今年五月二十二日に開業する、東京の新たなランドマークとして注目される東京スカイツリー。今号は、「景観形成と観光資源としての考察」と題して、デザイン、都市形成、水路のまちとの関係、下町文化との融合による観光振興などの視点から、新たなシンボルとしての価値を探ります。
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【213号 PDF版】
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東京スカイツリー®がいよいよ開業します。隅田川の水辺に立つ東京スカイツリーは、年間二千万人もの観光客を集めることが見込まれており、新たな東京の観光資源となるでしょう。
かつて、世界最大の百万人都市であった江戸は、社会学者のスーザン・ハンレーが「一八、九世紀に生きるなら、このまちに庶民として住みたい」と述べているように、大名屋敷や寺院の豊かな緑が広がるなか、瓦葺きの屋根と白壁によるモノトーンの街並みがつづく、美しい都市でした。隅田川を中心に、多くの川や運河が縦横に張り巡らされた「水の都」でもありました。
しかし、日本が戦後半世紀で成長する過程で、東京のまちは、効率を優先するあまり、美しく優雅な江戸のまちからはかけ離れた姿に変貌してしまったのです。
東京都では、美しい江戸のまちを、水と緑の回廊で包まれた美しいまち東京として復活させるとともに、その多彩な魅力を発信し、国内外から多くの観光客を呼び込もうとしております。東京スカイツリーの開業を起爆剤として、こうした取り組みをより一層強化していきます。
具体的には、「水の都」江戸の象徴である隅田川の賑わいを取り戻す「隅田川ルネサンス」を展開していきます。東京スカイツリーを望む水辺でのさまざまなイベントの開催やオープンカフェの設置、川風や緑の薫りを感じられるテラスやベンチの整備などを進めていきます。
また、東京スカイツリー周辺の観光案内板の設置や交通アクセスの整備、舟運を生かした観光ルートの開発などを進め、地域の賑わいを創出していきます。海外における観光プロモーションをはじめとするさまざまな機会を通じて、東京スカイツリーを新たな観光資源として紹介していきます。
折しも東京は、東日本大震災からの復興と再生をスポーツの力で成し遂げるため、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック招致に名乗りを上げました。日本が立ち直った姿を世界に披歴し、支援に対する感謝の気持ちを示すとともに、世界中から集まる多くの人たちに東京の魅力に触れてもらう絶好の機会となります。
東京スカイツリーの開業を、東京の魅力をさらに向上させ、活力と風格ある世界都市・東京を実現する契機とするとともに、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック招致に向けた一歩ともしてまいります。
(いしはら しんたろう)