先読み!マーケット 第二十一話

2012.01.18

第二十一話 オピニオンリーダー層に聞く2012年の国内旅行動向

 昨年の旅行市場は東日本大震災の影響で3月中旬から4月にかけての一ヶ月間に大きな落ち込みを記録しました。観光庁「宿泊旅行統計」から延べ宿泊数の前年同月比をみると、3月△27.5%、4月△20.1%、5月△11.4%で推移しています(従業員数10人以上の施設。震災の避難利用も一部含む)。
 しかし、市場はGWや夏休みを中心に急速に回復し、震災直後は旅行に消極的だった50代以上の層の旅行も活発となり、8月には前年同月比0.2%増、9月には1.3%増と前年並みの水準を確保しました。
 こうした流れを受けて、2012年の旅行市場はどう推移するのでしょうか。毎年実施しているオピニオンリーダー層へのアンケート調査から占っていきたいと思います(調査の概要)。調査は、2011年12月中旬に実施し、4万人から1,151人のオピニオンリーダー層を抽出しました(図1)。今回は調査結果の中から、2012年の旅行実施意向と2012年に「ブームになりそうな旅行スタイル」を中心にご紹介することにします。
 注)本稿で用いる「国内旅行」は観光やレジャー、保養などを主な目的とする旅行を指します。
   出張・業務、帰省など家事を主な目的とする旅行は除きます。

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図1 回答者層の概念図
図1

◇ 旅行回数は「増える」35.9%、「減る」14.6%◇

 2012年の宿泊を伴う国内旅行回数の増減傾向については、オピニオンリーダー層の35.9%が昨年に比べて「増える」と回答しました(「かなり増える」7.1%+「少し増える」28.8%)。これは、昨年度調査結果の33.9%を幾分上回っています。逆に「減る」と回答した人は14.6%と、昨年度の17.2%から減少しています。震災の影響の反動増が含まれているとしても、オピニオンリーダー層の旅行意欲は引き続き堅調とみて良いでしょう。年代別にみると、60代以上で43.2%の人が「増える」と回答しています。今年も旅行市場では高齢者層の存在感が強い1年になりそうです(表1)。

図2 1年間の旅行回数の増減
図2
表1 属性別にみた旅行回数の増減見通し
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 旅行回数が「増える」と回答した人にその理由を自由回答で聞いたところ、「ゆとりができたので(時間的余裕、金銭的余裕、心のゆとり、子育てが終わった等)」との回答が50代以上を中心に最も多く、34.6%に上っています。「今年旅行に行けなかった分を来年に」との回答も9.0%あって、そのうち震災の影響で行けなかったとの向きは5.6%を占めています。「行ってみたいところがある・日本をもっと知りたい」との回答は20~40代を中心に11.2%、「元気なうちに旅行を楽しみたい」との意見も60代を中心に6.8%に上りました。

図3 年間旅行回数が増加する理由(年代別)
図3

 一方、旅行回数が横ばいまたは減少すると回答した人に、旅行が増えない理由を聞いた結果が図4です。最も多い回答は「混雑する時期に旅行に行きたくない」21.7%(昨年度22.6%)で、以下「有給休暇をとりにくい」21.3%(同19.6%)、「家族と休暇が重ならない」18.6%(19.4%)と続いています。「景気の先行きが不透明」「自分や家族の給与やボーナスの減少」といった経済的要因も15%程度の回答率となっていますが、金融危機の影響が残っていた2009年11月の調査に比べると低くなりました。「東日本大震災の影響が残っているので」との回答も8.2%に上っています。

図4 旅行が増えない理由

◇ 単価は微増で推移か ◇

 2012年の国内宿泊旅行1回あたり費用の増減見込みについては、「横ばい」が61.2%と、昨年度調査の53.1%から増加しています。「増える」は26.6%(昨年度調査29.8%)、「減る」は12.3%(同17.2%)といずれも昨年度に比べて減少しました(図5)。高速道路料金の割引制度も縮小し、安い旅行商品や宿をインターネット等で探すといった行動も既に普及していますので、単価の下がる余地は小さくなっていると言えるでしょう(図6)。

図5 1年間の1回あたり旅行費用の増減
図5

図6 旅行費用を減らすための方法

◇ 2012年の旅行は、東北支援、グルメ、ひとり旅。高齢層では長期滞在も ◇

 オピニオンリーダー層に2012年にブームになりそうな旅行スタイルについて自由に書いてもらい、類似の回答を整理して集計した結果をご紹介します(表1)(有効回答数999票)。

 旅行先をみると、東日本大震災の「被災地支援の東北旅行」が増えるとの意見が80件と最も多く、幅広い年代で回答がありました。内容としては、応援ツアーへの参加や、温泉や桜、ボランティア参加などが挙がっています(平泉は世界遺産巡りとして集計)。旅行先としてはこの他に、「大河ドラマの舞台(特に厳島)」21件、「スカイツリー」11件、「九州新幹線」4件などが目立ちました。なお、東北に限らず、「ボランティア・社会貢献の旅行」が増えるとの回答が21件挙がりました。
 旅行活動としては、「グルメ」が58件と最も多く、このうち「B級グルメ」が25件を占めています。次いで「温泉」が48件、「癒しの旅」との回答も41件ありました。自然系、人文系では、「自然体験」が43件(「エコツアー」5件、「秘境・離島」5件を含む)、平泉や小笠原等の登録で脚光を浴びた「世界遺産巡り」が30件、「歴史・文化探訪」が29件、「パワースポット(聖地巡礼を含む)」が21件の回答を集めました。自然体験とも関連しますが、「体験型旅行」についての回答も31件あり、このうち「田舎体験」が10件含まれています。レクリエーション関係では、既にブームとなっている「登山・ハイキング」が31件を集めた他、「サイクリング」との回答も29件に上りました。
 同行者形態としては、「ひとり旅」が52件と注目を集めています。記述内容としては、「おひとり様の旅行」「女性のひとり旅」「気兼ねのない一人旅」といった表現が目立ちます。これに加えて、「合コン旅行」やfacebook等の「オフ会旅行」もそれぞれ3件の回答がありました。また、「家族旅行」は20代・30代を中心に24件、「高齢者の旅行」も60代以上を中心に12件の回答を集めました。
 旅行費用や旅行日数に関して、エコノミーな旅行に関する回答は全部で80件に上っていて、「格安旅行」40件、「LCC航空会社利用」16件、「車中泊の増加」14件、「バックパッカー」7件などとなっています。「近場や短期の旅行」という主旨の回答も30代を中心に25件ありました。逆に、「長期旅行」は60代以上を中心に22件の回答を集めました。
 この他、「エコロジーな旅」も29件(うち電気自動車の利用4件)の回答がありました。

表2 2012年にブームになりそうな旅行スタイル
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 私どもでは皆様が日頃感じている旅行市場への疑問や関心のあるテーマなどについてお便りを募集しておりますので宜しくお願いします。ではまた。

(塩谷英生)