調査結果概要
~東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会は地方誘客への絶好のチャンス~
- 今年も、日本はもっとも訪れたい国1位に8年連続で選ばれた。ただし、回答者のうち訪日旅行を希望する人の割合は、ほぼ横ばいが続いている。特にアジアの訪日旅行熱は安定期に入っており、今後のインバウンド市場拡大のためには、①アジアのリピート客の獲得とともに、②訪日経験が少ない国・地域に対するより一層のアプローチ、③客単価向上といった量から質への転換といった取り組みが求められる。
- 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下「東京2020大会」という。)についてたずねると、アジア、欧米豪ともに、回答者のうち半数以上が訪日観戦意欲を示した。なかでも、比較的訪日経験の少ない国・地域で、訪日観戦を望む声が大きく、東京2020大会を契機として、国・地域を問わず、日本は世界中から訪れたい国として大きな注目を集めている。
- さらに、訪日観戦を望む回答者の9割以上が、開催地以外の地方への小旅行も望んでおり、東京2020大会が全国へ誘客する絶好のチャンスであることが示唆された。この機会を逃すことなくインバウンド需要を取り込むためには、地域のきめ細かいPRや、受入体制の強化といった様々な取り組みが求められるだろう。
- また、「温泉のある日本旅館」は、欧米豪を中心に高価格帯の宿泊ニーズをつかみ切れていない可能性がある。宿泊人気が格段に高い一方で、西洋式の高級ホテルと比べて明らかに高価格帯の宿泊者が少なかったことは、客単価向上を図る観点で有益なヒントとなりうる。
- 加えて、欧米豪にとって「自然や風景の見物」は日本で体験したいものとして人気ではあるものの、「自然ガイドツアー」はことのほか関心が低かった。この結果を踏まえると、「自然ガイドツアー」の多様な商品拡充や情報発信の強化を行うことで、滞在型コンテンツである「自然」の観光商品化にむしろ大きなポテンシャルがあることが示唆された。
- なお、いわゆるオーバーツーリズムに関連する報道も見受けられるようになっている中、入場料の値上げや税の賦課を、「持続可能な観光」への施策に活用することの是非についてたずねると、賛成とする割合は4割を超え、反対を大幅に上回り、観光をとりまく環境の維持に一定の理解があることも示された。
- 更なるインバウンド市場の発展においては、東京2020大会を全国への誘客機会と捉えつつ、ポスト東京2020大会を新たな成長フェーズと見据えた取り組みが期待される。日本が持つ自然や文化といった地域資源の価値を再定義し、情報発信の強化を行うとともに、付加価値に見合った価格の多様性についても再考する余地は大いにある。