FITの動向と志向に関する調査(2017-2018)

概要

FITの動向と志向に関する調査(2017-2018)

東京の下町・谷中にある「澤の屋旅館(館主:澤功)」と公益財団法人日本交通公社は、隆盛が続くインバウンド時代の中で、特に増加が著しく、そして変化の激しいFIT(Foreign Independent Tour、もしくはFree Individual Traveler)に着目し、日本国内における観光行動や消費実態など観光動向全般、並びにわが国の観光、観光地に対する志向などを把握するため共同研究を行いました。具体的には、欧米豪からのFITが9割を占める澤の屋旅館の宿泊客を対象に、一年間アンケート調査を実施しました。

調査結果の概要は以下の通りです。国(居住地)によってそれぞれ観光行動や志向が異なるFITに対し、国や地域はどう対応して行くべきか、本調査の結果を各所でさらに分析、解釈していただき、これからのFIT対応にご活用いただければ幸いです。

報告書の全文はこちらからご覧いただけます「FITの動向と志向に関する調査 -東京・谷中「澤の屋旅館」を事例として-」

調査概要・回答者属性

宿泊客の特性

    国籍別の構成をみると「フランス」19.8%、「アメリカ」15.5%、「オーストラリア」13.6%でほぼ半数を占める。上位3カ国は前回、前々回と変わらない。

  • 続いてイギリス、ドイツ、カナダ、オランダ、イタリア、スペイン、スウェーデンが上位10カ国となる。
  • アジア圏は、「中国」2.0%、「韓国」1.3%、「香港」1.3%、「台湾」1.2%と1割に満たない。
    国籍の構成をエリア別にみると、「北米」20.6%、「欧州」54.3%、「オセアニア」15.3%に対し、「アジア」は7.4%に過ぎない。欧米豪9に対し、アジア1という比率となる。
  • 過去の調査と比較してみると、北米の減少、欧州の増加、アジアの微減といった傾向がみられる。
図表-1 国籍の国別構成比

図表-1 国籍の国別構成比

 

図表-2 国籍のエリア別構成比とその推移

図表-2 国籍のエリア別構成比とその推移

年齢層は、「50歳以上」32.0%、「30代」28.2%で6割を占める。
・過去との比較から、29歳以下の減少、50歳以上の増加が顕著となっており、宿泊客の高齢化傾向がみられる。

職業については極めて多彩であるが、「学者・教員」18.0%、「技術者」13.5%、「会社員」12.7%で上位3位を占める。
・これまでと比較して増加しているのは、「会社員」、「医療関係者」、「自営業・店主」、「公務員・軍務」、「法律家」などであり、一定以上の収入*があり、比較的自由度の高い職業についている割合が高い。

* 有効回答は少ないものの、平均年収は、「1,125万円」であった。また、年収の14%を今回の旅行費用として使っている。

主な調査結果

【訪日旅行回数】
訪日旅行回数は平均2.61回。初めて日本に来訪した旅行者は54.1%と10年前、5年前に比べて徐々に少なくなっている。2回以上のリピーターは41.5%を占め、リピーター比率は、前回調査と比較して0.5ポイントの増加。

【澤の屋旅館利用回数】
澤の屋旅館の利用回数は平均1.53回。初めて利用した旅行者は76.3%、2回以上のリピーターは19.0%を占め、リピーター比率は前回調査と比較して1.5ポイント減少。

【今回の総旅行日数、日本滞在日数、澤の屋滞在日数】
今回の旅行の全行程は、平均20.4日、そのうち日本滞在日数は平均17.3日。澤の屋旅館滞在日数は平均3.6日であった。前回調査と比較して、全行程の平均日数は1.4ポイント、日本滞在の平均日数は1.9ポイント増加し、旅行期間の長期化がみられる。
・ほぼ日本だけを目的に来訪していることが分かる。日本以外に訪問した国としては、中国、台湾、タイ、韓国、香港と続く。

【国内訪問先⇒FITは日本のどこに行っているのか?】
「東京」に次いで「京都」が圧倒的に多く、約6割の人が訪れている。滞在日数も東京の平均3.6日に対して「京都」は平均4.6泊と東京を上回っている。次が「大阪」、そして「広島」、「金沢」という地方都市が続く。
・世界遺産である原爆ドームなど広島に対するニーズは高く、また、北陸新幹線開通による金沢人気は依然として続いているとみられる。いずれもジャパンレールパスの影響が大きいと推察される。
・続いて多い来訪先は都市ではなくいわゆる観光地で、「箱根」、「高野山」、「高山」などが続く。
・瀬戸内海の離島・「直島」(現代アート)が入っていることや名古屋、福岡、札幌以上に「松本」への来訪が多いことなどもユニークな結果といえよう。

