④ 海外観光旅行に対する実践者の意識

市場復活に向けての鍵を「実践者」の意識と行動の現状から探る

公益財団法人日本交通公社
理事・観光研究部長・旅の図書館長
山田雄一

 2020年春から顕在化したCOVID‐19によるコロナ禍への対策として、日本政府は人々の移動、特に国際的な移動を大きく制限するようになり、事実上、海外観光旅行は「実施したくても実施できない」活動となった。
 それから2年。2022年春から、日本人の海外旅行(日本への再入国)の制限は、徐々に緩和されていったが、統計上、出国者数(アウトバウンド)の戻りは鈍く、2023年1月に至っても44万人にとどまった。コロナ禍前の2019/2020年の1月は140万人に達していたことを考えれば、制限緩和から9ヶ月あまり経っても、海外旅行は、コロナ禍前の30%くらいまでしか回復していない計算となる。
 これに対し、訪日客数(インバウンド)の回復は著しい。訪日客は、日本人の帰国に遅延して2022年10月より制限緩和となったが、その4ヶ月後の2023年1月には150万人に達した。これは、2019/2020年1月水準の270万人に対して56%水準となる。アウトバウンドの回復率とは、ダブルスコアに近い状態だ。
 実際、特集3で実施した航空会社のヒアリングにおいて、アウトバウンド需要が戻らないために、座席の多くがインバウンド需要(またはトランジット需要)に占められているということが指摘されている。
 なぜ、日本からのアウトバウンド、すなわち海外旅行は戻らないのか。
 この理由をアンケート調査の結果から読み解こうというのが、本特集の目的である。

調査分析の切り口

 調査分析に入る前に、今回の分析を貫く「仮説」について整理しておきたい。
 特集1でも示したように、日本人の海外旅行は、60年程度の歴史を持つ。
ただ、その市場は、右肩上がりに大きく伸長するというものではなく、2019年に2000万人に達したとはいえ、2000年以降は、1700万人レベルを上下する一種の飽和状態にあった。これは、市場の構成者が新規参入者ではなく、リピーター主体となっていることを示している。実際、パスポートの発行数は横ばいから減少傾向にあり、取得率も低下傾向にある。
つまり、海外旅行は、構成員が限定された市場構造にあったということだ。
 なぜ、そうなっていたのか。
 観光という活動は経験財の一種であり、自身で経験をすることで、その面白さ、楽しさが理解できるという側面を持つ。やったことのない活動は、それが自身にとってどういう価値を持つものなのかがわからないため、適切な評価ができないということだ。日本の海外旅行の歴史をたどれば、高度経済成長期やバブル期など、経済が強いタイミングで市場規模が増大している。これは、自身の所得が上がり、社会的な機運も高まるという当時の雰囲気が、「海外旅行」というやったことのない活動にチャレンジしやすくしていたのだと考えられる。既に、我が国の海外観光旅行市場が持っている約60年と
いう歴史は、親から子、孫へと2世代を超える時間軸となっている。これは、海外観光旅行の経験者である「親」によって、子どもの頃から海外旅行経験を積んできた市場が存在することを意味している。
 一方で、そうした機会に恵まれずに大人になった人々が、いきなり海外旅行を行うハードルは高い。しかも、今回、コロナ禍という未曽有の断絶があったことを考えれば、このタイミングで新規顧客が大挙して押し寄せるとは考えがたい。既に海外旅行の楽しさを知り、楽しんでいた人々が戻ってくることが市場回復の必須要件だといえるだろう。そして、コロナ禍が収束しても海外旅行市場が戻ってこないのは、その「一部の人々」が、市場に戻ってきていないからだと整理することができる。
 そこで、本特集では、従前の海外旅行市場を支えていた人々に対する意識調査を基に考察を行う。具体的には、2010〜2019年の間に3回以上、観光目的での海外旅行を行った人々を調査対象とした。
 調査の概要:2023年3月実施。
2010〜2019年の間に3回以上、観光目的での海外旅行を行った人々。20〜60歳未満(年齢は均等割り付け)。サンプル数529。

