
2027年2月1日から、沖縄県では定率2%の宿泊税導入がはじまる。その目指すところは、観光がもたらす恩恵を最大化しつつ、住民の生活の質を向上させ、持続可能な観光立県、石垣市においては観光立市を磨きあげていくことにある。
ところで、石垣市の人口は、2023年7月にはじめて5万人を超えたが、現在は、5万人を割り込むものの人口が比較的安定して維持されている。その背景には、観光産業が単なる経済活動を超え、地域への「入り口」として機能してきた側面があると考える。
「住んでよし、訪れてよし」というフレーズがあるが、2000年以降、各自治体の観光施策においても使われ、普及してきた観光振興の指針である。現行の「観光立国推進基本計画」では、働き手にとって魅力ある観光産業であり続けるため「働いてよし」も加わっている。住んでよし(地域住民の満足)、訪れてよし(観光客の満足)、働いてよし(事業者の満足)の「三方よし」である。
石垣市の観光立市宣言(1997年)では、「島ぬ美しゃ・心美しゃ(自然や景観の魅力・人やその暮らしと文化の魅力)」を理念に掲げている。観光客として訪れた人々が、地域の自然や文化に魅了され、地域住民との交流があり、リピーターとなり、やがて「移住・定住」する。想像するに、この理念は、離島の地へはるばる海を越えて来て頂いたことへの感謝とまた来て欲しいという、先人が歴史の中で受け継いできた離島の情緒・心理の文脈とつながっているのだろう。
2010年にはじめて策定された「石垣市観光基本計画」では、リピーターの獲得を基本目標としている。単に訪れてよしではなく、暮らすように旅する、という旅行形態の成熟にアプローチするという観点である。当時は「海人」とデザインされた石垣島発祥のTシャツデザインが人気を博していたが、近頃は、「オリオンビール」のロゴTシャツを着用している旅行客の姿をよく目にする。ファッションはオン・オフという気分の切り替え、地域性を実装する。他にも島ぞうり(ビーチサンダル)、島酒(泡盛)など、リゾートを楽しむスタイルアイコンがある。そして、石垣島は観光スポットと住民の生活圏に境がないのが特徴である。日常の延長的に暮らすように旅する感覚が生じる場所でもある。こうしたことが、反復的な来訪そして「移住・定住」につながり、離島特有の壺型の人口構造を星型に近づけることを誘引するのではないだろうか。観光産業は、未経験者でも参入しやすく、IターンやUターン希望者にとっての最初の受け皿となる。観光業で培ったスキルを活かし、後に起業や地場産業へ転身するケースもある。
言うまでもなく課題もある。観光は外部要因に対して脆弱性があることは、コロナ禍で露呈した。また、住民生活・自然環境への負荷の抑制、文化の誤った商品化など本来の質や価値を見失わないようにガバナンスすることが肝要である。
美しい自然がすぐそばにあり、首都圏まで直行便でつながり、都市機能が備わる中で住民がのどかに暮らし、観光業が他の産業とつながり、その結果として観光客が何度も訪れ、出会いがあり、その背景に文化やライフスタイルを感じる。観光の意味合いは多様化しており、社会情勢の影響を受ける。比喩的に解釈すると、観光と音楽の旋律は似ていると思う。観光体験や島の暮らしが調和された楽曲のようにあることが望ましい。この先もこの土地ならではのメロディーやリズムが人をしあわせにするために刻まれていけば幸いである。

