研究員へのインタビュー



柿島あかね 観光研究部 上席主任研究員 2007年入社観光学研究科修了

柿島あかね プロフィール詳細

柿島 あかね(観光研究部 上席主任研究員)

いま、携わっている仕事

 当財団の研究員の主な業務は、国・地方公共団体・公的機関等から依頼を受けて観光地づくりや観光政策の遂行・立案支援等を行う「受託事業」と社会ニーズ等に応じて自ら研究テーマを設定し研究を行う「自主研究」の2本の柱から成り立っています。
 私の場合、近年の受託事業では、国や地方自治体からのインバウンド・日本人の旅行市場に関する統計調査や、観光消費による経済波及効果に関する調査を主に担当しています。
 例えば、訪日外国人を対象とした統計調査は、インバウンド市場の成長局面においても注目を集めていましたが、最近は、新型コロナウイルスによる低迷からの回復という点でも注目されている調査です。主な業務は訪日外国人旅行者の旅行支出、旅行消費額等の推計や関連資料の作成、プレスリリース等に際してのサポート等が挙げられます。その他、ある観光地域づくり法人(DMO)からの受託調査では、観光施策に活用できる関連データの整理、また、地域で観光業に従事する若手層を対象としたデータを観光施策にどう活用していくかを議論するワークショップの企画・運営を行いました。
 自主研究では、当財団の独自調査2件を担当し、両調査について、旅行年報、旅行動向シンポジウム、研究員コラム等で公表を行っています。1件目の海外12市場の海外旅行の嗜好等を把握する「DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査」は、㈱日本政策投資銀行と共同で実施する当財団の独自調査です。調査設計、分析、考察において関係者間で何度も議論を重ねて作り上げるため、時間はかかりますが、調査結果が各種メディアに引用掲載されたり、国や地方自治体の観光政策の場面で活用されているところを目の当たりにすると、とてもやりがいを感じます。2件目の台湾・香港・中国で販売される訪日パッケージツアーの商品内容を分析する「JTBF訪日旅行商品調査」はデータが蓄積されてきたことから、これまでに2本の査読論文を執筆しています。
 受託調査、自主研究を通じて、ここ数年はインバウンド市場を扱うことが多く、新型コロナ流行前の好調な時期、新型コロナ流行による低迷、そして回復と、市場の変化が目まぐるしい時期に各種調査に携わることができたのは、研究員キャリアにおいてとても貴重な経験でした。


これからのキャリアについて

 入社から10年ほどは「研究員」として過ごし、多様なテーマの受託調査、自主研究を担当しました。当時は一つのテーマに腰を据えて取り組みたい気持ちもあり、不安もありましたが、今振り返ってみると、これらの経験には全て意味があり、現在につながっていると感じています。主任研究員時代の業務経験から、現在は、インバウンドを中心とした旅行市場や経済効果を専門としており、ここ数年は、これらのテーマに関連した講演、執筆、外部委員等、組織外での活動も増えてきました。今後も積極的にいろいろな形で調査結果を発信したり、外部の研究者や専門家とも交流し、専門性を突き詰めていきたいと思います。
 また、現在は子育て中ですが、当財団では裁量労働制を採用しており、子供の行事や通院があっても、業務との調整が可能です。子育てとキャリアの両立は簡単なものではありませんが、子供の成長や業務内容に応じて、その時々で自分や家族にとって最適なバランスを考えていきたいと思います。

就職活動中のみなさんへのメッセージ

 社会人は多くの時間を仕事に費やすことになります。どんな仕事でも楽しいと思える瞬間がある一方、時には困難に直面することがあるのも事実です。私の場合は、どういった仕事であれば自分が困難な場面を乗り越えられそうか想像しながら就職活動を進めてきました。
 また、研究員一人一人の自主性を尊重し、柔軟に対応してくれる点は当財団の強みだと思います。私の場合、業務を進める上で必要な知識やスキルを習得したいと思ったときには、上長に相談し、外部のセミナーや大学の講義を受講したり、自己啓発研究支援制度を利用して萌芽的な研究にも取り組むことができました。制度の有無に関係なく、研究員の成長に資することであれば応援してくれる環境だと感じています。

柿島あかね


江﨑貴昭(観光政策研究部 副主任研究員)

