旅行者や旅行市場の実態について解説し、今後の変化の方向についてお話しします。

○講師:(公財)日本交通公社 主席研究員 黒須 宏志
千葉県生まれ。専門は、日本人の国内・海外旅行者市場動向の解析と予測。海外にも研究者ネットワークを広げ、国際的な視点から日本の旅行マーケットをウォッチ、観光産業界への提言を行っている。

12:40 昼食休憩
13:40

◆講義3:地域は何のために観光に取り組むのか~熊野TBが考える観光戦略
熊野TBは、2005年の市町村合併を契機に、5つの観光協会を構成団体として発足。世界遺産・熊野古道と点在する歴史ある温泉を活かし「世界に開かれた持続可能な質の高い観光地」を目指して取り組んできました。講義のポイントは、
 ・熊野TBの目指すところ、「成功」の意味や評価基準
 ・熊野TBの進化プロセスのポイント
 ・地域の観光を進めるための障害に気付く力、それを取り除く解決力とは
 ・日本人客が増えない時代の地域の観光戦略
 ・インバウンドは「慣れ」だけでは解決しない。「ツール」が重要
 ・プロモーションは大事。でもそれだけでは人は来ない
 ・リスクをとらなければ前には進めない
 ・世界の潮流としてクオリティ・サステイナブルツーリズムの考え方
などです。

○講師:田辺市熊野ツーリズムビューロー プロモーション事業部長
     ブラッド・トウル氏

カナダ・マニトバ大学でスポーツサイエンスを学び、カナダ国内でスキーインストラクター、プロのハイキングガイドとして働く。日本では「愛・地球博カナダ館」でホスティングスタッフ、北海道のスキーリゾートでもインストラクターを経験。
1999年から旧本宮町にてALT(Assistant Language Teacher)として3年勤務した縁で、2006年、熊野TB発足と同時に同国際観光推進員に就任。熊野の魅力を世界に知らせたいという強い思いで活動。「誰よりも熊野古道を歩いていて、詳しい!」「ブラッドさんがいたから自分もできた!」と地元で絶大な信頼を得ている。

15:20 休憩
15:30 ◆受講生からの話題提供・意見交換会 (~17:00)
ご参加の皆様の地域の観光に関し、誇れることや課題を共有し、講師はじめ、参加者と意見を交換します。17:15からは交流会を開催(軽食をご用意いたします)。他の地域の動きがわかる、ネットワークが広がる、と毎年たいへん好評です。

■6月28日 (金)

9:30

◆演習1:ブラッドさんの特別ワークショップ
「ソリューションの連続が地域観光成功への道!~問題に気づき、解決策を探る力をつけよう」

観光事業者はもちろん、役所から神社の巫女さんまでを対象に、田辺市内で延べ60回以上のワークショップを行い、地域の人の意識と行動を変えてきたブラッドさんの特別ワークショップ。皆で考えるプログラムです。

○講師:田辺市熊野ツーリズムビューロー プロモーション事業部長 ブラッド・トウル氏

11:00 休憩
11:15 ◆演習2:熊野TBから学ぶこと(まとめ)
グループごとにディスカッションのまとめを発表していただき、講師との意見交換を通じて理解を深めます。また前日から学んできた熊野TBが推進する地域主体の観光について、総括的にまとめていきます。
12:15 昼食休憩
13:15

◆講義4:「食文化」で地域主体の観光
地域の「食」をテーマとした取り組みはますます盛んになっています。
観光地としての知名度は決して高くなかった青森県八戸市では、家庭料理「せんべい汁」に着目。今ではB級グルメとして大ブレイクし、住民発想によるコトおこし(特産品開発・観光)からまちおこしへと取り組みが展開しています。そのプロセスから多くのヒントを学びます。
 一方有名老舗観光地の三重県鳥羽市では、「一番の魅力は“食”の楽しみなのに、それが提供できていない」と気づき、24年度から、住民が案内する食の着地型イベント「ぐるとば」を開催。一連のプロセスに関わり、地域の人の意識と行動変化を支援した研究員が実践例を語ります。

○講師:(公財)日本交通公社 主席研究員 吉澤 清良
埼玉県生まれ。バリアフリー、温泉、産業観光など多様なテーマから地域を見つめて20年。「主役は地域の人」をモットーに観光・交流による地域の活性化に取り組む。
○講師:(公財)日本交通公社 研究員 福永 香織
東京都生まれ、徳島県・千葉県育ち。市町村の観光振興計画の策定や中山間地域の交流事業等に関する調査・研究に携わる。

14:30 休憩
14:40

◆講義5:「まち歩き」で地域主体の観光
各地で人気高まる「まち歩き」。「長崎さるく博」成功から6年を経た長崎市には、なんと博覧会時を上回るまち歩き参加者が訪れ、400人以上のさるくガイドが今も楽しく生き生きとまちを案内しています。博覧会の総合プロデューサー、行政マン、市民プロデューサーから教えてもらった人やまちの活かし方を紹介します。また「大阪あそ歩」や弘前の「路地裏探偵団」、山鹿市の「米米惣門ツアー」など、各地の「まち歩き」から地域主体の観光を実践するためのヒントを探ります。

○講師:(公財)日本交通公社  主任研究員 久保田 美穂子
長野県生まれ。主に温泉地、旅館・ホテルをめぐる旅行マーケットの動向、地域振興のためのセミナー企画に関する業務に携わる。平成16年度より本講座の企画運営を担当。「まち歩き」をテーマとした昨年の「観光実践講座」のため全国の人気「まち歩き」10コースに参加。

16:00 ◆総括(ふりかえり)
○(公財)日本交通公社 常務理事 小林 英俊
16:30 閉講

※講義内容・講師は、やむを得ず変更となる場合がございます。その節はご了承ください。