平成の御世になってすでに十九年目。昭和は遠くなりにけりの感を深めていますが、今、各方面で改めて昭和というニアレトロの時代が問い直され注目されています。
今号では戦後を中心に、昭和とは如何なる時代であったのかを振り返るとともに、昭和をキーワードに地域振興に取り組む各地の活動などを紹介します。
【183号 PDF版】
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私は〈20世紀〉とはなんだったかをふりかえり、ようやくまとめたところだ。なぜふり かえりたいと思ったかといえば、〈20世紀〉をその最後の10年ぐらいしか知らない、とい う若い人たちが出てきたからだ。 〈昭和〉は、〈20世紀〉の中核となる時代であるが、それを知らない世代が育ちはじめ ている。〈昭和〉を知り、そこに生きてきた人たちは、それを次の世代に伝えなければな らない。いや、伝えたい、と私は思うようになった。 では〈昭和〉とはどのような時代であったろうか。〈昭和〉のはじまった1920年代は、 日本が世界の近代に本格的に参加し、〈モダン都市〉が成立した時代であった。私は最近、 東京の庭園をいくつかまわる機会があったが、昭和期の庭園では、近代化、西洋化の中で あらためて、日本庭園の魅力が再発見されていることを知った。
〈昭和〉というのは、西欧のモダニズムを日本と融合させる実験が行われた時代ではな かったろうか。日本の近代文化がつくられるようになったのである。世界と日本との関係 が問われていた。
しかし、その実験は、第二次世界大戦で中断してしまう。昭和の庭を調べていて、戦争 の直前まで、日本庭園をめぐる日米の文化交流があったことを知った。
戦争が終り、日本がやっと復興をした1950年代、〈昭和〉は、あらためて、中断してい た文化的実験を復活し、それをやっと開花させたのではないだろうか。それが〈昭和30年 代〉である。そこでは西欧モダンと日本文化の一つの融合がなしとげられていたのであり、 私たちが今、その時代を、一方でなつかしく、また一方で(若い世代には)新鮮に感じら れるのは、新しいものと古いものとが微妙なバランスをとっているからではないだろうか。
〈昭和〉の終りは、〈戦後〉の終りでもあった。さらに戦後だけでなく、戦前、戦中を 含む〈昭和〉の文化の一つの終りであり、新しい時代に入った。 そして新しい時代のために、〈昭和〉とはなんであったか、そこでつくられた、豊かで 魅力的な文化をふりかえり、次の世代に送っていかなければならない。
〈昭和〉という失われた時の記憶を、いきいきとした姿と流れのうちにとりもどしたい と私は願っている。
(うんの ひろし)