国の重点施策として、観光振興、とりわけアジアからの訪日外国人旅行に期待が寄せられています。今号では、『九州観光交流新時代』をテーマに、九州における観光交流の現況やインバウンド振興へのさまざまな取り組み、今後の課題・方策などについて紹介します。
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【203号 PDF版】
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今年五月に九州観光推進機構会長に就任した。当機構は二〇〇五年に九州観光推進のため九州七県と経済界が一体となって作った組織であり、地域単位で共通の課題に取り組むという点で、道州制の先駆けとも言える組織である。
九州の観光戦略には三つの鍵がある。まず一つは地域を徹底的に磨くこと、次に国内から観光客を呼ぶこと、そして三つ目は海外からの誘客である。現在、九州にとっては地理的に近い韓国が最も大きなマーケットだが、実質世界第二位の経済大国となった中国も重要なマーケットであり、すでに日本国内、そして海外の観光地による中国人観光客の誘客競争が始まっている。
九州には現在、クルーズ船で多くの中国人観光客が訪れており、博多港だけで今年は六十六回の寄港が予定されている。しかしながら中国からの宿泊者数で比較すると、東京や北海道に大きく水をあけられてしまっている。
九州は、歴史、文化、自然、食など、東京や北海道に引けを取らない観光資源を有している。しかしこれらの地域と比較すると、観光地としてのイメージに欠けており、誘客に向け、九州として統一的なイメージを打ち出していかなければならない。
また、九州は古くは中国大陸や朝鮮半島など海外との玄関口の役割を果たしてきたが、アジア大交流時代を迎えようとしている現在、アジアからの観光客の受け入れ態勢について改めて見直す必要がある。
例えば、海外から来てもらうためには、玄関口として十分な容量・設備を有する空港や港湾が必要であるが、福岡空港はすでに容量限界に近づいているし、博多港に寄港するクルーズ船は貨物船の埠頭を使用している。中国語を話せる人材の育成や、外国語の地図や案内標識の充実も必要であろう。ほかにも、旅行の楽しみである食事や買い物を楽しんでもらうため、食事については写真が付いたメニューの整備、買い物については決済用のインフラ整備や両替への対応にも取り組んでいかなければならない。
さらに、これは九州だけの問題ではないのだが、国を挙げて海外からの誘客に取り組むのであれば、ビザ発給要件の緩和や入国審査体制の充実は重要な課題であろう。
そして、最も大切なことは観光客に対するホスピタリティーである。観光客を大事にするという気持ちを官民で共有していく─、まずはここから取り組んでいきたい。
(いしはら すすむ)