これまで/現在関わっている業務について

 受託事業では、特定地域(地方自治体、DMO)や民間等での対応が多く、観光戦略策定、DMO運営支援、スキーに関する市場調査、経済波及効果に関する調査、二次交通等、多岐にわたるテーマ/内容について幅広く対応をしています。また直近では、観光産業が日本国にとって重要でありつつも、これをどのように強い産業として強化するかを網羅的に議論・整理し、提言としてまとめていく業務があり、自身の観光振興に関する知見の総合力が試される機会でしたが、一定の価値を持つアウトプットを行うことができ、印象深い仕事となりました。
 自主研究では、現在は、行政関係者、観光の実務者等の研究ネットワークを2件、担当、担当しています。1つ目の「観光財源研究会」では、宿泊税を中心とした観光財源の「導入」と「使途」の枠組みについて支援を行っています。本研究会の中で行政やDMO等を対象としたセミナーを開催し、観光財源導入のプロセスや導入後のガバナンスについて議論を行ったほか、「観光財源ガイドブック」を執筆・出版しました。昨今の観光財源への関心が高まっている中で社会に対して広く発信することができ、一定の反響もいただきました。2つ目の「マウンテンリゾート研究会」では、山岳リゾートの振興を目的とした各種取組を行っています。直近では、「マウンテンリゾート研究会シンポジウム」を開催し、マウンテンリゾートに関わる諸課題について、各専門家・実践者を交えた情報共有や議論を行ったほか、山岳リゾートの先進地であるアメリカ・コロラド州へ会員とともに視察に行い、先進地の最新の動向についてスキー場事業者、行政、DMO等に提供しました。自主研究はセミナーや学会での発表や各種出版物の執筆を担う等、発信の機会があり、成長の機会にもなっています。

江﨑貴昭 観光研究部 副主任研究員 2022年中途入社 都市環境科学研究科観光科学域修了

江﨑貴昭 プロフィール詳細

江﨑貴昭

キャリア採用目線でのJTBFで働く魅力

 私はキャリア採用として入社をしています。以前はコンサルタントとして地域の観光計画策定と推進、観光に係る調査等を行っていたほか、中央省庁(観光庁)へ出向し、全国の観光地を俯瞰的に捉えながら各種支援を行っていました。このような経験を経た中で、JTBFの「旅行・観光専門のコンサルタント・シンクタンクの歴史が長く、社内に観光振興に関する様々な知見がある」ことに魅力を感じ、また、「組織」としてだけでなく「個人」として内外に評価され、様々な知見を積み重ねながら観光振興に尽力できることを自身のキャリアに求めていたことから、JTBFで働くことを求め、現在に至っています。
 実際に当財団で働いてみて感じることは、国内有数の観光先進地や先進的な海外地域と触れ合う機会が多いことです。このような地域は課題先進地でもあるため、必然的に最新の動向や取組を学び、ともに考える機会があるため、自身の知見の積み上げることができる、これ以上ない環境だと感じています。入社後の2年間でハワイ、オーストラリア、スイス、オーストリア、韓国、アメリカ(コロラド州)と海外地域を多く訪れることができたのも、非常に幸運でした。また、当財団は、特定のクライアントがいて成り立つ「コンサルタント」と社会に対する発信が可能な「シンクタンク」の両方の役割を担っています。地域や事業者等の課題解決に寄り添いながら、同時に、長い時間軸で課題を捉え、提言していくマルチな役割に、難しさとやりがいを感じています。

就職活動中のみなさんへのメッセージ

 私は学生時代、観光学科出身でしたが、JTBFは様々な学科出身の方がいます。また、最近はキャリア採用が増えていることもあり、多様なバックグラウンドを持つ方がいますが、各研究員の持つ目線を感じながら観光振興に関する研究活動ができるJTBFは、独特の面白さがあると思います。
 また、組織としての活動のみならず、外部活動(委員、講演等)等、個人としての活動も可能なので、自身のネットワークや好奇心に応じた活動ができます。このような雰囲気にも共感する人は、楽しく働くことができる環境だと思います。
 最後に、JTBFは「実践的な研究者集団」と称していることもあり、初見では固く見られることもあるかもしれませんが、研究者の皆さんは温かく柔らかいひとが多いので、安心してください。




