愛知県図書館と地域図書館が連携した観光魅力の発信と旅への誘い
「二度目の旅は図書館から」
愛知芸術文化センター愛知県図書館は、名古屋市内の名古屋城城郭内南西の一角にある緑に囲まれた図書館である。2018年3月にリニューアルした開放感のあるエントランスフロア(愛称:Yotteko(ヨッテコ))では、様々な企画展示やイベントが年間を通して開催され、新たな情報発信と交流の場となっている。
同図書館では2017年度より、「二度目の旅は図書館から〜図書館からはじめるちょっとディープなまちあるき〜」という企画をスタートさせた。「〝旅行者にもう1回地域に来てもらう。その時はまず図書館から旅をはじめてもらおう〞という狙いを込めたものです」と語る同図書館サービス課長の新海弘之氏に話をお聞きした。
「二度目の旅は図書館から」の最初の企画イベントは、2018年2月に開催した「魅力対決!豊橋vs田原in県図書」。内容は民話の世界から紹介する東三河の楽しみ方(トークイベント)、豊橋市と田原市の図書館司書による両市紹介と旅への誘いを目的としたライブラリー・トーク、1階エントランスフロアでの関連パネル展示などで、大きな盛り上がりをみせたという。この企画は、もともと、「魅力対決!豊橋vs田原」と銘打ち2016年9月〜2017年1月の期間に豊橋・田原両市の図書館で開催された、両市図書館員が市の魅力を紹介し合う連携パネル展をきっかけとしている。
県図書館の企画は、東三河地域の観光振興に力を入れている県の方向性にも合致したものとして、この2つの図書館が地域の魅力発信に動いた取り組みをあらためて県として取り上げたものであった。
この企画イベントは継続しており、2019年1〜2月には、蒲郡市を対象に第2回「蒲郡│海辺のまちの戦国時代│」が開催された。さらに2019年8月には、県図書館の企画を受けて、地元・蒲郡市立図書館が「海辺のまちの戦国時代」と題した企画展やトークショーを開催した。県図書館と地域図書館がテーマ・企画内容を共有し連携する取り組みは全国的にも珍しい。
企画イベントとともに県図書館で注目されるのが、1階の観光情報コーナーの充実である。
2018年3月より、東三河地域各市町村のパンフレットを集めたコーナーを設置してきたが、県内全域に理解が広がり、現在は全市町村の最新のパンフレットや地域情報誌(フリーペーパーを含む)、イベントチラシなどが揃う。
県立図書館と市町村立図書館がそれぞれの役割をふまえながら連携する双方向の取り組みは、今後、地域が観光魅力の発信や観光需要の掘り起こしを図る上で、新たな可能性を秘めているように思われる。(文:大隅一志)