「琉球弧SUMMIT Zero“0”in沖縄県・南城市」を開催

主催……琉球弧SUMMIT 実行委員会
事務局…公益財団法人日本交通公社
沖縄事務所(おきなわサステナラボ)
協力……ウェルネスリゾート沖縄休暇センター
ユインチホテル南城
株式会社さちばるの庭
南城市久高区
後援……南城市役所

プログラム
9/8金
13:00 集合@ユインチホテル南城
13:30〜15:05 SUMMIT プログラム① @南城市役所
Session 1 「イントロ/島プレゼン/グループワーク」
15:15〜17:00 SUMMIT プログラム② @南城市役所
Session 2 「全体討論/1日目まとめ」
18:00〜20:30 交流会@さちばる広場

9/9土
08:30〜09:30 SUMMIT プログラム③ @ユインチホテル南城
Ending Session「SUMMIT One“1”に向けて」
10:00〜17:30 SUMMIT プログラム④ @久高島
視察(島内観光、地産弁当ランチ、島人による講話 等)
17:30 解散@安座真港

 
 2023年9月初旬、公益財団法人日本交通公社では、沖縄事務所(おきなわサステナラボ)が事務局となって、地域(シマ)間交流イベント「琉球弧SUMMIT」を開催しました。鹿児島・沖縄の島々から集まった30名で大いに議論して盛り上がった第1回目のSUMMIT。その開催結果を報告します。

1.おきなわサステナラボ

 2022年、公益財団法人日本交通公社では、現在、東京・青山に構える本部事務所以外としては初めての地域事業所となる「沖縄事務所(おきなわサステナラボ)」を設置しました。昨年度の設置以降、サステナラボでは、サステナブルツーリズムをキーワードに、「沖縄観光の復興と持続可能な発展の支援」、「サステナブルツーリズムの推進現場での研究・調査の実践」、そして「サステナブルツーリズムを実践する人と知見のプラットフォームづくり」を目的に活動を行っています。
中でも、客観的な知見の蓄積に基づいた理論を基にした多くの〝実践〞の場をつくり上げていくことは、サステナラボの大きな目標の一つであり、実践的活動の種を探すべく、沖縄県内にとどまらない、奄美あるいはさらに北部の琉球弧を含めた様々な島を訪ねて、実践者たちとの対話を重ねてきました。
そうして訪ね歩いた島々の中で、琉球弧SUMMIT 開催の大きなきっかけとなった島の一つに、鹿児島県の甑島(こしきしま)があります。

2.Local to Localの水平展開

 甑島のような離島には一般的に、買い物の不便さ、救急・医療体制、子育て環境、あるいは商圏の狭さなど、生活する上での様々な不便さ、あるいはビジネスを行う上での障壁が存在します。それはもはや現代では、当たり前のディスアドバンテージになりつつあり、若者たちは生活できない、仕事もない島からは離れ、国や地方自治体からの補助や公共工事なしには存続できない島が数多く存在します。しかし、甑島を活動の拠点とする山下商店では、島のディスアドバンテージは前提としつつ、豆腐製造・販売や古民家を活用したホステル経営などスモールビジネスを成功させながら事業を拡大し、今では卸(地域商社)事業やコンサルティング事業なども行いながら島に住み続け、「世界で一番暮らしたい集落(コミュニティ)を自ら作る」を実践しています。
 今回、琉球弧SUMMIT では、山下商店を運営する、東シナ海の小さな島ブランド株式会社の代表取締役・山下賢太さんに実行委員長となってもらいました。その上で、この地域(シマ)間交流イベントは、島で暮らし続ける術(すべ)、観光との関係性の持ち方について、(我々のようなコンサル・シンクタンクが用いる)都会のロジックを押しつけるのではなく、島同士の対等な関係性の中で、同じ風土・文化圏を持つ琉球弧の中で各島のノウハウ、あるいは課題をシェアし、学び合う場として設定しました。
 参加者への呼びかけは、テーマと日付・場所の設定のみで、渡航費用等は全て自前でとお伝えしたかたちですが、結果的には15の島々から30名の参加者が集まりました。2日間の開催期間中に、各地での取り組み内容がシェアされ、琉球弧における島々の今後のあり方へと議論が展開されていきました。

3.今後に向けて
 黒潮に沿って九州南部から台湾へ弓なりに連なる島嶼群「琉球弧」。先史時代以来、多くの人々が行き来し、海上の道とも呼ばれてきた琉球弧の島々には、文化や風習など有形・無形を問わず多くの共通点が現在も色濃く残されています。一方、現代は、性別や世代、職業、社会的な立場、あるいは行政界など、様々な境界がいつの間にか大きくなりすぎ、コミュニティが分断された時代となってしまったようにも感じられます。しかし、琉球弧SUMMIT Zero“0”では、自然とヒト、島同士、家族、そして思いを同じくする人と連帯する価値というものがいかに大きいのか、そこに気づき始めた人たちが緩やかにつながる場を一時的にでも用意できたと思います。

 『森をつなぐ緑の回廊が無ければ、移動する鳥や小動物、昆虫が減り、森の生命力は極端に小さくなる。島同士にも同じことが言えるだろう。島同士のつながりを取り戻し、さらに新たな回廊でつなぐことで、琉球弧という強い多様な生態系・生物群集を、再び構築できる時代が見えてきたように思う。そんな心強い仲間達に出会うことができた琉球弧サミットでした。』
 こちらは、ある参加者からもらった琉球弧SUMMIT参加後のメッセージです。今まさになくなっていく、でも残したい有形・無形の風景があります。
それらをビジネスの力を使いながら、自分たちが暮らしながら、そして次の時代にアジャストさせながら子どもたちにつなげていくためには、やはり連帯・仲間が必要です。そのためのプラットフォームとして、サステナラボが今ここにある意義を問いながらこれからも活動を続け、そして琉球弧
SUMMIT Zero NEXT の開催を目指していきたいと思います。(文:JTBF・中島 泰)