No.182 第7回研究懇話会を実施しました(7月30日)
(公財)日本交通公社では2025年度から、当財団の研究顧問を務める有識者を講師としてさまざまな角度から話題提供をいただき、その話題を元に研究員と対話を行う研究懇話会を実施しています。昨年度は全6回を開催し、7月30日に今年度の初回にあたる第7回の研究懇話会が開催されました。会には研究員のほか、研究顧問の有識者も参加されました。
今回、講師としてお招きしたのは北海道大学大学院で農学研究院教授を務める愛甲哲也氏です。愛甲氏は、造園学を専門とし、国立公園や都市公園の計画・管理、特に大雪山や知床などの山岳地における収容力や登山道管理を研究しています。
研究懇話会の前半は「最近の国立公園管理に関する話題(多様な自然体験、知床のエコツーリズム、クマ対策、登山道管理など)」と題し、生物多様性保全の国際目標「30 by 30」に寄与する身近な緑地との触れ合い、都市近郊や山岳地におけるヒグマ対策、大雪山と日高山脈における登山道のグレーディング、15年ぶりとなる知床エコツーリズム戦略の改定作業まで、多岐にわたる話題提供が行われました。
後半の質疑応答では研究員から、さまざまな角度から質問が投げかけられました。遠隔地から来ている登山者は、クマの出現情報を知っても行動を変容しにくいという話に関連して、研究員が「上高地でもクマ出現の情報が出たが、その直後も行動を変えない観光客が一定数いた」とコメント。愛甲氏は「登山者の行動変容プロセスについては研究途中だが、目的地の代替となる場所があるかどうか、本人の過去の成功体験によるリスク認識の欠如なども影響するのでは」と述べました。
別の研究員からは「山岳グレーディングについて、全国一律の基準を作るべきという意見もあるが、可能なのか」という質問がありました。愛甲氏は「それはどの地域でも議論となるポイントで、自分にとっても課題」と前置きし、大雪山のグレーディングは登山道の管理と関連が深く、山奥と初心者向けの登山道を同様に整備することは非現実的という考えが根底にあることを示しました。「山域ごとに登山道の成り立ちや山小屋の配置が異なるため、全国一律の基準設定は難しいが、各地域で方針を統一しつつ、グレーディングの考えを共有することは可能では」と述べました。


