③国内旅行におけるガイドツアーの参加経験と参加意向、求めること
公益財団法人日本交通公社観光文化振興部/研究員 仲 七重 観光文化振興部企画室長/上席主任研究員 五木田 玲子

 公益財団法人日本交通公社では、ガイドツアーへの一般消費者の参加現状及び参加意向を把握するため、全国20〜79歳の個人1200人に対してインターネットによるアンケート調査を実施した。
 本調査では、原生的な自然を探勝するガイドツアーやまち歩きをしながら地域の歴史や生活文化に触れるガイドツアーなど18種のガイドツアータイプを提示し、各ツアータイプに対する参加経験と参加意向を尋ねた。さらに、参加意向がある場合は、参加する際に求めることもあわせて尋ねている。調査にあたっては、〝ガイドとは、観光客を連れ立って観光地を案内したり、観光体験の技術指導をしたりするなどによって、観光客の行動を補助し、観光体験の楽しみを増大しようとする者〞、〝ガイドツアーとは、ガイドの案内・解説によってその土地の自然や歴史、文化等を楽しむ有償のツアー・体験観光(ここでのツアーには、オンラインツアーは含まない)〞と、冒頭であらかじめ提示したうえで、回答を得た。
 今回は、本調査結果をもとに執筆した筆者らの論文(※)及び追加分析から、国内旅行におけるガイドツアーの参加経験と参加意向、そして求めることについて紹介する。

※五木田玲子・仲七重・寺崎竜雄(2022)ガイドツアータイプと参加経験に着目した参加意向者の特徴とガイドツアーに求めること、ランドスケープ研究85(5)

ガイドツアーの参加経験と参加意向

 まず、参加経験についてみていく(表1)。ガイドツアー18種の参加経験率の平均は9.3%であり、国内旅行においては1割程度がガイドツアーに参加した経験があった。では、どのようなツアーの参加経験率が高く、どのようなツアーの参加経験率が低いのだろうか。そこで、ツアータイプ別にみてみると、『産業施設等の見学(20.3%)』が最も高く、その後に『文化財や史跡、社寺等の探勝(19.0%)』、『地域の歴史や生活文化の体感(13.8%)』と文化資源のガイドツアーが続いた。一方で、参加経験率が最も低いのは『環境保全活動(2.5%)』であり、次いで『身近な自然の探勝(4.4%)』といった自然資源であった。なお、参加者に占めるツアータイプ別の2回目以上の割合(リピート率)は、『産業施設等の見学』、『人文科学系博物館鑑賞』、『アウトドア活動・スポーツ体験』、『環境保全活動』、『文化財や史跡、社寺等の探勝』で4割を超える。これらはリピーターが多いツアータイプであると考えられる。

 続いて、参加意向に目を向ける。ガイドツアー18種の参加意向平均は「是非参加してみたい」が9.3%、「参加してみたい」が31.5%で、参加意向ありは合わせて4割を占めるものの、是非という強い意向は1割に留まった。ツアータイプ別の参加意向をみると、『産業施設等の見学(51.3%)』が参加経験率と同様に最も高く、次いで『文化財や史跡、社寺等の探勝(50.4%)』となった。最も参加意向が低いタイプは『環境保全活動(26.3%)』であった。
 このように、参加経験率が高いツアータイプほど参加意向も高いことがわかる。資源種別にみると、全体的に文化資源のほうが参加経験率・参加意向ともに高い傾向にあり、特に『産業施設等の見学』や『文化財や史跡、社寺等の探勝』で高かった。一方、『環境保全活動』は参加経験率・参加意向ともに低いものの、リピート率は高い。『環境保全活動』は環境問題に対する強い思いや普段の暮らしのなかでの意識も相まって、リピーターが多くなっていると考えられる。
 ところで、ガイドツアーは、どのような旅行先で参加することが多いのだろうか。そこで、参加経験があるツアータイプについて、初めて訪れる旅行先と何度か訪れたことのある旅行先のどちらで参加することが多いか尋ねた(表2)。全体平均では「初めて訪れる旅行先(58.6%)」が6割を占め、「何度か訪れたことのある旅行先(28.3%)」を大きく上回った。ツアータイプ別にみても、『環境保全活動』を除いて、「初めて訪れる旅行先」のほうが高い割合となった。「初めて訪れる旅行先」の割合が特に高いツアータイプは、自然資源では『原生的自然の探勝(72.4%)』、文化資源では『語り部ガイド体験(74.2%)』であった。これらのツアータイプは、基礎知識が必要であるほか、解説があることによってその資源・地域について深く知ることができるツアーであり、多くの人が初めて訪れた時に参加する傾向にある。一方、「何度か訪れたことのある旅行先」は、自然資源では『環境保全活動(46.7%)』や『身近な自然の探勝(35.8%)』、『登山、トレッキング(33.7%)』、『野外活動体験(33.3%)』、文化資源では『人文科学系博物館鑑賞(33.6%)』などで他のツアータイプに比べて割合が高い。「何度か訪れたことのある旅行先」でのガイドツアー参加は、自然資源で多い傾向にあり、一度訪問したことによってより問題意識を持ったり、異なる季節でツアーを楽しんだりしていると考えられる。

ガイドツアーに求めること

 では、なぜガイドツアーに参加したいと思うのだろうか。最後に、参加意向があるガイドツアーについて、参加にあたって何を求めているのか尋ねた結果を紹介する(表3)。全体平均でみると「その地域や対象についての理解を深めること(36.4%)」を最も多く求めており、ほとんどのツアータイプで最多となった。特に、『文化財や史跡、社寺等の探勝』、『語り部ガイド体験』、『人文科学系博物館鑑賞』といった文化資源で多く、目にしただけではわかりづらい事象の背景などへの興味・関心が読み取れる。その一方で、「効率よく見所をめぐること(31.0%)」への期待も大きく、『地域の歴史や生活文化の体感』や『産業施設等の見学』では最も多かった。また、『登山、トレッキング』、『アウトドア活動・スポーツ体験』では「安全管理をしてもらえること」を最も重視していた。

おわりに

 コロナ禍において、不特定多数との接触の懸念などから、現地ツアーや体験プログラム等への参加はコロナ禍前に比べて少ない状態が続いている(※)。しかしガイドツアーには、多様なまなざしから地域や対象に理解を深める学びの場として、また、希薄になった他者との交流の場としての広がりが更に期待される。with/afterコロナにおいて、ガイドツアーへの参加意向や今後求められることにどのような変化があるのか、今後の動向に注目したい。

※公益財団法人日本交通公社第31回旅行動向シンポジウム「コロナ禍における日本人旅行者の動向・意識」