2021年度第1回研究会を2021年7月7日(水)、オンライン会議方式で実施しました。概要は以下のとおりです。

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【第1部】
開会挨拶 (公財)日本交通公社 会長 末永 安生
特別講演 :「豊岡の挑戦~ Local & Global ~」
(一社)豊岡アートアクション理事長/前豊岡市長 中貝 宗治氏

【第2部】 総会・研究会
(1)挨拶 温泉まちづくり研究会代表 宮﨑 光彦氏
(2) 2020年度事業報告・決算報告・監査報告
(3) 2021年度事業計画(案)・予算(案)
(4)情報共有とディスカッション

各温泉地の状況について(代表発言者・発言順)
阿寒湖温泉 :高田 義人 氏(阿寒観光協会まちづくり推進機構 専務理事)
道後温泉:奥村 敏仁 氏(道後温泉旅館協同組合 副理事長)
草津温泉:湯本 晃久 氏(草津温泉観光協会理事・DMOデジタルマーケティング部会/ 草津温泉旅館協同組合理事)
由布院温泉 :生野 敬嗣 氏 (由布市まちづくり観光局 事務局次長)
鳥羽温泉:濱口 尚紀 氏 (鳥羽市温泉振興会 事務局長)

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 2021年度第1回も前年度に引き続き、コロナ禍を考慮してZoomを使ったオンライン配信を行いました。

 第1部では、(公財)日本交通公社の末永安生会長が「コロナ禍による価値観の劇的な変化に対し、観光は多様な切り口から新しいものを生み出すことが求められている」と開会の挨拶を行なったのに続き、(一社)豊岡アートアクション理事長の中貝宗治氏による特別講演が行われました。

 

 兵庫県豊岡市では、高度成長時代の環境破壊によって一時日本で絶滅した野生のコウノトリを復活させるとともに高付加価値な農業を推進し、近年は演劇を核としたユニークなまちづくりを展開しています。今年4月までの5期20年間に渡り、豊岡市長を務めた中貝氏はこうした取り組みの牽引役を果たしてきました。
 中貝氏は「まちづくりは戦略と熟慮である」という信念のもと、人口推移などの客観的データを元にビジョンを明確にすることが重要と強調しました。そして 「グローバル化の進展で世界の文化が均質的になる中、地域固有・ローカルであることは世界で輝くチャンスにつながる」として「小さな世界都市」を合言葉にさまざまな施策を打ち出してきました。

 具体的な切り口の一つが「深さをもった演劇のまち」の創造で、近畿最古の芝居小屋を復活させて歌舞伎公演を恒例化したり、2014年にはパフォーミングアーツに特化した日本最大のアーティストインレジデンス「城崎アートセンター」を創設しました。
 コロナ禍の昨年9月に開催された豊岡演劇祭は、来場者の半数が宿泊を伴う県外在住者で、客席数は半分以下、会場での飲食禁止などの制約がありながら、約4500万円の観光消費額を生み、経済波及効果の試算は約7500万円となりました。

 「演劇祭を開催する主目的は観光」と中貝氏は明言し、カンヌ映画祭が開催されるフランスのカンヌは人口7万人、世界的な演劇祭の開催で知られるアヴィニョンは人口9万人。豊岡市は人口8万人だが、小さな町であることは全く問題ないとした上で、「優れた演劇やダンスがあれば、日本中、あるいは世界から集客できる可能性が見えた。豊岡市は東京23区とほぼ同じ面積だが、演劇好きな方たちは不便をものともせずにこの広いエリアを回遊してくれた。また、演劇祭や映画祭、音楽祭は時期を問わず開催できるので、閑散期の需要喚起策としても効果的」と述べました。

 第2部の冒頭では宮﨑光彦代表が挨拶を行い、中貝氏の「まちづくりは戦略と熟慮」という言葉に共感を示し、「私もまちづくりはロマンとソロバンだと思う」と述べました。
 また、今年度で第5ステージの最終年度に当たる3年目を迎える研究会について「若者や女性の参画や行政との連携など、これまでの活動を踏まえて今後の方向性を考えていきたい。7つの温泉地による議論から、日本全体への波及効果を目指す必要もあるのでは」と述べました。

 続いて、各地で進められているコロナワクチンの職域接種を含めた現状報告が各温泉地によって行われました。
 草津温泉では6月、「裏草津」と呼ばれる地蔵地区に漫画図書ギャラリーとカフェの新スポットがオープンしたこと、阿寒湖温泉では2019年にスタートし、昨年はコロナ禍で中断していた体験型デジタルアート「カムイルミナ」が2年ぶりに実施を再開したことなどが報告されるなど、観光に関する新たな動きについての最新情報が共有されました。

(2021.7.20 事務局)