No.143 スイス・オーストリアの観光地の状況とそのマネジメントについて視察してきました
2023年9月11日~17日にかけて、社内研修の一環で、欧州スイス・オーストリアへ視察に行ってきました。
スイスの国立公園等の保護地域制度、スイス国内を巡るトレイルや自転車観光の様子、コロナ禍を経た観光地マネジメントなど複数のテーマを設定し、訪問先の各地で現地調査・ヒアリング等を実施するとともに、世界を代表する高級山岳リゾートなど両国の観光地の様子を視察してきました。
テーマ1:保護地域制度
スイスにおける自然地域の公園について、チューリヒ近郊のチューリヒ・シルヴァルト自然公園(Wildnispark Zurich Sihlwald)、およびスイス東部のスイス国立公園(Parc Naziunal svizzer)とヴァル・ミュスタイア保護区(Biosfera Val Mustair)を訪問しました。これらの公園や保護区は、スイスでは共通する連邦法の中に位置づけられていますが、その立地や性質はそれぞれ異なり、目的や想定されるターゲットに応じた管理運営や情報発信がなされていました。
テーマ2:トレイル、自転車
スイスでは炭素を発生させない非動力系交通による観光ルートの整備に取り組んでおり、スイス全域わたって約10万基以上の統一的な標識とアプリケーションなどを通じてハイキングやサイクリング、クロスカントリースキーなどの情報を提供する「スイスモビリティ(SchweizMobil)」システムを運営しています。今回、ポントレジーナのマウンテンバイクルートや、自転車にやさしい都市の一つであるチューリヒとザンクトガレンのシェアサイクルシステムを体験しました。トレイルや標識の整備状況、公共交通機関との接続の様子など都市全体での自転車利用率を高めるための取り組み、自転車観光の現状と課題について視察しました。
テーマ3:DMO、観光地マネジメント
スイス・ザンクトガレン大学(Universität St. Gallen)のPietro Beritelli教授およびザンクトガレンのDMOであるザンクトガレン-ボーデン湖観光局(St.Gallen-Bodensee Tourismus)のThomas Kirchhofer氏を訪問し、スイスをはじめとした欧州における、DMOの財源としての宿泊税の使途決定の仕組みやDMOの活動評価の方法、昨今の観光地マネジメントの動向(住民とのコミュニケーション、コロナ前後の比較等)について意見交換を行いました。
また、オーストリア・レッヒのDMOであるレッヒ-ツュルス観光局(Lech-Zürs Tourismus GmbH)のHermann Fercher局長を訪問し、レッヒにおけるDMOの取組概要についても意見交換を行いました。
今回の視察では、いわゆる「アルプスの風景」とも言えるような美しい自然・農村景観や自然地域の公園・保護区の維持管理の仕組みや、市街地のまちなみも含めた景観をアクティビティとしてつなぐトレイル・自転車体験の提供、これらをデスティネーションとして魅力を打ち出し、マネジメントをするDMO等による観光推進の手法まで、一気通貫して経験し、有用な知見を得ることができました。これらで得た知見を今後の研究活動に活かしていきたいと思います。
▲スイス国立公園のビジターセンター視察の様子 |
▲スイス・サンモリッツの景勝地ポントレジーナにて レンタルE-bikeを体験した様子 |
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▲ザンクトガレン大学のPietro Beritelli教授と | ▲レッヒにおけるDMOのHermann Fercher局長と |