No.156 第1回研究懇話会を実施しました(5月22日)

(公財)日本交通公社では2025年度、当財団の研究顧問を講師に招いて講演いただき、その内容を元に研究員と対話を行う研究懇話会を実施します。全5回の開催を予定しており、5月22日に第1回の研究懇話会が開催されました。
今回の講師は、交通・都市・国土学を専門とする政策研究大学院大学の家田仁特別教授です。研究懇話会の所要時間は約1時間30分で、前半は家田氏による「観光は国民の『インフラ』たり得るか?」と題した講義が行われました。
講義の冒頭では、インフラについての基本的な説明が行われ、道路や水道などの施設にとどまらず、自然環境や制度などの社会的共通資本、さらにはソーシャルキャピタル(社会関係資本)などもインフラと捉えられるということが示唆されました。
これらのインフラに共通する「インフラ性」について、家田氏は1)人の生活の基盤となっていること、2)主役が私たちであるという『私たち性』 、3)価値基盤の共有、4)一定の継続性を前提としていること、等だと述べました。その上で、観光は本来そのような条件を満たすインフラたり得るものだが、現状では「私たち」の一体性が希薄で、共有価値基盤も脆弱であり、今後に向けては多重/多様性を踏まえた新たな「私たち性」の構築と観光が内包する「不調和/不安定のダイナミズム」の活用が重要ではないかと締めくくりました。
会の後半に行われた質疑応答では研究員から活発に質問が投げかけられ、家田氏からは具体的な事例を交えて丁寧な回答をいただきました。