活動紹介

No.177 第6回研究懇話会を実施しました(3月26日)

No.177 第6回研究懇話会を実施しました(3月26日)

(公財)日本交通公社では2025年度、当財団の研究顧問を務める有識者を講師としてさまざまな角度から話題提供をいただき、その話題を元に研究員と対話を行う研究懇話会を実施しています。全6回の開催を予定しており、3月26日に最終回となった第6回の研究懇話会が開催されました。

今回、講師としてお招きしたのは米国フロリダ州・セントラルフロリダ大学 ローゼン・ホスピタリティ経営学部 テニュア付准教授の原忠之氏です。原氏は、観光地経営や経済効果分析を専門分野として研究し、日本の観光政策に多くの提言を行っています。研究懇話会の前半は「地域経済発展と社会問題改善の手段としての宿泊(&観光関連)産業経営」と題し、米国における最前線の観光研究や実務経験に基づいた話題提供と日本の観光産業への提言が行われました。

原氏は「観光振興は地域経済を発展させ、社会問題を改善する手段で、中央政府や地方政府が観光を推進する目的の本質は、地域住民の生活の質を維持向上させること」と明言。日本の課題として、宿泊・飲食サービス業の女性の平均年収が非常に低く、アメリカの女性正規職の平均年収と3倍以上の開きがあることを指摘しました。

また、2023年の米国経済が景気後退を回避できたのは、女性の平均収入が向上し、その収入の多くが地元密着型の「労働集約型産業」に還元され、地域経済を底上げしたからと述べました。日本でもこうした経済の動きを生み出すため「宿泊産業に多い非正規雇用の女性の年収を、今後5年で300万円まで引き上げる」という具体的な数値目標を設定すべきであり、それには宿泊単価の引き上げが必須と提言しました。

さらに、こうした施策はアメリカでは産業界が自ら取り組むのが通例であるとして、「日本の宿泊業界も政府に頼らず、業界をどうするかを自分たちで考え、こうした施策を自らの力ですぐに実施するべき」という考えを示しました。

後半の質疑応答では研究員から、企業の内部留保や「年収の壁」に関する日米の違いや、アメリカのスパ(温泉)マーケットの特徴など、さまざまな角度から質問が投げかけられました。原氏は個人消費の向上に関する質問に対し「日本には純資産1億5000万円以上、年収2200万円以上の富裕層が200万人以上いるが、この層に100万円使ってもらうより、2000万人以上いる非正規雇用の方に20万円プラスで使ってもらう方が倍以上の効果がある。特に女性の収入を底上げすると、消費が活性化し、地域経済から底上げする形で国のGDP成長率浮揚を広義の観光産業が主導できると改めて強調したい」と述べました。