柿島 あかね(観光研究部 上席主任研究員)
いま、携わっている仕事
当財団の研究員の主な業務は、国・地方公共団体・公的機関等から依頼を受けて観光地づくりや観光政策の遂行・立案支援等を行う「受託事業」と社会ニーズ等に応じて自ら研究テーマを設定し研究を行う「自主研究」の2本の柱から成り立っています。
私の場合、近年の受託事業では、国や地方自治体からのインバウンド・日本人の旅行市場に関する統計調査や、観光消費による経済波及効果に関する調査を主に担当しています。
例えば、訪日外国人を対象とした統計調査は、インバウンド市場の成長局面においても注目を集めていましたが、最近は、新型コロナウイルスによる低迷からの回復という点でも注目されている調査です。主な業務は訪日外国人旅行者の旅行支出、旅行消費額等の推計や関連資料の作成、プレスリリース等に際してのサポート等が挙げられます。その他、ある観光地域づくり法人(DMO)からの受託調査では、観光施策に活用できる関連データの整理、また、地域で観光業に従事する若手層を対象としたデータを観光施策にどう活用していくかを議論するワークショップの企画・運営を行いました。
自主研究では、当財団の独自調査2件を担当し、両調査について、旅行年報、旅行動向シンポジウム、研究員コラム等で公表を行っています。1件目の海外12市場の海外旅行の嗜好等を把握する「DBJ・JTBF アジア・欧米豪
訪日外国人旅行者の意向調査」は、㈱日本政策投資銀行と共同で実施する当財団の独自調査です。調査設計、分析、考察において関係者間で何度も議論を重ねて作り上げるため、時間はかかりますが、調査結果が各種メディアに引用掲載されたり、国や地方自治体の観光政策の場面で活用されているところを目の当たりにすると、とてもやりがいを感じます。2件目の台湾・香港・中国で販売される訪日パッケージツアーの商品内容を分析する「JTBF訪日旅行商品調査」はデータが蓄積されてきたことから、これまでに2本の査読論文を執筆しています。
受託調査、自主研究を通じて、ここ数年はインバウンド市場を扱うことが多く、新型コロナ流行前の好調な時期、新型コロナ流行による低迷、そして回復と、市場の変化が目まぐるしい時期に各種調査に携わることができたのは、研究員キャリアにおいてとても貴重な経験でした。
これからのキャリアについて
入社から10年ほどは「研究員」として過ごし、多様なテーマの受託調査、自主研究を担当しました。当時は一つのテーマに腰を据えて取り組みたい気持ちもあり、不安もありましたが、今振り返ってみると、これらの経験には全て意味があり、現在につながっていると感じています。主任研究員時代の業務経験から、現在は、インバウンドを中心とした旅行市場や経済効果を専門としており、ここ数年は、これらのテーマに関連した講演、執筆、外部委員等、組織外での活動も増えてきました。今後も積極的にいろいろな形で調査結果を発信したり、外部の研究者や専門家とも交流し、専門性を突き詰めていきたいと思います。
また、現在は子育て中ですが、当財団では裁量労働制を採用しており、子供の行事や通院があっても、業務との調整が可能です。子育てとキャリアの両立は簡単なものではありませんが、子供の成長や業務内容に応じて、その時々で自分や家族にとって最適なバランスを考えていきたいと思います。
就職活動中のみなさんへのメッセージ
社会人は多くの時間を仕事に費やすことになります。どんな仕事でも楽しいと思える瞬間がある一方、時には困難に直面することがあるのも事実です。私の場合は、どういった仕事であれば自分が困難な場面を乗り越えられそうか想像しながら就職活動を進めてきました。
また、研究員一人一人の自主性を尊重し、柔軟に対応してくれる点は当財団の強みだと思います。私の場合、業務を進める上で必要な知識やスキルを習得したいと思ったときには、上長に相談し、外部のセミナーや大学の講義を受講したり、自己啓発研究支援制度を利用して萌芽的な研究にも取り組むことができました。制度の有無に関係なく、研究員の成長に資することであれば応援してくれる環境だと感じています。