図表-3 日本国内で訪問した都市・観光地(上位20カ所)

図表-3 日本国内で訪問した都市・観光地(上位20カ所)

【日本来訪の理由⇒FITが日本を訪れた理由は何か?】

「日本の歴史・文化・芸術に興味があるから」が最も多く63.4%。以降、「日本が好きだから(47.3%)」、「日本食に興味があるから(42.3%)」、「観光するため(37.4%)」が続く。過去の調査と比較すると、「日本食に興味があるから」が顕著に上昇し、16.3ポイント増。
・「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことが大きいものと思われる。
・日本食や日本文化など特定の目的を伴って来訪する旅行者が今後も増えていくものと推察できる。

図表-4 日本への来訪理由

図表-4 日本への来訪理由

【旅行計画時期⇒FITはいつから旅行を計画していたか?】
「6-9ヶ月前」が最も多く25.2%。次いで「3-6ヶ月前」の24.8%であった。以降、「2-3ヶ月前(15.5%)」「9ヶ月より前(10.7%)と、6割超が遅くとも出発の6ヶ月前までに旅行を計画。

・過去の調査と比較し、全体として旅行準備期間の長期化がみられる。

【訪日旅行決定の情報源⇒日本に決めた情報源は何か?】
「自国の友人・家族からの情報」が最も多く38.1%。第2位以降には「ガイドブック(32.2%)」、Lonely Planet Web等の「旅行情報ウェブサイト(25.1%)」、TripAdvisor等の「旅行レビューサイト(17.3%)」が続く。

・過去の調査と比較すると、「自国の友人・家族からの情報」が12.8ポイント増加し、今回調査では「ガイドブック」を上回った。
・また「日本に住む友人・家族からの情報」は6.7ポイント増加しており、信頼できる口コミによる情報がいずれも向上した。

【日本国内の旅行先検討時の情報源⇒日本国内での訪問先を何で決めたか?】
「ガイドブック」が最も多く67.7%。第2位以降にはLonely Planet Web等の「旅行情報ウェブサイト(55.6%)」、TripAdvisor等の「旅行レビューサイト(42.1%)」が続く。

・過去の調査と比較すると、新設の選択肢である「動画ウェブサイト」以外では、「SNS」を除くすべての媒体の選択率が向上している。最近のFIT訪日旅行者は、複数のメディアを情報源として併用する傾向がみられる。
・媒体別にみると、「旅行情報ウェブサイト」が24.8ポイント、「旅行レビューサイト」が26.3ポイントと顕著に増加している。また「動画ウェブサイト」についても15.4%が選択する一方、「SNS」の選択率は低下する結果となった。一方、アジア圏の旅行者は「SNS」の選択率が顕著に高く、国籍エリアによって情報媒体の選択傾向には差異が認められた。今後、FITに対しては、国別、あるいはエリア別の媒体戦略が求められていくものと推察される。

【澤の屋旅館の予約方法】
「Eメール」が最も多く44.8%。次いで「澤の屋ウェブサイト」の38.0%であった。ウェブサイトも予約フォームからメールでの対応となっていることから、8割以上が「Eメール」での予約となっている。他の予約手段は「電話」であり、6.6%となっている。

・一見、アナログな予約方法ではあるが、この予約段階でのやり取りが大切なコミュニケーションとなっており、ミスマッチやノーショーの減少、ひいては満足度向上にも繫がっている。

【今回の訪日旅行で体験した活動⇒FITは日本のどこで何をしているのか?】
「飲食」が最も多く98.1%。次いで「名所・ランドマークの訪問(89.0%)」、「自然・公園での活動(80.6%)」、「買物(75.4%)」が続く。

・「どこで」という場所を記入した割合は34.0%であり、特に「スポーツ・アクティビティの実施」で高い傾向を示した。また、「芸術(48.4%)」、「文化体験(48.5%)」、「美容・休養(49.8%)」、「エンターテイメントの実施や観賞(62.4%)」なども場所を明示する傾向が高い。
・逆に「飲食」や「買い物」は、特定の場所を記入した割合は低くなる傾向がある。