海外観光旅行が経験財であることの検証

 まずは、今回の調査分析の基本となる「海外観光旅行は経験財である」ということについて検証しておきたい。
すなわち、過去の経験、特に「子どもの時から海外旅行を経験している」ということが海外観光旅行へ意欲に大きく影響するのではないかということだ。
 そこで、子ども時代の旅行経験と、海外観光旅行の実施意向(海外観光旅行に行きたいと思っており、なおかつ具体的に予定・検討している層)との関係について分析したところ、明確な相関が確認できた。
 これは、まさしく海外観光旅行が経験財であり、過去の市場が、現在および将来の市場を形成していくということを示している。

コロナ禍でも高い旅行実施

 次に、調査対象の人々のコロナ渦中での旅行活動について整理をしておきたい。海外旅行は、国内旅行よりも距離が長く、一般論として時間も費用も多くかかる。今回の調査対象の人々は、そうした実践ハードルの高い活動を多く実施していた人々であるが、コロナ禍の中、彼らは、自身の旅行に対する欲求をどのように満たしていたのだろうか。
 彼らに、コロナ禍中の国内観光旅行頻度について尋ねてみたところ、39%が「年に3回以上」、37%が「年に1〜2回」の国内旅行を実施しており、国内観光旅行を行っていなかった人々は16%にとどまった。
 この間、国内市場は、Go Toトラベルや旅行支援など需要喚起策が展開されていたが、2019年対比で、2021年9月頃までは金額ベースで半額以下、その後も、⅔程度まで落ち込んでいたにもかかわらずである。

 もともと、国内観光旅行を年に3回以上実施する人々は、日本人の3割にとどまり、彼らだけで国内観光旅行市場の8割を占める。いかに、今回の調査対象が「旅行」の中核を占める存在なのかがわかる。

コロナ禍での旅行実施頻度が高い人ほど海外観光旅行への意欲も高い

 この結果は、海外旅行市場を支えてきた多くの人々は、コロナ禍の中でも旅行意欲を減退させなかったことを示している。
 さらに、コロナ禍での旅行実施頻度と、今後1〜2年での海外観光旅行への意欲の関係について見てみると、コロナ禍でより多く国内観光旅行を行っていた人ほど、海外観光旅行への意欲が高く、行動も進んでいることがわかった。特に、コロナ禍においても、年に3回以上の国内観光旅行に出かけていた人々においては、半数以上が「行きたいと思っており、具体的に予定・検討している」と回答しており、その意欲・行動が群を抜いている。
 一方で、コロナ禍において旅行をしなかった人々や、しても2年に1回程度にとどまった人々は、海外旅行に対する意欲も低く、具体的な計画がある人々は10%程度にとどまっている。コロナ禍前に恒常的に多くの海外観光旅行をしていた人であっても、コロナ禍中に旅行を控えた人々は、海外旅行に対する意欲も減退してしまったことがわかる。
 では、コロナ禍での国内観光旅行の実施頻度はどういった要素が影響していたのだろうか。ここでは、コロナ禍特有の問題として年齢と、旅行活動全般に対する影響要素として収入の2つの側面から検証を行ってみる。
 まず、年齢との関係で見ると、20〜49歳は、年に3回以上の比率は変わらないが、50代になると大きく低下していることがわかる。また、観光旅行をしなかった比率は、加齢と共に高くなっている。

 このことから、年齢が強く旅行実施頻度に影響を及ぼしていたことが確認できる。
 これを踏まえ、年齢別に海外観光旅行の実施意向を見てみると、「行きたいと思っている」比率は、どの年代でも大きく変わらないが、年齢が上がるにつれて「まだ具体的に検討はしていない」が増加する傾向にある。これは従前の海外観光旅行の経験から、海外観光旅行への関心は年齢にかかわらず高いものの、年長者ほど、コロナ禍によって旅行から離れたことの影響が出ていると考えることができる。

