新型コロナウイルス感染症影響下の日本人旅行者の動向(その23)

概要

新型コロナウイルス感染症影響下の日本人旅行者の動向(その23)

公益財団法人日本交通公社 観光研究部では、定期的に実施している「JTBF旅行実態調査」に新型コロナウイルス感染症影響下における日本人旅行者の意識と行動に関する設問を加え、分析を進めています。

今般「新型コロナウイルス感染症影響下の日本人旅行者の動向(その23)」として、2020年1月~2023年3月の旅行実施の状況および今後の旅行意向、コロナ禍における日常生活への影響をとりまとめました。

既に公表しているデータに、2022年7月〜2023年3月期のデータ(22年10月調査および23年1月・5月調査)を加えて、2020年から2023年3月までの3年3か月の動向を整理していますので、ぜひご覧ください。

【今回の調査結果のポイント】

  • 23年3月の国内旅行の予定通り実施率は8割を超え、調査開始以来、最も高い割合になりました。新型コロナを理由とする とりやめ率も、調査開始以来初の1桁台(7.8%)となり、国内旅行実施の状況はコロナ禍前の状況に戻りつつあります。また、海外旅行の予定通り実施率も水際対策の緩和が漸進的に行われたことから、23年3月には20年2月以来の4割越えとなり、とりやめ率を上回りました。
  • この先1年以内の旅行意向では、国内旅行の行きたい層は75.9%となった一方で、海外旅行では33.2%にとどまりました。海外旅行の実施をためらう理由は、「円高や世界的な物価高による割高感」がトップとなりました。
  • 新型コロナに対して不安を持つ割合は、最も不安が高まっていたコロナ禍初期(20年5月)から大幅に減少し、23 年5月には「とても不安を感じている」が1割を下回りました。これに「やや不安を感じている」をあわせた“不安を感じている層”も半数未満となりました。

【Key Points of Results】

  • In March 2023, the rate of traveling domestically as planned exceeded 80%, the highest ratio since the start of the survey. The cancellation rate due to COVID-19 also dropped to single digits for the first time since the survey began, at 7.8%, indicating that domestic travel is gradually returning to pre-pandemic conditions. Additionally, the rate of overseas travel has gradually increased due to the progressive easing of border measures. By March 2023, this rate exceeded 40%, surpassing the cancellation rate for the first time since February 2020.
  • For intent to travel in the next year, 75.9% of respondents answered they wanted to travel domestically, while just 33.2% wanted to travel overseas. The top reason for hesitating to go on overseas trips was “feels expensive due to a weaker yen and rising global prices.”
  • The proportion of people who feel anxious about COVID-19 has significantly decreased from the initial stage of the pandemic (May 2020), with those who “feel very anxious” falling below 10% as of May 2023. Including those who feel “somewhat anxious,” the total percentage of people who “feel anxious” was also less than half of respondents.

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報告

23年3月の国内旅行「予定通り実施率」8割超で調査以来、最高値

  • 国内旅行の予定通り実施率は、コロナ禍初期(20年5月)には6.8%にとどまっており、その後も緊急事態宣言等の発出や感染拡大の状況に応じて増減を繰り返してきました。21年10月以降は、感染者数が増加している時期があるにも関わらず、継続して予定通り実施率がとりやめ率より高い割合で推移しています。
  • 23年3月には、予定通り実施率が8割を超え、調査開始以来、最も高い割合になりました。新型コロナを理由とするとりやめ率も、調査開始以来初の1桁台(7.8%)となり、国内旅行実施の状況はコロナ禍前の状況に戻りつつあります。

海外旅行「予定通り実施率」 水際対策の緩和を機に上昇

  • 海外旅行の予定通り実施率は、入国制限や水際対策の強化などの背景から、20年4月~22年3月は10%未満の割合で推移してきました。22年4月以降は、入国者数上限の引き上げや撤廃、入国時検査等の見直しなどの水際対策の緩和が漸進的に行われたことから、徐々に予定通り実施率が上昇し、23年3月には20年2月以来の4割越えでとりやめ率を上回りました。
  • とりやめ率は、20~21年には7~8割台で推移していましたが、22年以降は徐々に減少し、23年3月には34.3%とコロナ禍初期(20年1月)と同水準まで減少しました。

