活動紹介

No.49 2016年度第3回「温泉まちづくり研究会」を開催しました(2017年1月26日)

No.49 2016年度第3回「温泉まちづくり研究会」を開催しました(2017年1月26日)

7つの温泉地と当財団が共同で研究活動を進めている「温泉まちづくり研究会」(2008年発足)。2016年度第3回研究会を1月26日(木)、当財団の会議室で開催しました。概要は以下の通りです。

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1.開催挨拶
 大西雅之氏(温泉まちづくり研究会 代表)

2.プレゼンテーション
「DMOの現況と方向性」
 山田雄一(当財団 観光政策研究部次長・主席研究員)

3.会員温泉地からの取り組み報告(発言順)
 草津温泉:湯本晃久氏(草津温泉旅館協同組合 理事)
 鳥羽温泉:吉川勝也氏((一社)鳥羽市観光協会・鳥羽市温泉振興会 会長)
 有馬温泉:金井庸泰氏(旅館 御所坊)
 道後温泉:新山富左衛門氏(道後温泉旅館協同組合 理事長)
 阿寒湖温泉:山下晋一氏(NPO法人阿寒観光協会まちづくり推進機構 理事長)
 由布院温泉:冨永希一氏((一社)由布院温泉観光協会 副会長) 
 黒川温泉:北里有紀氏(黒川温泉観光旅館協同組合 代表理事)

4.海外のDMOの現状報告
 清水雄一・西川亮(当財団 観光政策研究部 研究員)

5.ディスカッション
 「温泉地の観光推進組織(DMO)はどのような役割を担うべきか」

6.次年度研究会などに関する連絡
 議事進行:梅川智也(温泉まちづくり研究会 事務局長)
      守屋邦彦(温泉まちづくり研究会 事務局次長)

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今回の研究会には、7つの会員温泉地の皆さん全員が参加しました。当財団は昨年8月に南青山にオフィスビルを新築・移転したため、開始前に内覧会を行い、皆さんに新しいオフィスをご見学いただきました。研究会の会場となった地下1階は、通常は「旅の図書館」として使われているスペースで、旅に関する蔵書に囲まれた中で研究会が行われました。

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今回のテーマは「観光推進組織(DMO)」についてです。昨年2月から日本版DMOの候補法人の登録がスタートし、既に全国の登録件数は120を超えていますが、組織のあり方や何を目指すべきなのかなど、いまひとつわからないといった疑問を持つ方も未だ多くいるのが現状です。

そこで今回の研究会では、DMOという概念が登場した背景や海外の事例紹介など、基本的な概要を改めて学びつつ、DMOの形成に向けた施策展開の課題について、各会員温泉地の取り組みについての情報交換も交えながら、議論を行いました。

最初に当財団の山田雄一主席研究員(写真)より、「DMOの現況と方向性」と題したプレゼンテーションが行われました。

DMOは約15年前に登場した言葉と概念で、90年代前半に製造業向けのマネジメントやマーケティング理論がホテル業を含むサービス分野に拡大し、90年代後半になるとさらに観光地にも広がりを見せるようになります。

そうした取り組みを行う観光組織を既存の組織と区別するため、DMO(Destination Marketing/Management Organization)という呼称が使われるようになりました。

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山田主席研究員はDMOの基本形について「行政から独立した民間組織であり、自主的な財源を持つ北米系と、補助金や会費に依存する欧州系の2つに大きく分けられる」と説明。北米系はマーケティングが主体、欧州系はマネジメントが主体と、DMOの「M」が表す活動がそれぞれ異なると述べました。

北米系のDMOが有するマーケティング展開のための自主財源として、フロリダ州のデイトナビーチ・エリア・コンベンションズ&ビジターズビューローでは、宿泊税から一定比率の額を獲得しており、それが総予算1000万ドルの8割を占めているといった事例も紹介されました。

また、あまり注目されていませんが、DMOの基本的なミッションはオフシーズンやショルダーシーズン対策による経済振興であると説明。「MICEの誘致なども、その延長線上で考えられるべき」と山田主席研究員は述べました。

このほか、清水雄一・西川亮の両研究員からは、アメリカやヨーロッパなどの海外DMOの現状についての事例報告も行われました。

会員温泉地の現状報告では、日本版DMOの「地域DMO」として候補法人登録が行われている阿寒湖温泉、草津温泉、鳥羽温泉、由布院温泉からはDMOの活動現状を中心に、また有馬温泉、道後温泉、黒川温泉からはDMOに対する考え方や、DMOが行うような活動と自らの組織の活動との比較などを中心としたお話がそれぞれありました。

今回の研究会では、山田主席研究員のプレゼンテーションの直後から待ち兼ねていたように、会員の皆さんから次々に質問が投げかけられました。皆さんがDMOに対して抱く関心の高さやさまざまな疑問、戸惑いなどが浮き彫りになったと言えます。

会員温泉地の現状報告やディスカッションでも、引き続き多くの疑問や率直な意見が飛び交い、今までに増して非常に活発な議論が行われた研究会となりました。

 

(2017/2/3 守屋邦彦)