年収との関係

 もう1つ、世帯年収との関係を見てみると、コロナ禍において、年3回以上の観光旅行をしていたのは、世帯年収500万円未満では33%、500〜1500万円未満は40%となったのに対し、1500万円以上世帯では61%と群を抜いた実施率となった。
 一般に世帯年収が500万円を割り込むと、国内であっても旅行実施率が大きく減少するとされており、それが、この調査対象者においても確認されたことになる。
 これを踏まえ、世帯年収と海外観光旅行の実施意向の関係について見てみると、世帯年収1500万円未満と以上で大きく意向が異なることがわかった。
 この分析でまず注目したいのは、500万円未満を含め世帯年収1500万円まで、ほとんど傾向が変わらないということだ。前述したように、世帯年収500万円は国内旅行の実施率を左右する水準であり、実際、コロナ禍での国内旅行でも、その傾向が確認されたが海外観光旅行についていえば、年収が2〜3倍の世帯と同水準で海外観光旅行の再開意欲を持っている。これは、経済的な負担以上に、海外観光旅行の楽しさを知っており、家計のやりくりをしてでも旅行したいということだろう。コロナ禍前に、海外観光旅行の経験値を積み上げてきた人々だからこその思いだといえる。
 さらに、世帯年収1500万円以上では、コロナ禍での国内旅行だけでなく、今後の海外観光旅行に対する実施意欲も群を抜いた水準にある。この年収レベルになると、財力によって「自由」に自身の嗜好を展開でき、コロナ禍という特殊要素も薄めることができるのだろう。緊急事態宣言中を除けば、コロナ禍においても費用さえ出せば、個室での食事や、露天風呂付き客室などを利用することで、従前と変わらない旅行が実現できたわけで、おそらく、そうした旅行を行ってきたのだと考えられる。

市場復活を阻む理由

 以上の分析からわかることは、コロナ禍前には海外観光旅行を楽しんでいたにもかかわらず、現在では、特に行きたいとは思っていない人々が一定数(本調査では3割)いるということだ。年齢による差は小さく、旅行意欲が群を抜いている世帯年収1500万円以上でも約2割存在している。サンプリングの特性上、この比率が必ずしも市中のそれと合致するわけではないが、海外旅行市場の戻りが鈍いのは、こうした再開意欲を持っていない人が一定数存在していることが原因だろう。
 そこで、再開意欲を示していない人々に、その理由について尋ねてみた。
 興味深いのは、コロナ禍での国内旅行の実施頻度によって、海外観光旅行を検討しない理由が違うことである。
 コロナ禍中に国内旅行を実施していた層(年に1回以上)においては「国内旅行が楽しいから」がトップとなり、「特に行きたい国・地域が特にない」「海外旅行への興味が薄れたから」「他の趣味が楽しくなったから」が、年に1回未満の層に比して高くなっ
ている。
 一方、年に1回未満の層では「旅行先の物価が高いから」がトップで、「新型コロナウイルス感染症による旅行のキャンセルリスク」が相対的に高い。
 この結果により、コロナ禍においても旅行を多く実施していた層の「一部」は、その経験を通じて、海外旅行「ありき」から、国内旅行を主軸においたライフスタイルへと転化させてきたことがうかがえる。他方、さほど国内旅行を行わなかった層においては、費用負担を理由に、海外観光旅行も余暇活動の選択肢から外してきていると分析できる。ただ、前述したように、世帯年収500万円未満でも、より年収が多い世帯と変わらない意欲を示している人々はいる。また、2020年秋以降は、国内旅行は実施可能であり、かつ、多くの割引制度も展開されており、経済的ハードルは低くなっていた。その中でも、国内旅行を実施せず、海外観光旅行にも関心を示さないというのは、経済的要因以前の問題として、旅行そのものに対する情熱が減退したと考えるほうが適切だろう。
 実際、海外観光旅行に行きたいと思っている層に、インフレや円安などに伴う旅行費用上昇について尋ねたところ、「特に影響はない」は検討/未検討層問わず10%程度に留まった。検討中の人だけでなく、未検討の人も含め、費用は再開意欲を妨げるハードルとはなっていないということだ。

