ビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)の成果もあり訪日外国人旅行市場が順調に拡大を続けているなかで、観光の質が問われる時代が到来している。今号では、“上質”をキーワードに、それを支える創造性(オリジナリティー)を探り、伝統と本物を追求する各地の新たな取り組みを紹介します。
【187号 PDF版】
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いにしえより「美し国日本」「香しき国日本」と、世界から自然と神秘あふれる宝の島国とたたえられたわが国である。
世界の流れをとどめて熟成させ、完成された美へと昇華させる、そんな国柄を持つ。ここには四季がある。山川草木は、彩りを変化させながら人々の心に潤いを与え、哲学を醸し出す。ゆえに世界から流れ着いたあらゆる宗教や美術は、完成されることをこの神秘の国に求めてやまない。そして独特の美的価値観が生まれる時、それはまた世界を駆け巡るのである。
『温故創新』(古きをたずねて新しきを生み出す)。それが伝統の日本スタイル。私はそれを『ネオジャパネスク』と呼ぶ。北斎や写楽もその時代の『ネオジャパネスク』だと思っている。それらは世界を魅了して価値観を変化させ、世界の様式美に大きな影響を及ぼしてきた。
哲学で言えば、西洋の“光と影”“善と悪”等の対立構造の考え方に比べて、わが国には、「すべてが光で、影もまた光である」という、すべてを光のもとに一元化する考え方がある。そういった二元論と一元論の違いは、日本の独特な気候風土からなる熟成文化から生まれたと考えられる。
上質の日本とは、その歴史観に裏打ちされた考え方と、たゆまぬ努力の結晶からなるあらゆる産物を意味する。
歴史を知り、創造力豊かであれば、時代を創ることができる。『ネオジャパネスク』を創造するのは、日本人一人ひとりの自覚と実践にかかっている。
世界人類の中でまれに見る、繊細さと美的感覚そして優しさを持つ民族である日本人がその本質に目覚める時、誠の『ネオジャパネスト』の誕生だ。
あなたの自覚と創造で、次代の鍵を日本から細やかに表現し続けることが、グレードある神秘の国の役割であると言えよう。
『温故創新』は日本のスローガンでもあり、昔も今も歴史は新陳代謝を繰り返しているのだ。
(おもて ひろあき)