観光産業の低生産性の一因として、稼働率の変動(繁閑差)が大きいことがあげられる。宿泊業をはじめ、観光産業の多くは装置産業であり、その装置(例:宿泊施設の設備・建物)を継続して高稼働させることが生産性向上(全要素生産性)には有効であるし、また、雇用の面でも、稼働率が安定することで、細切れ雇用を抑制し継続雇用が可能となる。これは、雇用の安定化にもつながり、教育コストの低減、現場ノウハウの蓄積などの向上につながることになる。
 こうした稼働率の安定化にむけて、海外で注目されているのがMICEである。海外DMOでは、観光需要ではなく、このMICEの取り込みを重視しているところもすくなくない。しかしながら、我が国においては、MICEという言葉は移入されているものの、地域振興の手段として体系的、戦略的な運用とはなっていない傾向にある。そこで、改めてMICEという非観光需要の戦略的価値について検討を行う。