 ただ、これは価格上昇を許容するということではなく、価格上昇への対抗策をいろいろと講じるということであり、設問の中で最も高率となった対策は「安い時期に行く」であった。
 旅行意欲を検討層と未検討層で比較してみると、全体的に検討層が大きく未検討層を上回っていることがわかる。検討層の方が、より具体的に旅行を検討しているため、対策も具体的で多彩となっていると考えることができるが、いずれにしても「海
外旅行に行きたい!」という欲求があれば、旅行費用上昇への対応は様々に取り得るということを示している。
 もう1つ、海外観光旅行再開を阻む理由として考えられるのが、ライフイベントの発生である。今回のコロナ禍は2年余り続くものであったため、その間に就職や進学、結婚、出産といったライフイベントが発生した人々も少なくない。こうしたライフイベントは、それまでの生活を大きく変えるものであり、その結果、海外観光旅行から遠ざかってしまったということも考えられる。
 そこで、コロナ禍中にライフイベントが発生した人としなかった人で、海外観光旅行の実施意向(具体的に検討・予定している)の比率について見てみると、ライフイベントが発生した人のほうが、実施意向が高まることがわかった。最も比率が高かったライフイベントは進学した、子どもが結婚した、親元から独立したといったことであり、これらのライフイベントが発生した人は、しなかった人よりも3倍の確率で海外観光旅行を「具体的に検討予定する」ようになっている。
 さらに、注目したいのは、「ローンを背負うことになった」「ペットの世話に手がかかるようになった」といった一見、旅行実施を阻害するようなライフイベントであっても、海外観光旅行の実施意欲が高まる傾向にあるということだ。
 また、「テレワークが中心になった」「退職や転職、転籍などで収入が減少した」「妊娠や出産を経験した」「子どもが就学/進学した」「子どもが受験期を迎えた」「配偶者・パートナーが体調を崩した/病気になった」「親族が要介護状態となった」については、統計上、有意な差は確認できなかった。
 一方で、今回の調査では有意に意欲を低下させるライフイベントは確認できなかった。
 これは、全体として生活に変化(ライフイベント発生)があった人のほうが旅行意欲は高まる傾向にあることを示している。
 これらの分析結果から言えるのは、海外旅行が再開されない理由は、経済的な要因でも、何かしらのライフイベントでもなく、情熱の喪失であるということである。これは、コロナ禍が終息しても、また、航空料金や宿泊費を含むインフレ、円安が解消されたとしても、自動的に海外観光旅行が復元されない可能性を示している。

海外観光旅行市場の復活に向けて

 ここで、改めて市場構造を整理しておこう。
 まず、海外観光旅行の市場は、新規市場ではなく、コロナ禍前から旅行を楽しんでいた人々によって構成されている。これらの人々は、コロナ禍を経て「もう具体的に予定・検討している人々(検討層)」「行きたいが、まだ具体的な検討はしていない(未検討層)」、そして「わからない。考えていない(離脱層)」の3つに区分できる。
 この離脱層は、コロナ渦中での旅行経験も低めで、海外観光旅行への興味関心も薄くなっている。海外観光旅行の経験値はあるので、潜在的な市場ではあるが、早期の復活は検討しにくい。有効な対策は、検討中の人々の海外観光旅行を確実に再開させ、行きたいと思っているが未検討の人々が具体的に検討し始めるように誘導していくことだろう。
 そこで、「海外観光旅行を再開させたいと思っている人々」の再開理由について尋ねてみたところ、検討層(具体的に予定・検討している層)でのトップは「海外旅行が好きだから」。
未検討層では「行きたい国・地域があるから」となった。以下、「海外で体験したいことがあるから」「リラックスや癒やしを得たいから」が続く。

