コロナ禍前、多くの観光客で賑わい、まちが活性化する一方で、一部観光地の混雑等の課題が生じ、市民生活にも影響が出ていた京都観光。コロナ禍で観光客が激減し、観光がいかに幅広く京都の経済や雇用を支えてきたかを、多くの方が改めて実感することとなった。
 そんな京都観光を回復させるためには、安心・安全の確保を前提に、市民生活と観光が調和し、市民の皆様が豊かさを感じられる持続可能な観光を実現する必要がある。こうした考えで、京都市では「京都観光振興計画2025」を策定。将来を見据えた観光政策を推進している。
 例えば、コロナ禍においても混雑を避けた快適な観光を楽しんでもらうため、観光客の分散化にも繋がる事前予約制や朝夜観光など「密」を避けた観光、先端技術を活用した混雑状況の見える化、安心・安全の取組を推進。さらにこれらを多言語化して発信するなどの施策を強力に進めてきた。
 また、持続可能な観光に向けて、市民、観光客、観光事業者・従事者等がお互いに尊重し合い、三者にとってより質(満足度)の高い観光、地域をより尊重した観光を実現する必要がある。そのために、京都観光において大切にしていきたい事項を示した「京都観光行動基準(京都観光モラル)」を2020年11月に策定。さらに昨年11月には、DMOKYOTO(京都市観光協会)をはじめ25の観光関連団体の方々と共に、新しい京都観光の実現に向けた共同宣言を行ったところであり、京都では今、持続可能な観光を推進していこうという動きが、事業者も主体となって活発化している。
 世界的にもサステイナブルツーリズムやレスポンシブルツーリズムといった考え方が益々重要となる中、観光の力をいかした地域や社会の課題解決、環境問題にも配慮した観光の実現は、京都の責務。観光課題、そして社会課題解決先進都市として、京都から持続可能な観光のモデルを示していきたい。
 今後は、インバウンドやMICEの本格的な回復が期待される。観光は人々の暮らしや心、人生の豊かさを高めるだけでなく、相互交流を通じて世界平和・国際親善にも寄与するもの。ロシアによるウクライナ侵攻をはじめ不安定な状況が続く今こそ、キーウ市の姉妹都市でもある京都市が果たす役割は大きいと考える。万全の体制の下、インバウンドの受入再開を心から歓迎し、新たな京都観光に共感いただく皆様を温かくお迎えしたい。

これからの京都観光
~ 観光課題・社会課題解決先進都市へ~


門川大作(京都市長)
京都市出身。京都市教育長を経て2008年2月に第26代京都市長に就任。文化を基軸とした都市経営を実践しており、2019年12月に日本で初開催された「国連 観光・文化京都会議」において、観光、文化、地域コミュニティの関係を適切にマネジメントする「京都モデル」について特別講演を行い、その理念が今後の各国・地域における観光と文化に関する取組指針となる「観光・文化京都宣言」に盛り込まれる。文化と経済の融合、文化で京都・日本を元気にすることを目指している。