新型コロナウイルス感染症流行下の日本人旅行者の動向(その22)

概要

新型コロナウイルス感染症流行下の日本人旅行者の動向(その22)

公益財団法人日本交通公社 観光文化振興部・観光地域研究部では、定期的に実施している「JTBF旅行意識調査」に新型コロナウイルス感染症流行下における日本人旅行者の意識と行動に関する設問を加え、分析を進めています。

今般「新型コロナウイルス感染症流行下の日本人旅行者の動向(その22)」として、2020年1月~2022年5月の国内・海外の旅行意向旅行実施にあたっての判断、そして旅行で行きたい地域・あまり行きたくない地域をとりまとめました。

既に公表しているレポート(その4、その5、その14、その17)で分析対象とした2020年~2021年のデータに、 2022年5月調査のデータを加えて2020年から2022年5月までの半年ごと計5回の調査の結果を整理していますので、ぜひご覧ください。

【今回の調査結果のポイント】

  • コロナ禍での旅行意向は、国内旅行については2020年12月調査および2021年5月調査は「行きたい」が3割弱でしたが、2021年12月調査を転機として7割弱にまで回復しています。一方で、海外旅行は、国内旅行に比べると依然として「行きたい」は低率でした。
  • コロナ禍での旅行実施の判断では、「政府や自治体の要請に従って判断する」が前回調査から減少した一方で、「政府や自治体の要請を気にしつつも、自分で状況を分析して判断する」が増加しました。また、国内旅行の実施判断に影響を及ぼす項目は「緊急事態宣言」「まん延防止等重点措置」「都道府県をまたぐ移動自粛要請」、海外旅行再開の条件は「入国後の行動に関する制限解除」「口コミやマスコミ報道での安全確認」「旅行先からの歓迎」がそれぞれ上位を占めましたが、ほとんどの項目で選択率は減少傾向にありました。国内旅行、海外旅行いずれも実施のハードルが低くなってきているとともに、実施にあたっては自分で状況を見ながら判断するようになっていることがうかがえます。
  • 今後の旅行で行きたい地域は、「これまでに旅行したことのない地域」が、回を重ねるごとに高くなっています。

【Key Points of Results】

  • Looking at the intent to travel during COVID-19, regarding domestic travel, in the December 2020 survey and the May 2021 survey nearly 30% of respondents answered that they “Want to go” but the December 2021 survey was the turning point and this figure has recovered to nearly 70%. On the other hand, regarding overseas travel, the percentage of respondents who “Want to go” remained at a low level compared to domestic travel.
  • Regarding deciding to travel during COVID-19, “Follow the national and local government requests” decreased from the previous survey while on the other hand “I will analyze the situation and decide for myself while remaining aware of the requests” increased. Furthermore, the top positions in the rankings regarding the matters which influenced their decision to travel domestically were occupied by “nationwide declaration of emergency,” “priority measures to prevent the spread of the disease,” and “requests to refrain from traveling across prefectures” and regarding the conditions for resuming overseas travel were occupied by “Restrictions on post-arrival activities have been lifted,” “Word of mouth and media reports confirmed that it was safe” and “Welcomed at the destination,” respectively, but the percentage of respondents selecting the item decreased for most of the items. We can infer that the hurdles to going on both domestic travel and overseas travel have become lower, and that people are now monitoring the situation and making their own decisions when traveling.
  • Regarding the top destinations for future trips, “Areas I have never traveled before” scored highest furthermore, this figure has increased each time the survey was conducted.

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報告

国内旅行意欲は、2021年末を転機として回復

  • 国内旅行は、2020年12月、2021年5月には「行きたい」が3割弱でしたが、2021年12月に7割弱にまで大きく増加し、2022年5月においても引き続き7割弱となりました。さらに、「具体的に予定・検討している」は回を重ねるごとに増加しています。国内旅行意欲は、2021年12月以降、自粛から実施へと切り替わったと考えられます。
  • 海外旅行でも、「行きたい(具体的に予定・検討+迷い)」が次第に高まっているものの、国内旅行と比べると低調です。また、「そもそも海外旅行には行きたくない」が上昇傾向にあり、コロナ禍の長期化により、海外旅行そのものに対する意識に影響が生じていないかを注視していく必要がありそうです。

コロナ禍での国内旅行意欲 いずれの性年代も2021年末に回復

  • 現在のコロナ禍で、国内旅行へ「行きたい」と回答した割合は、全体の傾向と同様に、いずれの性年代においても2021年12月に「行きたい」が大きく増加し、旅行意欲が回復しています。これは、全ての調査回を通して旅行意向が低い70代であっても同様で、2021年12月時点で男女ともに5割を超えました。
  • その後、2022年5月においては増加した層と減少した層に分けられ、20代、40代、60~70代の男性、30~60代の女性で増加しました。
  • 直近の調査で、特に旅行意向が高いのは男性20代と女性30代で、いずれも7.5割を超えました。

コロナ禍での海外旅行意向 20代女性で一環して増加傾向

  • 現在のコロナ禍で、海外旅行へ「行きたい」と回答した割合を性別に見ると、男女共に2021年末から増加しています。
  • 性年代別に変化を見ると、20代女性は2020年12月以降、一環して増加しています。また、増加した時期は性年代ごとに異なり、20~30代男性は前回調査時、40~50代の男女は直近の調査で大きく増加しました。一方で、70代は男女いずれも前回調査からほぼ変化はみられませんでした。