図表-5 日本国内で体験した活動

図表-5 日本国内で体験した活動

1.飲食
根津周辺、谷中、渋谷、新宿、築地、銀座、逗子(豆腐)…/魚市場、民宿、旅館での夕食…/蕎麦、日本酒、うどん、ラーメン、神戸牛、寿司、やきとり、湯葉、納豆…

2.名所・ランドマーク
旭山動物園、六本木、根津神社、日光、会津若松城、善光寺、伏見稲荷、竜安寺、高野山、小笠原、原爆ドーム、東京タワー…

3.自然・公園
上野公園、上野動物園、明治神宮、浜離宮、成田山、中山道、熊野古道、富士山、松本、馬籠、阿蘇、しまなみ海道、華厳の滝、河津、西表、宮島、熊本城、広島城、平和記念公園…

4.買物
秋葉原、表参道、原宿、渋谷、上野、銀座、横浜、浅草、新宿、中目黒、代官山…/ドンキホーテ、ドラッグストア、ヨドバシカメラ、三越、東急ハンズ、くまもんスクエア、ユニクロ…/焼き物、市場、着物、ゆかた、伊万里焼、ポストカード、100円ショップ…

5.芸術
根津美術館、日動コンテンポラリーアート、国立新美術館、彫刻の森、森タワー、歌舞伎座、江戸東京博物館、下町風俗資料館、久保田一竹美術館、北斎美術館、東京国立博物館、国立能楽堂、松本市美術館、横浜美術館、箱根ガラスの森、スヌーピーミュージアム、MOA美術館、直島、カップヌードルミュージアム、三鷹市立アニメーション美術館…

6.ナイトライフ
秋葉原(ゲーム、カラオケ)、新宿(ゴールデン街、歌舞伎町)、新大久保、表参道、横浜、谷中、下北沢、赤坂、道頓堀、中目黒、渋谷…

7.文化体験
金沢市、歌舞伎、直島、高野山、神社、料理教室、柳川、天橋立、渋温泉、茶道、書道、着物、ひな人形づくり、箱根、修善寺、築地、金沢・金箔、三味線、お好み焼き、藍染め教室、能面…

8.美容・休養
河口湖、城崎温泉、加賀温泉、別府温泉、別所温泉、黒川温泉、武雄温泉、下呂温泉、熱海温泉、みなかみ温泉、宝川温泉、湯の峰温泉、お台場、ラクーア、ミッドタウン(マッサージ店)、平和島、箱根温泉、中津川温泉…

9.スポーツ・アクティビティ
スキー(ニセコ、白馬、赤倉温泉、野沢温泉)、木曽谷ハイキング、日本アルプス、乗鞍、大山、富士山、宮島、馬籠・妻籠ハイキング、阿嘉島(シュノーケリング)、尾道サイクリング、上高地、鞍馬山ハイキング、墨田川ランニング、白石島、四国山登り、羽黒山、地獄谷野猿公苑、猪苗代、野球観戦、蒲郡セイリング…

10.エンターテイメント
東京ディズニーシー、旭山動物園、上野公園、スカイツリー、東京マリオカート、両国国技館、ユニバーサルスタジオ、サンシャインシティ、水族館、動物園、サンリオピューロランド、野球観戦、ロボットレストラン、キッザニア、メイド喫茶、相撲の稽古、日光江戸村、相撲観戦、フクロウカフェ、京都祇園周辺…

11.その他
酒蔵、東京大学、新幹線、東京国際フォーラム、リニア・鉄道資料館、京都鉄道博物館、入谷朝顔まつり、砕氷船(網走)、日暮里繊維街、倉敷市児島、軍艦島、高野山、多治見市・美濃市、北鎌倉…

(注)順不同

【国内で利用した交通機関⇒FITは何で移動しているか?】
「地下鉄」88.1%、「JR」87.5%、次いで「新幹線」65.3%となっており、「路線バス」や「タクシー」、「私鉄」などの利用は、それほど多くない。

