活動紹介

「2018年度第2回温泉まちづくり研究会」を開催しました(11月27日・28 日)

「2018年度第2回温泉まちづくり研究会」を開催しました(11月27日・28 日)

8つの温泉地と当財団が共同で研究活動を進めている「温泉まちづくり研究会」(2008年発足)。2018年度第2回研究会を11月27日(火)~28日(水)の2日間、会員温泉地の一つである有馬温泉で開催し、全会員温泉地の皆さんが参加しました。概要は以下のとおりです。

11月27日(火)
【第1部】研究会

会場:神戸市立有馬地域福祉センター 15:00〜17:30

1)開会挨拶  大西雅之氏(温泉まちづくり研究会 代表)
 金井啓修氏(温泉まちづくり研究会 副代表)

 

2)「有馬温泉のインバウンド誘客・受入環境整備について」
講師:有馬温泉観光協会 会長 金井啓修氏

 

3)会員温泉地の報告・意見交換(発言順)
 阿寒湖温泉: 山下晋一氏(阿寒観光協会まちづくり推進機構 専務理事)
  花巻温泉: 久保田浩基氏(花巻温泉郷観光推進協議会 会長)
  黒川温泉: 松﨑久美子氏(ふもと旅館 女将)
  草津温泉: 湯本晃久氏(草津温泉観光協会 理事)
 由布院温泉: 太田慎太郎氏(由布院温泉観光協会 常務理事) 
  鳥羽温泉: 世古素大氏(鳥羽市温泉振興会 副会長)
  道後温泉: 新山富左衛門氏(道後温泉旅館協同組合 理事長)

 

   議事進行: 山田雄一(温泉まちづくり研究会 事務局長)
       岩崎比奈子(温泉まちづくり研究会 事務局次長)
       守屋邦彦(温泉まちづくり研究会 事務局次長)

 

【交流会】「有馬夜バル」 18:15~
オープニングセレモニー会場:茶房 堂加亭

 

11月28日(水)
【第2部】研究会 会場:古泉閣 大宴会場 9:00~11:30

 

1)「宿泊施設におけるインバウンド受入の課題と対応策のポイント 外国人採用・育成の留意点」
講師:JTB総合研究所 コンサルティング事業部第4部 主任研究員 郭玲玲氏
  アクア・コンサルティング(社会保険労務士事務所) 代表 押野千恵美氏

 

2)ディスカッション「インバウンドへの対応と外国人従業員採用への期待と不安」

 

【第3部】若手研究会 (任意参加) 13:15~14:45
会場:観光案内所 2階会議室

 

1)各地の青年部(若手経営者)の活動状況を共有
2)有馬温泉での「eスポーツ」「温泉むすめ」プロジェクトの概要と今後の展開
3)ディスカッション

 

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今回の研究会のテーマは、インバウンド及び外国人従業員の雇用についてです。1日目の第1部は、大西雅之代表と開催地である有馬温泉の金井啓修副代表の開会の挨拶の後、有馬温泉観光協会会長の金井氏が、有馬温泉における最近のインバウンド誘客への取り組みについて紹介しました。

有馬温泉では7~8年前から、フランスの学生を招聘して海外戦略を構築しています。台湾の新竹県とアニメをフックにした交流を行ったり、兵庫県の依頼でタイの温泉地の活性化に協力して視察を受けるなど、インバウンド誘致について多角的なアプローチを行っています。

「例えば韓国のパワープロガーは『日本でこのカフェに行きたい』といった目的で訪日している」と金井氏は指摘し、海外のパワープロガーやインフルエンサーを招聘する場合は一般的な観光地を案内するのではなく、何に興味を持って読者に発信しているかをきちんとつかむことが重要と強調しました。

続いて、インバウンドに関する取り組みを中心に、各会員温泉地から報告が行われました。今年は西日本や北海道で台風や豪雨、地震などの自然災害が相次ぎ、「ふっこう割」の対象となった会員温泉地も多かったことから、災害後の観光復興のあり方についても、熱のこもった議論が行われました。

研究会後の交流会は、有馬温泉で初の試みとなる「有馬夜バル」に参加する形で行われました。「有馬夜バル」は、9枚綴りのバルチケットを片手に、温泉街にある11の飲食店を巡ってはしご酒を楽しむというイベントで、「有馬の夜を活性化するとともに、温泉街全体を会場に見立てた新しいMICEの提案」(金井氏)として開催されたものです。

オープニングセレモニーでは神戸市の岡口憲義副市長が挨拶を行うなど、このイベントに対する地元の意気込みが伝わってきました。開会の乾杯の後は、参加者が自由に温泉街を巡ってお店を何軒もはしごし、会員同士または地元の方々と談笑する姿があちこちで見られました。

2日目の第2部は、外部から講師2名を招き、今回の研究テーマについての講演が行われました。

最初に登壇した郭玲玲氏は、中国・瀋陽の出身で日本滞在歴は15年以上、現在はインバウンドに関する調査や人材育成を多く手がけています。

郭氏は流暢な日本語で、宿泊施設におけるインバウンド受入や外国人従業員育成の課題や注意点について述べ、「台湾や中国ではコンビニなどで会計前の商品を飲食しても構わないため、訪日時にトラブルになることがある」「『4/3』という表記は日本やアメリカでは『4月3日』の意味だが、中華圏やイギリスでは『3月4日』となるため、「/(スラッシュ)」を使った日時表記は混乱を招きやすい」など、さまざまな具体例が挙げられました。

2番目に登壇した押野千恵美氏は、外資系ホテルでの勤務を経て、現在は社会保険労務士として活動しており、外国人労働者の雇用に関するポイントが挙げられました。

押野氏は「日本人も外国人も雇用に関しては基本的には同じ」としながら、「外国人の中には社会保険料が高いと入りたがらなかったり、休憩をとらずに連続して働きたがる人もいるので、これらは義務であり、法で定められていると明言した方がいい」とアドバイスしました。

第3部は、久しぶりの開催となる“若手メンバーを中心とした”研究会として開催し、有馬温泉、草津温泉、由布院温泉の3温泉が参加しました。まず、有馬温泉で若手が中心となって取り組んでいる「eスポーツ(エレクトリック・スポーツ)」と「温泉むすめ」について、その概要と取り組みの様子が紹介されました。

前者はコンピュータゲーム上で行われる対戦競技であり、後者は日本全国の温泉地をキャラクター化してアニメーション、漫画、ゲームなどに展開しているメディアミックスです。有馬温泉では、これらは温泉地で働く従業員にとっての新たな福利厚生の一つとなったり、アニメ好きの新たなマーケットの掘り起こしにもつながるものと捉えていますが、研究会の場では、こうしたコンテンツをフックとした会員温泉地同士の連携の話も出るなど、リラックスした雰囲気の中で、今後の横展開の可能性を感じさせる議論が行われました。