旅行にもいろいろあるが、観光旅行が遊び、娯楽、レジャーのひとつと世間では広く考 えられている。昭和40年代以降の高度経済成長期には団体の慰安旅行が大手を振って観光旅行の主流をしめていたが、いまや会社ぐるみの慰安旅行は少数派になってきている。年齢とともに人の好みも変わることがあるように、旅行にも時代を背景としてそのかたちは移り変わり、今後も変化していくに違いない。そうした中で、観光旅行が世間で考えられていたような遊びだけではないという考え方が少しずつ広がり始めているように思われる。たとえばの話だが、上野公園に行くとして、動物園に行くとすれば「遊び」、国立博物館に行くとすれば「学び」に行くといった感覚はないだろうか。
海外旅行の商品を見ていると美術館は入っているが動物園が入っている例は少ないような気がする。ルーブル美術館はフランスの観光の目玉であるのはもちろんだが、旅行会社も参加する旅行者も遊びという意識よりは、少し違う学びという気持ちを持って出かけていくような気がする。国内旅行でも最近では本物に触れたり、体験学習を組み込んだ学びを含むメニューが注目されるようになってきている。
かつて「旅の中のR、S、T」ということを述べたことがあるが、私たちは旅行先での効用としてRefresh,Study,Tasteを無意識に思いながら旅先での行動をしているのではないかと考えている。Rは遊び心、Sは学び心、Tはあじわいの心とでも言ったらいいのではないか。
この3つの要素が組み合わさって、観光旅行のさまざまな見聞が広がっていくのであろう。
最近、東海地方では産業観光といって、生産の場を観光対象(あるいは観光資源)と考え、現場や資料館、博物館の見学に積極的に取り組んでいる。ものづくりの地域の持つ技を観光客に見てもらい、より深い理解をしてもらおうという試みである。私たちの身のまわりのモノやコトができあがってくるプロセスに触れることは、生活文化に関心を持つことにつながってゆく。まさにこれは学びの観光で、企業の理解がないと普及が難しいが、世界各地でもその地域の特産品の製造工程や工場を見学させながら販売促進を図っているところは決して少なくない。
「遊学一如」の旅・・遊と学がandでもorでもない一体となった観光旅行が今後、注目されることを願っている。
(うちだ くにあき)