23年1月 収束後「これまで以上に旅行に行きたい」最多

  • コロナ禍収束後の旅行意向は、23年1月調査に「これまで以上に旅行に行きたい」が、調査開始以降、最多となりました。

国内旅行 4分の3が「行きたい」海外旅行は3分の1にとどまる

  • この先1年以内に国内旅行に「行きたいと思っており、具体的に予定・検討している」は40.5%、「行きたいと思っているが、実施するか悩んでいる」は35.4%であり、これらを合わせた”行きたい層”は7.5割を超えました。
  • 一方、海外旅行の“行きたい層”は33.2%にとどまりました。「いまは行きたくない(33.4%)」「いまに限らず、行きたくない・興味が無い(33.3%)」もそれぞれ3割程度を占めました。

国内旅行 20代の実施意向が高く、約半数が具体的に検討中

  • この先1年以内の国内旅行の意向を性年代別にみると、「行きたいと思っており、具体的に予定・検討している」は20代女性で52.1%、20代男性で47.1%と20代では男女とも実施の意欲が高いです。
  • 「いまは行きたくない」の割合は、男女ともに20代から70代以上にかけて増加しており、特に女性で顕著です。

海外旅行 10~20代で実施意向高

  • この先1年以内の海外旅行の意向について、 「行きたいと思っており、具体的に予定・検討している」 と回答した割合は男女ともに10代が最も高く次いで20代となりました。また、「行きたいと思っているが、実施するか迷っている」は、10~20代で3~4割と、他の年代に比べてこれらを合わせた“行きたい層”が高いです。
  • 「いまは行きたくない」は、男女ともに60代以上で4割前後を占めていることから、高齢者の海外旅行の回復には若年層以上に時間がかかると考えられます。

海外旅行をためらう理由 「円安や物価高による割高感」がトップ

  • 海外旅行の実施をためらう理由は、「円安や世界的な物価高による割高感」が40.7%でトップとなり、すべての性年代で3~4.5割を占めました。2位は「経済的に余裕がない/節約したい」、3位は「日程の確保が困難」となりました。
  • 「経済的に余裕がない/節約したい」は10代、「日程の確保が困難」は20~30代で高い傾向にありますが、「新型コロナの感染が不安」や「安全に旅行できるか不安」、「コロナ禍の影響で海外旅行にあまり興味が無くなった」は年代が上がるにつれ割合も高くなっています。

23年5月「コロナにとても不安を感じている」1割弱

  • 新型コロナに対して不安感を持つ人の割合は、最も不安が高まったコロナ禍初期(20年5月)から大幅に減少し、23年5月の「とても不安を感じている」は1割を下回りました。これに「やや不安を感じている」をあわせた“不安を感じている層”も半数未満となりました。
  • 23年5月の“不安を感じていない層(「全く不安を感じていない」+「あまり不安を感じていない」)”は、32.6%と、調査開始以降最大となりました。

「自分や家族の感染への不安」依然9割でトップ

  • コロナ禍における不安の内容は、「自分や家族の感染」が調査開始以降、継続して9割前後で推移し、3年間を通じてトップとなりました。一方で、「外出自粛など今後の生活形態の変容」「日本経済の低迷」「世界経済の低迷」「必要な日用品の入手困難」に関する不安は、20年5月から20ポイント以上減少しています。
  • 「観光地の衰退」は、20年5月には26.7%でしたが、23年1月には12.4%と約15ポイント減少しています。

23年1月 何らかのコロナ対策を実施 97%

  • 新型コロナに対する日常生活での対策では、この3年間「外出時のマスクの着用」が継続して9割を超える高い水準で実施されていました。「手洗い・うがい」や「訪問先設置のアルコール消毒実施」も、最も実施率が高かった時期(手洗い等:20年5月、アルコール消毒:21年5月)と比べて減少しているものの、比較的高い水準で対策が続けられていました。 また、23年1月時点においても、97%が何らかのコロナ対策を実施していました。
  • 一方、コロナ禍初期に注目された「不要不急の外出自粛」「旅行・レクリエーションを控える」「外食を控える」の実施率は大幅に減少しました。

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発注者 公益財団法人日本交通公社
実施年度 2023年度