山本奏音 観光研究部 研究員 2021年入社 工学系研究科社会基盤学専攻修士課程 修了

山本奏音 プロフィール詳細

山本奏音(観光研究部 研究員)

関わっている業務について

 受託事業では、様々な地域の様々な業務に関わってきました。地方自治体の観光計画や統計の作成に関わる業務に関わる機会が特に多かったですが、その他にも観光協会の地域資源活用事業の支援、古民家活用の調査事業等をはじめ多岐にわたる業務を経験してきています。仕事をしていると、クライアントや関係者から信頼を得るためには、深い専門性を持っているだけではなく様々な引き出しを持っていることが重要だと感じます。入社してからまだ年数が短い私は、まずは様々なタイプの業務に関わることで自分の引き出しを増やしていけたらと考えています。
 自主事業では、温泉まちづくり研究会の運営に関わっています。温泉まちづくり研究会では、温泉地が抱える共通の課題について解決の方向性を探り、各地の温泉地の活性化に資することを目的に、全国の7つの温泉地の関係者や行政担当者、有識者等が集まって自由闊達に議論をしています。日本を代表する温泉地のまちづくりを長らく率いてきた方々が率直に議論・交流する場というのは貴重なものだと思いますし、彼らから直接意見を聞き、学ぶ機会を得ているというのは、私にとって大変幸運なことだと感じています。
 研究会では、そのときまさに温泉地が抱えている課題だけではなく、数十年先の未来を見据えたテーマも扱うことを大切にしています。2022年度からは「温泉地の環境対策」をテーマに活動を行っています。情報やデータを基に皆で議論をすることに加え、国内外の先進地視察も行いました。温泉まちづくり研究会に限らずJTBFの自主事業・自主研究では、必要ならば参考となる地域へ視察に行くことができる環境が整っています。国内外問わず先進地の状況を自らの目で見てくることができるこの環境は、大変ありがたいものだと思っています。

日本交通公社で働く魅力

 様々な経験・勉強の機会があることが、当財団の大きな魅力だと感じています。上述のような関与している受託事業や自主事業の研究会運営、国内外の視察から経験や学びを得られることはもちろんですが、その他にも多様な機会があります。例えば当財団は複数の大学でオムニバス形式の講義を行っていますが、私は入社3年目から講義の機会をいただいています。行った講義のテーマの1つが「観光計画」でしたが、講義を準備するにあたって関連する書籍を読んで勉強したり、それを踏まえて自分が今までに関与した観光計画関連の業務を改めて見直しました。観光計画について体系的に勉強して捉え直す良いきっかけになったと感じています。「旅の図書館」が併設されていることも、大きなメリットだと感じています。観光とその周辺分野の基本的な書籍が揃っており、また当財団と関わりの深い地域の資料も豊富であるため、何か勉強したいことがあるときはまず図書館を利用しています。
 また仕事をしていると、多くの魅力的な観光地や観光施設を知る機会があります。仕事や視察でそれらを訪れることも多いですが、私はその際に気に入った地域や施設には家族と一緒にプライベートで再訪することもあります。実際に自分で宿泊や体験を味わうと新たな発見もありますし、仕事で得たつながりや知識をプライベートの充実にも活かすことができるのは、魅力の一つではないかと思います。

就職活動中のみなさんへのメッセージ

 JTBFでは、複数人でチームを組んで業務にあたることが多いです。それぞれが自分で築いてきた研究分野や経験の蓄積を持っていて、観点も異なるため、一緒に仕事をすると様々な気付きがあります。また、皆それぞれのライフステージや暮らしにあった働き方をしています。私は趣味で音楽活動をしていますが、フレックスタイム制を活用して平日夕方に練習を入れることもあります。他にも、子育て中の研究員や遠方に居住している研究員等もおり、それぞれのスタイルで仕事に取り組んでいます。
 仕事において「やりたいことができる環境」というのは大切ですが、そこには、それを続けて深めていくことができるかという視点が欠かせないと思います。観光の調査・研究に関わりたい人にとって、当財団はそれぞれがやりたいことに取り組むこと・続けることをサポートしてくれる場所なのではないかと思っています。

山本奏音