① コロナ禍における観光レクリエーションこれまでの経験と今後の意向

 公益財団法人日本交通公社では、中長期的な国民の旅行に対する意識を把握することを目的に、毎年5月に「JTBF旅行意識調査」を実施している。2020年度はコロナ禍における緊急調査として、11月下旬から12月初めにかけて第2回調査を実施した。調査概要は表1に示すとおりである。


 この調査では、あらかじめ提示した特定の観光レクリエーション旅行に関する認知と経験、参加意向を聞いている。具体的には、認知とこれまでの経験を「過去一年以内に行った」「行ったことがある」「知っているが行ったことはない」「知らない」の4つの選択肢で、今後の参加意向を「是非してみたい」「してみたい」「あまりしたくない」「全くしたくない」の4段階(*1)で、それぞれ回答してもらった(図1、2)。なお、取り上げた旅行タイプとアンケート調査票に付記した説明は表2のとおりである。




 ここ1年間の経験は、「ドライブ旅行(24.6%)」、テレビニュースなどでも話題となった近場への旅行「マイクロツーリズム・ミニマムツーリズム・ステイケーション(12.6%)」が高かった。また、「GoToトラベルキャンペーンを利用しての旅行」は2割以上が経験したという結果になった。特集2の冒頭で紹介したトレッキングやキャンプにも相当する「日帰りでの登山」「自然の道を歩く旅行」「日本の国立公園を訪れる旅行」「家族や友人・知人と楽しむキャンプ」は4%前後が「過去一年以内に行った」と答え、取り上げた旅行の中では比較的経験率が高かった。これらの旅行はいずれも、これまでに行ったことがある人が4割程度と、コロナ禍以前から行われてきた観光レクリエーションでもある。
 一方で、「オンラインツアー・バーチャルツアー(VR旅行)」「貸切型のプライベートツアー」「ワーケーション」「ブリージャー」は半数近く、もしくはそれ以上の人が「知らない」と回答し、コロナ禍でにわかに注目を浴びたものの一般にはまだ浸透していないことが示唆された。「マイクロツーリズム・ミニマムツーリズム・ステイケーション」を知らないという人も約5割みられたが、知っている層の中では経験したことがある人の方が多かった。
 続いて今後の参加意向をみると、「ドライブ旅行」「日本の国立公園を訪れる旅行」「自然の道を歩く旅行」「歴史の道を歩く旅行」などの、これまでもよく知られ、かつ、三密を避けやすい旅行への意欲が高くなっている。しかしながら、いずれも「したくない」と回答した人が1割強から3割ほどみられた。この比率は、コロナ禍に特有の状況なのか否かは、この先に検証する必要があるだろう。
 また、「GoToトラベルキャンペーンを利用しての旅行」は「是非してみたい」が「ドライブ旅行」に次いで高く、3割以上を占めた。さらに「過去一年以内に行った」と回答した人の参加意向をみると、
「是非してみたい(68%)」と「してみたい(25%)」をあわせて9割以上が再度の利用意向を示した(図2)。このデータによると、同キャンペーンには旅行実施意欲を刺激する効果があると考えてよいだろう。


 一方で、「オンラインツアー・バーチャルツアー(VR旅行)」「ワーケーション」「ブリージャー」といったコロナ禍に特徴的な旅行への参加意向は2割から3割程度と他の旅行と比べて低く、実施するにはハードルが高いようである。
 旅行のあり方は、社会と時代の価値観を反映してこれまでにも変化してきた。今回の調査で取り上げた旅行に対する認知と経験、参加意向も、コロナ禍で安心安全な旅行を人々が強く求めるようになった価値観の変化の表れと考えられる。そのような時代のニーズに対応した旅行のあり方が、どのように社会に受け入れられていくのか、引き続き今後の動向を注視したい。

寺崎竜雄(理事・観光地域研究部長)
安原有紗(観光地域研究部 地域計画室 研究員)

 

*1:ワーケーション、ブリージャーは、就業者のみが回答の対象となるため、「該当しない」の選択肢を別途設けた。