機関誌「観光文化」

夜景観光のポテンシャル―光のまちづくりへ (観光文化 204号)

夜景観光のポテンシャル―光のまちづくりへ (観光文化 204号) 全文無料公開中

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特集  夜景観光のポテンシャル
    ―光のまちづくりへ

 地域のにぎわい創出に向けて全国各地でさまざまな取り組みが行われていますが、「夜景観光」にも大きな注目が集まっています。夜景に対する価値観が高まっている社会的背景を探るとともに、〝光のまちづくり〟を目指して、各地で広げられている活動を紹介します。

発行年月
2010年11月発行
判型・ページ数
B5判・32ページ
価格
定価1,540円(本体1,400円 + 税)

※本書は当サイトでの販売は行っておりません。

〔巻頭言〕快適で個性的な夜景づくり (株)ライティングプランナーズアソシエーツ代表 武蔵野美術大学教授 照明デザイナー  面出 薫

 今、世界中に散在する都市から「夜を美しくしたい」という声が聞こえてくる。わが街が夜に魅力的な表情を呈することにさまざまな利益があるだろうからだ。
 太陽が沈んだ後の街の景観は、百パーセント人工照明によって作られている。道路や公園などの公共照明もあるが、オフィスや商業ビル、そして住宅から漏れる光なども、わが街の夜間景観を作る上での大切な要素だ。私はとりわけ建築照明や都市環境照明を仕事とする照明デザイナーとして、夜間を昼間のように煌々と明るくしてきた二〇世紀を反省し、これからのエコロジカルな時代に、さらに洗練された夜景づくりを期待している。二一世紀らしい快適で圧倒的に個性的な都市照明を目指してもらいたいものである。
 都市照明とは灯火の時代から始まるが、最初は安全を確保するための技術であった。防犯と交通の安全が期待された。安全への配慮ができてくると次に美しい夜の景観づくりが始まった。土木構造物や建築構造物がライトアップされ、夜間の街のランドマークにもなっていった。そして今後の課題となることは、橋梁や建築をライトアップすることだけではなく、住まう人にとって快適な光に満たされるということだ。
 快適な光とは嫌な光や光害とされる無駄な光を排除することにある。無駄な光とは不必要に天空に向けられた光だ。そして嫌な光や不快な光の筆頭は、グレアと呼ばれるまぶしい光である。屋外では道路灯や公園灯など、むき出しの放電ランプがギラギラしたまぶしさを発している。これは百害あって一利なしの悪光だ。これらの悪光を丁寧に排除していくだけで、街の中の光は格段に快適になってくる。光と人間との好ましい関係を私たちはきちんと学習すべきである。
 私たちの会社は、これまで東京都の臨海副都心部の照明マスタープランや、大阪の都市照明、そしてシンガポール政府からの依頼の「Lighting Masterplan for Singapore City Center」というプロジェクトを担当してきた。これらのプロジェクトを通じて、大切なことは、光の品質を向上させ人々に快適な光を提供することと、その都市にまつわる個性を照明に色濃く反映させることだと実感する。
 今年から私は、「和やかな景色」というコンセプトを掲げて、東京駅復元駅舎のライトアップを担当しているが、これも環境に優しくサステイナブルな光を都民に提供するためのものである。三階まで復元された赤レンガの建築ファサードが、優しい光で無駄なく丁寧に照らし出される姿に期待していただきたい。優しく和やかな夜間の景観が最先端のLED技術によって二〇一二年春に出現することになる。

(めんで かおる)

掲載内容

巻頭言

快適で個性的な夜景づくり P1 面出 薫

特集 夜景観光のポテンシャル―光のまちづくりへ

特集1 広がる夜景観光、そして未来へ―「日本夜景遺産」誕生から「夜景サミット」まで P2 丸々 もとお
特集2 観光川崎の明日に期待して P6 斎藤 文夫
特集3 大阪を「光と水」でブランディング―水都大阪まちづくりの挑戦 P10 室井 明
特集4 街路の光環境によって街はどう変わるか? P14 角舘 政英
視点 スクリーンツーリズムのビフォー・アフター―誘客効果の継続に向けて P18 朝倉 はるみ

連載

連載Ⅰ あの町この町 第40回 金魚島周遊 ―山口県周防大島町 P22 池内 紀
連載Ⅱ 風土燦々(13) 温泉と茅葺きの神通力(中) ―宮城県石巻市北上町 P28 飯田 辰彦
連載Ⅲ ホスピタリティーの手触り 61
平和を希求したホテルマン P30
山口 由美
新着図書紹介 P32