「自分で状況を分析して判断」が前回調査から増加し4割

  • 旅行実施の判断に政府や自治体の要請を意識するかを尋ねると、「政府や自治体の要請に従って判断する」は前回調査から8.7pt減の50.3%となり、代わりに「政府や自治体の要請を気にしつつも、自分で状況を分析して判断する」が5.9pt増の40.1%となりました。
  • 「政府や自治体の要請は気にしない(自身でリスクの大小を想定して判断する+周囲の行動に合わせて判断する)」が7.9%と、これまでで最も高くなりました。

「政府や自治体の要請に従って判断する」ほとんどの性年代で減少

  • 旅行実施の際に「政府や自治体の要請に従って判断する」と回答した割合は、男性では47.2%、女性では53.5%と、これまでの調査と同様に、女性の方がやや高くなりました。
  • 2021年12月からの変化を見ると、50代男性を除く全ての性年代で減少し、特に60代男性、20代、40代、70代の女性で10pt以上減少しました。
  • なお、60代以上の高齢層の女性は、依然として6割以上が「要請に従って判断」を選択しています。

国内旅行の実施判断への影響は、ほとんどの項目で減少

  • 現在のコロナ禍で国内旅行を実施するかを判断するときに影響を及ぼす項目を尋ねると、「緊急事態宣言の発出状況」が最も多く71.0%、次いで「まん延防止等重点措置の発出状況(60.0%)」、「都道府県をまたぐ移動自粛要請の発出状況(53.6%)」となり、政府や自治体から出される要請が上位を占めました。
  • ほとんどの項目で前回調査から減少していることから、国内旅行実施のハードルが低くなってきていることがうかがえます。
  • 一方で、「景気や家計の経済状況」は増加傾向にあり、コロナ禍の長期化による経済的な影響が示唆されました。

国内旅行実施に影響する要素
20~30代「周囲での感染者の発生」40代~60代「まん延防止等重点措置」

  • 国内旅行の実施に影響を及ぼす項目を年代別にランキング形式で見ると、全ての年代で「緊急事態宣言の発出状況」が1位となり、特に40代では8割弱となりました。
  • 20~30代の比較的若い年代では「自分の周囲での感染者の発生」、40~60代では「まん延防止等重点措置の発出状況」が2位となりました。また、60~70代では、「旅行先の新規感染者数」が5位以内に入るなど、国内旅行の実施に影響を与える要素は年代によって異なります。

海外旅行再開の条件 「入国後の行動制限の解除」が突出して高い

  • 海外旅行再開の条件を尋ねると、「入国後の行動に関する制限が解除された」が突出して高く54.4%、次いで「口コミやマスコミ報道で安全だと確認できた(39.0%)」、「旅行先から歓迎されることがわかった(38.6%)」となりました。
  • ほとんどの項目で前回調査から減少傾向にあり、国内旅行と同様に、海外旅行実施のハードルも低くなってきていることがうかがえます。

海外旅行再開の条件
20~30代「旅行先からの歓迎」40代~「治療薬の開発」

  • 海外旅行再開の条件を年代別にランキング形式で見ると、全ての年代で「入国後の行動に関する制限が解除された」が1位となり、特に50~60代で高く6割前後を占めました。
  • 20~30代といった比較的若い年代では「旅行先から歓迎されることがわかった」、40~70代では「治療薬が開発された」が5位以内に入っており、年代により海外旅行再開の条件が異なります。

今後行きたい地域「これまでに旅行したことのない地域」が増加

  • 今後の旅行で行きたい地域は、「これまでに旅行したことのない地域」が47.3%と最も高く、また、回を重ねるごとに高くなっています。次いで「元々予定していた地域(40.1%)」、「あまり人が密集しない地域(32.7%)」、「これまでに旅行したことがあり、愛着のある地域(30.0%)」がそれぞれ3割を超えました。
  • 今後の旅行であまり行きたくない地域は、「新型コロナによる感染者が多い地域」が65.0%と突出して高く、次いで「公衆衛生などの感染症対策が徹底されていない地域(49.1%)」、「人が密集しやすい地域(47.3%)」がそれぞれ5割弱となりました。

行きたい地域 20代は「これまでに旅行したことのない地域」を重視

  • 今後の旅行で行きたい地域を年代別にランキング形式で見ると、全ての年代で「これまでに旅行したことのない地域」が1位となり、特に20代および50代で高く5割を超えました。
  • 20~50代は「元々予定していた地域」が4割を超えて1位または2位、60~70代は「あまり人が密集しない地域」がそれぞれ4割弱を占めて2位となりました。

あまり行きたくない地域 60代以上は「感染者数」と「医療体制」を重視

  • 今後の旅行であまり行きたくない地域を年代別にランキング形式で見ると、全ての年代で「新型コロナによる感染者が多い地域」が1位となり、特に60~70代で高く7割を超えました。
  • 「医療体制が脆弱な地域」および「外国人が多く訪れる地域」は20代では2割以下にとどまりましたが、60~70代では3割弱~4割を占め、年代により意識に差が見られました。

  • 今後の旅行であまり行きたくない地域を年代別にランキング形式で見ると、全ての年代で「新型コロナによる感染者が多い地域」が1位となり、特に60~70代で高く7割を超えました。
  • 「医療体制が脆弱な地域」および「外国人が多く訪れる地域」は20代では2割以下にとどまりましたが、60~70代では3割弱~4割を占め、年代により意識に差が見られました。

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発注者 公益財団法人日本交通公社
実施年度 2022年度