九州新幹線全線開業で「九州はひとつ」 (観光文化 212号)

2012.03.19

観光文化212

特集  九州新幹線全線開業で「九州はひとつ」
―開業後一年、九州ツーリズムの変化と期待される地域活性化への取り組みとは?

二〇一一年三月十二日、東日本大震災の翌日に全線開業した九州新幹線。関西および中国地方、北部九州と鹿児島間が直通運転でつながり、九州全体への経済的な波及効果が期待されています。今号は、九州新幹線全線開業による、九州各地のツーリズムを通じた地域活性化への取り組み状況と今後の可能性を展望します。

発行年月
2012年3月
判型・ページ数
B5判・28ページ
価格
本体価格 1,400円 + 税


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【212号 PDF版】
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〔巻頭言〕九州新幹線全線開業 そこからつながる観光のネットワーク 九州旅客鉄道株式会社 代表取締役社長  唐池 恒二

 二〇一一年三月十二日、九州新幹線は静かに全線開業を迎えた。
それから遡ること二年前の二〇〇九年、新しい観光列車「SL人吉」「海幸山幸」を誕生させた。両列車の運行開始日には、沿線の全ての駅で集まってきた地域住民の方々が、列車へ向かって手や小旗を振り、やってきたお客さまを出迎えていただいた。この歓迎ぶりに、新しい列車を「自分たちの列車」として迎え入れる準備を進めてくださった地域の方々の強い想いを感じ、九州新幹線全線開業へ向けた新たな一歩を踏み出したと感慨を新たにした。
 JR九州では九州新幹線の全線開業に備え、多彩な観光列車をつくってきた。それは、新幹線の開業効果を、沿線のみでなく九州全体に広げたいという目標があってのことである。「新幹線からその先へ」の旅の魅力付けのひとつとなるのがこの観光列車である。
観光列車の運行は単に「そこに列車が走る」ということのみに終わらない大きな意味をもつ。
 先に述べた両列車を例に取ると、列車の運行が決定してから運行開始を迎えるまで担当者が地元に入り、魅力的な地元の素材を地元の方とともに探しだしてきた。車内販売は地元ならではのものにこだわり、一時停車する駅では特産品の販売もお願いした。また、「SL人吉」では沿線の国宝「青井阿蘇神社」のお祭りの際に食べられたというお弁当を再現した駅弁「おごっつぉ弁当」を誕生させ、逆に「海幸山幸」については、新鮮な海の幸を楽しめる日南ならではの魅力を生かすため敢えて駅弁は作らず、沿線の施設をご紹介した。沿線地域では地元の方が自発的に列車に手を振る運動も始めていただき、地元による「おもてなし」の土壌も醸成された。ひとつの列車が走ることで、JR九州と地元とが一体となってお客さまをお迎えする態勢を整え、新しい観光素材、新しいおもてなしが誕生する。観光列車そのものが観光素材となり地元の新しい魅力を再発見することができるのである。
 さらに「おもてなし」は広がる。駅から降りたお客さまが、より便利に観光を楽しめるよう地元の生活路線である「路線バス」を観光列車との連動した時刻で観光地を巡るルートに調整し、一日フリーで乗車できる商品として開発されたのが、指宿、霧島、阿蘇地区の路線バス一日乗車券である。これは当社担当者と地元関係者の協議により実現した新しい観光の足と言える。
 新幹線開業後も「指宿のたまて箱」「あそぼーい!」「A列車で行こう」などが加わり、新幹線+観光列車の旅はJR九州の看板となっている。新しい魅力を地元とともに発信していく、その姿勢にこだわり、観光のネットワークを広げていきたい。列車に乗るお客さまと地元の皆さまの笑顔に触れるたび強く思うことである。

(からいけ こうじ)

  • 観光文化 212号
  • 巻頭言
    九州新幹線全線開業 ―― そこからつながる観光のネットワーク 唐池 恒二 P1
  • 特集  九州新幹線全線開業で「九州はひとつ」 ―開業後一年、九州ツーリズムの変化と期待される地域活性化への取り組みとは?
  • 特集1 九州新幹線は「九州はひとつ」に向けて大きな弾みに ―全線開業、地域連携して九州観光促進の展開を図る 段下 倫 P2
  • 特集2 九州新幹線全線開業による新たな時代の「観光かごしま」の展開 鹿児島県観光交流局観光課 P7
  • 特集3 肥薩おれんじ鉄道 過去・現在・未来 ―地域への鉄道の役割を果たすために 古木 圭介 P12
  • 研究ノート 三陸の観光復興―岩手県田野畑村の取り組み(4) 大隅 一志 P18
  • 連載
    連載Ⅰ あの町この町 第48回  天平の夢 ―宮城県涌谷町 池内 紀 P20
  • 連載Ⅱ ホスピタリティーの手触り 69  トイレのおもてなし 山口 由美 P26
  • 新着図書紹介 P28

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