機関誌「観光文化」

観光のフロンティアに挑む (観光文化 205号)

観光のフロンティアに挑む (観光文化 205号) 全文無料公開中

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特集 観光のフロンティアに挑む

 低迷が続く日本経済の景気浮揚策の一つとして、観光振興による需要拡大に期待が高まっています。今号は、『観光のフロンティアに挑む』をテーマに、ロングトレイル、医療ツーリズム、アグリツーリズムなど、各分野で観光資源開発に取り組んでいる方々にご登場いただきました。フロンティアリーダーたちの活躍とインバウンド振興に向けたウェブサイト「ジャパンガイド」の取り組みを紹介します。

発行年月
2011年01月発行
判型・ページ数
B5判・32ページ
価格
定価1,540円(本体1,400円 + 税)

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〔巻頭言〕世界市場を前に怯むな 亜細亜大学経営学部教授  小林 天心

 学生に新聞を読めといったら、お金がありませんという。しかし彼らはペットボトルの水を買って飲んでいる。新聞の価値は水以下らしい。いつから東京では水を買って飲むようになったのか。同じ学生が「僕らが生まれてこの方、景気が良かったことがありません」といった。何かヘンではないか。アメリカの銀行家か何かが百年に一度の大不況だといったら、日本のマスコミまで不景気の大合唱である。九十九年間続けた荒稼ぎに比べれば、自業自得の大損もあるだろう。しかしこちらまで、そんな気分に付き合わされる義理はない。
 四十年近く前にはオイルショックがあった。二十年前には泡沫景気がはじけた。しかし日本の経済全体は格段に良くなってきているではないか。二〇一〇年(平成二十二年)八月にニューズウィーク誌が報じた「世界 成長力&幸福度ランキング」で日本は、フィンランド、ノルウェー、カナダなどに次いで第九位、デンマークや英仏独より上位にある。日本の海の生態系はその豊かさにおいて世界一とも報じられた。確かに政治家は多少情けないかもしれないが、別にへこむことはない。つい最近も『菊とポケモン』という、日本発の文化が世界を席巻する様子を本に著したアメリカの研究者がいる。ロシアにおいてさえ、日本のスシが大人気だ。世界に誇るべき最大のジャパンブランドとして、平和憲法を挙げる人も多かろう。
 観光という分野においても、こうした日本の力を発揮させるべき時代が来ている。南北三千キロという変化に富んだ地理的好条件。一九世紀末からのわずか半世紀を除き、対外的戦争経験がほとんどゼロという歴史も世界に例がない。それが生み出した文化もまた然りである。人口減、高齢化、過疎問題などが声高に叫ばれているが、世界中の諸問題は人口が多すぎるところから起きている。元気な中高年は多く、女性の力を生かすのもこれから、日本が生かすべきマンパワーは世界中にあふれている。二〇〇九年(平成二十一年)、世界のツーリズム動向を見ると中国・韓国・台湾から七千万人、北米から四千万人、ヨーロッパから二億五千万人が外国へ出かけた。そのうち日本へやってきたのは二%にも満たないのである。
 病は気からという。学生に水を買ってやり、新聞を読まなくさせ、おまけに青田買いでロクな勉強もさせない、悪いのは自分たちがビョーキと思い込んでしまっているオトナたちである。日本が半世紀やそこらで劣化するものか。へこたれている場合ではない。

(こばやし てんしん)

掲載内容

巻頭言

世界市場を前に怯むな P1 小林 天心

特集 観光のフロンティアに挑む

特集1 信越トレイル開設に懸けた夢―ロングトレイルがつなぐ人と地域 P2小山 邦武

特集2 国際観光医療学会の発足―日本版メディカルツーリズムの普及を目指す P6 中元 隆明
特集3 ふるさと会津の地域経営に取り組む―農と食は最大の観光資源 P10 本田 勝之助
特集4 日本を世界にプロデュース―多言語サイト「ジャパンガイド」の進化 P14 楠 めぐみ
視点 新青森駅開業―途中駅の観光戦略 P18 朝倉 はるみ

連載

連載Ⅰ あの町この町 第40回 我等が家は五大州 ―沖縄県金武町 P22 池内 紀
連載Ⅱ 風土燦々(14) 温泉と茅葺きの神通力(下) ―宮城県石巻市北上町 P28 飯田 辰彦
ホスピタリティーの手触り 62 日本人は、ハワイが好き P30 山口 由美
新着図書紹介 P32