機関誌「観光文化」

ジオパークジャパン (観光文化 196号)

ジオパークジャパン (観光文化 196号) 全文無料公開中

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特集 : ジオパークジャパン

 日本列島の土台は、海洋プレートの沈み込みによって海溝に集められた堆積物が盛り上がり、陸側に付け加わってできた付加体から成る。数億年の期間をかけ、付加体はアジア大陸の縁で年輪のように成長し、さらに一千五百万年前に大陸から分裂し、日本海が誕生、日本列島が形成された。約三百万年前から強い東西圧縮の力を受けるようになり、山脈と盆地が出来上がった。その活動は火山・地震活動として今も活発に続いている。日本列島の形成は、地球の営みそのものの歴史である。今号では、ジオパークジャパンのバックボーンと取り組みの現況をお伝えする。

発行年月
2009年07月発行
判型・ページ数
B5判・32ページ
価格
定価1,540円(本体1,400円 + 税)

※本書は当サイトでの販売は行っておりません。

[巻頭言] 日本列島全体がジオパークだ 日本ジオパーク委員会委員長 財団法人国際高等研究所所長  尾池 和夫

 世界ジオパークネットワーク(GGN)は、地質や地形など、地球の持つ資産を、市民が地球に親しみ、地球を科学的に知るために活用する仕組みです。この号ではそれを特集します。日本でも、GGNに参加する方針が決まり、すでに三カ所をユネスコに申請して、六月現在、審査結果を待っています。また、それとは別に独自に日本ジオパークネットワーク(JGN)を設立して、すでに七カ所が日本のジオパークとして認定され、活動を始めています。
 地質図を見ると、日本列島では、火山岩類、堆積岩類などが細かくモザイク状に並び、きれいな模様を作り出している様子が分かります。たくさんの構造線や活断層や活火山もあります。それに対して、ヨーロッパやアメリカなどの地質図を見ると同じ地質が広く分布していて、断層や活火山も少ないことが分かります。ヨーロッパなどの安定大陸と東アジアの変動帯の大きな違いがそこにあります。
 地質の違いは、例えば、ほぼ同じ長さの海底トンネルの工事に具体的に表れました。青函トンネルの長さはほぼ五十四キロ、英仏海峡トンネルの長さはほとんど同じ五十キロですが、前者は第三紀火山岩や堆積岩の複雑な構造が断層で断ち切られている地下を、二十四年の歳月をかけて掘られたのに比べて、後者は中生代チョークの割れ目のない地層に沿って、十一年で掘られたそうです。このように日本列島の、構造線や活断層帯で区切られ、活火山が活動して刻々と姿を変えるというような変動帯の特徴が、GGNの概念に新しいものを付け加えるであろうと私は期待しています。
 あえて言えば、日本列島の大地全体に、私はジオパークを名乗る資格があると思っています。その大地の仕組みを科学的に語る組織を整備することによって、その地域のジオパークが成立するという日本列島であると思っています。
 ジオという言葉は固体地球を意味する接頭語です。ジオパークという言葉でそれを日本語の中に定着させたいと思っています。たくさんの市民が参加するように、ジオツーリズムが盛んになってほしいと思います。ジオパークのさまざまの形での活用を通して、地球科学の成果に触れ、地球環境の、エネルギーの、あるいは地下資源の問題を考え、生命を生み出した大地の仕組みを考え、二一世紀の人類の課題を考えるというような機会を、市民の皆さんに、特に未来に向かう子供たちに、持ってほしいと私は願っています。

掲載内容

巻頭言

日本列島全体がジオパークだ P1 尾池 和夫

特集 ジオパークジャパン

特集1 驚異の日本列島
  ―地質と景観の成り立ち P2
平 朝彦
特集2 ジオパークとは何か…
  ―日本型ジオパークへの提言 P12
矢島 道子
特集3 糸魚川ジオパークの魅力…
  ―その地質学的特性と歴史・文化 P16
竹之内 耕
特集4 島原半島ジオパーク
  ―地球に親しみ、人間生活とのかかわりを考える P21
杉本 伸一
視点 観光地域プロデューサーの目から見た佐渡島への観光客誘致 P26 前田 雅裕

◆連載

連載I あの町この町 第34回 月山のある町
  ―山形県西川町 P30
池内 紀
連載II 風土燦々(7) 北の大地のワイン造り(後編)
  ―北海道浦臼町 P36
飯田辰彦
連載III ホスピタリティーの手触り 5
  プールの悦楽 P38
山口由美
新着図書紹介 P40