No.163 第21回自然公園研究会を開催しました
2025年10月28日(火)に当財団ライブラリーホールにて第21回自然公園研究会を開催しました。東洋大学 国際観光学部 佐野浩祥氏、熊本県小国町役場産業課 新家龍太郎氏、環境省 国立公園課 速水香奈氏のご講演をはじめ、東京大学大学院 農学生命科学研究科 山本清龍氏にコーディネートいただいたディスカッションも盛況のうちに閉会となりました。
今回のテーマは、「オーバーツーリズム再考〜集中と分散をコントロールし、快適性と賑わいを確保する〜」でした。都市部、自然公園、地方自治体の具体的な事例をふまえ、オーバーツーリズム対策と地域活性化について多角的な議論が行われました。イタリアの事例では、観光客増加にともなう家賃上昇や環境悪化といった住宅問題が起きており、その対策としてのアクセス制限について住民の合意が広がりつつあることが示されました。熊本県小国町・鍋ヶ滝公園では、予約システムの導入により交通渋滞が解消された一方で、管理費用の増加に対応するため、入園料・駐車料金の見直しが検討されていることが報告されました。また、富士山の事例では、入山料4,000円導入後も利用者数の大幅な減少はみられず、観光資源としての富士山の魅力の強さが改めて示されました。全体を通じて、予約制や料金設定によって来訪者の集中を一定程度コントロールすることは可能である一方、来訪者の分散を実現することは難しく、地域が「望ましい観光客像」を明確にしたうえで、データに基づいたモニタリングと長期的な視点に立った交通体系の整備が今後の共通課題であることが共有されました。
プログラム:第21回「オーバーツーリズム再考〜集中と分散をコントロールし、快適性と賑わいを確保する〜」
- 趣旨説明:オーバーツーリズムを再考する視点と論点
山本 清龍 氏(東京大学大学院 農学生命科学研究科) - 発表①:イタリアの市民生活と観光の共存
佐野 浩祥 氏(東洋大学 国際観光学部) - 発表②:予約制導入による 鍋ヶ滝公園 の運営管理
新家 龍太郎 氏(熊本県小国町役場 産業課) - 発表③:自然公園における分散化と利用の規制の手法について
速水 香奈 氏(環境省 国立公園課) - ディスカッション


