文化庁は令和5年3月27日より京都での業務を開始し、5月に本格的に稼働しました。文化庁の京都移転に関係する皆さまの多大なるご尽力に感謝します。歴史・文化の豊かな京都の地から、文化庁ならではの地方創生を実現するため、業務に取り組んでいます。
文化庁京都移転は、平成28年3月の「政府関係機関移転基本方針」において、決定されました。平成29年4月には、先行移転として「地域文化創生本部」を京都に設置するとともに、平成30年10月には、京都移転を見据えた文化庁の組織再編が行われました。令和元年及び2年には、京都移転を想定したシミュレーションを行い、課題を洗い出し分析した上でテレビ会議システムの導入など改善に向けた取組を着実に進めてまいりました。
 更に、移転を契機とした機能強化を目的に、食文化及び文化観光行政について、その企画立案機能を強化するため、長官をトップとした「食文化推進本部」及び「文化観光推進本部」を本年3月、京都に設置しました。これらの推進本部では、「食文化」及び「文化観光」に係る施策の全国展開をメインテーマとして、令和7年の大阪・関西万博をターゲットにした取組の検討や、全国各地における食文化や文化観光の推進を通じた地方創生に取り組んでまいります。
 特に、京都は、世界遺産「古都京都の文化財」をはじめとする寺社建築や仏像などの仏教美術、庭園など、世界に例を見ない独自の文化が花開くとともに、教会や学校建築、銀行建築などの近代建築(モダン建築)が数多く現存しているなど、多様な有形・無形の文化財が存在する観光都市です。
 文化財は、国や地域の歴史・文化の理解に欠くことのできない国民的財産であり、その保存修理を適切に行い、次世代に確実に継承することが必要です。文化庁では、文化財の持続可能な保存・継承体制の構築を図るため、「文化財の匠プロジェクト」に基づき、修理に必要な用具・原材料の安定確保、修理人材の養成・確保などを一体的に推進しており、その一環として、文化財修理センター(仮称)を京都に整備すべく、必要な取組を進めています。
 また、文化財の継承に当たっては、活用しながら保存へ再投資する好循環の構築を進めることも重要です。文化庁では「新時代のインバウンド拡大アクションプラン(令和5年5月観光立国推進閣僚会議決定)」に基づき、世界遺産や国宝などの魅力的な文化財での特別な歴史体験の提供、早朝・夜間活用などの上質で思い切った活用を検討しています。また、モダン建築や重要伝統的建造物群保存地区など観光資源となる文化財の宿泊施設、集客施設への改修に取り組むことで、全国各地における文化財の高付加価値化、持続可能な保存・活用をプッシュ型で進めることも検討しています。
 こうした取組の推進に当たっては、歴史・文化の息づく京都の地から学ぶことも多々あります。例えば、二条城をはじめとする文化財のユニークベニュー活用について、京都が先進的な取組を進めているおかげで、他の地域の文化財において地元の関係者の理解を得やすくなったという声も聞きます。文化庁もユニークベニュー活用のハンドブックを作成し、周知を進めており、京都発の取組で全国的な活用が進んだ好例であると捉えています。移転を契機として、また、ポストコロナ時代において、文化庁職員ひとりひとりが文化行政の現場に足を運び、文化を生活の中で体験することで、我が国の文化を深く理解し、現場への視座をもった企画立案を進め、全国各地への政策展開に努めていきたいと考えています。