 これらの結果は、検討/未検討にかかわらず、海外旅行だからこそ得られる経験が旅行実施のフックとなっていることを示している。理屈ではなく「海外旅行が好きだから」と言える人々が、同市場の核となって支えているのだということを、改めて認識しておきたい。
未検討層に比して検討層において大きな理由となったのは、外出自粛などにより溜まったストレス発散、新型コロナに打ち勝った自分や家族へのお祝い、外出自粛などにより予算が増えそうだからの3項目である。
これらは、いわゆる「リベンジ消費」と重なる動機であるが、リベンジの対象が国内旅行や自動車購入などではなく、海外旅行に向かった人々が「検討層」だということだろう。
 言い方を変えると、未検討の人々はリベンジ消費の意欲が相対的に低い。では、未検討の人々を検討層へと変えていくにはどうしたらよいのか。
 そのヒントとなると思うのが、旅行先をどのような理由で選んでいるかということである。旅行先の選択の理由を尋ねてみると「行きたい観光地や観光施設があるから」が、検討/未検討にかかわらずトップとなった。
さらに、検討層では「新型コロナウイルス流行前に行きたいと思っていた」が準じており、「イベントや現地で具体的な予定があるから」や「泊まりたい宿泊施設があるから」も、未検討層に対して高率となっている。これは、検討層は未検討層に比して、具体的に訪れる施設やイベントについて詳細な情報と、強い来訪意識を持っていることを示している。
 これは、未検討層は、漠然と「海外行きたいなぁ」と思う水準に留まっており、検討層のように、いつ、どこで、何をといった旅行プランをイメージするところまで至っていないことを示している。

中長期的な市場形成に繋がる「今」

 これまで、海外観光旅行市場の立ち上がりが鈍い理由として、旅行費用の高騰が指摘されることが多かった。しかしながら、検討層/未検討層の人々は、価格高騰の中でも、何かしらの対策を取っていこうという意欲を持っていることが明らかとなった。需要供給曲線を持ち出すまでもなく、価格は、需要発生量に強く影響する要素であることは間違いない。が、海外観光旅行は、もともと費用も時間もかかる活動であり、価格だけで選好されるのであれば、そもそも成立し得ない。
 それが、コロナ禍前に大きく伸長しない代わりに右肩下がりでもないという安定的な市場となっていたのは、半世紀以上にわたり親が子や孫を伴い海外観光旅行をしてきたことで、若い世代の心の中にも、その楽しさが経験財として蓄積されてきたからだろう。図5において、海外旅行市場が急拡大した1980年代から90年代初めに「大人」だった世代を親に持つ20〜39歳が、特に具体的な実施意向を示していることは、その証左といえる。
 これらを踏まえ、海外観光旅行市場の復活に向け、今回の調査結果からいえることは3点。
 まずは、子どもの頃から海外旅行経験を持つ若手(20〜39歳)をターゲットとすること。2つ目は、彼らが関心を持つような旅行先を選択し、集中的にその魅力や現地での経験についてわかりやすく、かつ、具体的に伝え「やっぱり、海外は良いなぁ」と思わせること。
 3つ目は、「いつか」ではなく「今、行かなきゃ」と思わせるような仕掛けを行うこと。
 例えば、着地のDMOと協働して、若者向けのイベント、フェスティバルを展開したり、特定期間に旅行申し込みをすることで何かしらの特典(客室アップグレードや割引、特別プログラムなど)を得られたりなどの取り組みが検討できる。ライフイベント発生との繋がりが大きいことを考えれば、「初めての子連れで海外」とか「(子どもの独立による)久しぶりの夫婦だけの旅行」などイベントに寄り添ったプログラム提供も考えられるだろう。重要なことは「行く気満々」の人々(検討層)ではなく、意欲はあるけど行動に移していない未検討層の意欲に火をつけることである。ただ、未検討層は、自ら積極的な検索をしないため、プル型の情
報発信では届かない。彼らに届けるためには、プッシュ型の情報発信を行い、それなりのパワーをかける必要があるだろう。
 これは容易ではないが、このタイミングで取り組むべき理由も大きい。
 このまま国内旅行や他の余暇活動に需要がシフトしてしまうことは、短期的な市場落ち込みに留まらず、今後、何十年という時間軸で市場形成を危うくする可能性があるからだ。
このまま海外観光旅行の断絶が続いてしまうと、半世紀以上に渡って繋がってきた経験値が断絶し、市場の再生産ができなくなってしまう。
 これを考えれば、需要の回復は、できるだけ早急に行う必要があり、それには個々の事業者や地域が別個で取り組むのではなく、様々な関係者が共同して取り組んでいくことが必要だろう。