・調査地である澤の屋旅館の立地によるところが大きいものと思われるが、圧倒的に「地下鉄」であり、地方への移動は「JR」によって行われているものと推察できる。
・また、利用した鉄道パス等では、「ジャパンレールパス」56.2%、「ICカード(PASMO、SUICA等)」41.9%、「Tokyo Subway Ticket」35.6%となっている。
・交通に関する情報源は、「モバイル機器」が62.75、と最も高くなっているが、「ガイドブック」58.4%、「地図・パンフレット」50.5%と、FITの中でも欧米豪はいまだに紙媒体の利用が少なくなく、「インフォメーションデスク」も36.4%と対面による案内も支持されている。

【日本滞在中のストレス⇒FITは何にストレスを感じているのか?】
「ストレスを感じなかった」が最も高く50.2%である。次いで「公共交通機関を利用する時」25.4%、「英語表記のない標識」21.3%、「レストランで注文する時など」10.4% であり、他はそれほどストレスを感じていない。
・国籍別にみると、「ストレスを感じない」比率は、オーストラリアが最も高く、次いで欧、米の順である。逆にアジア圏はどの状況でもストレスを感じる比率がやや高いが、「英語表記のない標識」に対してはストレスを感じる比率が顕著に低い。この理由として、漢字を判読できる旅行者が一定数を占めることが想定される。

図表-6 日本滞在中にストレスを感じた状況

図表-6 日本滞在中にストレスを感じた状況

【訪日旅行の満足度⇒FITは日本旅行に対して満足したのか?】
「非常に満足」68.8%。「満足」19.4%と、全体の88.2%が満足したと回答。ただし、前回調査と比較し、8.4ポイントの減少となった。
・国籍別にみると、欧州89.4%、豪州88.3%、北米88.0%に対し、アジア79.6%と必ずしも高くないことが分かる。
・なお、来訪回数による満足度の変化はほとんど見られない。

図表-7 訪日旅行に対する満足度

図表-7 訪日旅行に対する満足度

【澤の屋旅館の総合満足度/再来訪以降⇒FITは澤の屋旅館に対して満足したのか?】
「非常に満足」74.0%。「満足」15.8%と、全体の89.8%が満足したと回答。ただし、前回調査と比較し、8.3ポイントの減少。再来訪については、59.1%が「とてもそう思う」、22.1%が「そう思う」と81.2%が再来訪の意向を示した。

・特に「清潔さ」、「ホスピタリティ」に対して「大変満足」する割合が高い。
・概してアジア圏の満足度は欧米豪に比較して高くない。

図表-8 澤の屋旅館に対する総合満足度

図表-8 澤の屋旅館に対する総合満足度

 

図表-9 澤の屋旅館への再来訪意向

図表-9 澤の屋旅館への再来訪意向

【国内の訪問先での利用宿泊施設⇒FITはどこに泊まっているか?】
「旅館」が最も高く34.8%。次いで「ホテル」が19.1%となっている。「個人宅・民泊」は8.1%とまだ少ない。
・「旅館」の選択率はアジア圏がやや高く、「ホテル」ならびに「ホステル / ゲストハウス / カプセルホテル」の選択率は、欧米豪がやや高い。「個人宅・民泊」の選択率は、国籍エリア「その他」がやや高いのみであり、特定地域からの来訪者が民泊等を積極的に利用する傾向は認められなかった。

図表-10 国内での利用宿泊施設

図表-10 国内での利用宿泊施設

 

アンケートから見えてきたこれからのFIT対応の方向性

欧米豪からのFITが9割を占める澤の屋旅館の宿泊客に対する今回のアンケート調査の結果から、これからのFITへの対応は、以下のような方向性が考えられる。

◎国籍(居住地)や性・年齢、さらには訪日経験などによって異なる観光ニーズの把握

宿泊客の大半が日本だけを目的として来訪し、欧米豪で平均15日程度、アジア圏で8日程度滞在している。これは前回調査、前々回調査と比較しても長期化の傾向を示しており、日本人とは異なる“たっぷり時間をかけて日本を楽しむ”タイプの旅行が行われている。旅行を計画する時期も早く、十分な検討(検討することも旅の楽しみの一つ)を行ってから来訪していることがわかる。

また、北米とオセアニアでは「ホテル」、欧州では「ホステル/ゲストハウス/カプセルホテル」の選択率がそれぞれやや高いことから、欧米豪からのFITは長期の旅行中にさまざまな形態、さまざまな料金帯の宿泊施設を選択し、メリハリのある旅行をしていることが推測される。さらに、訪問先の自由回答から、原爆ドーム、京都祇園、松本城、日光江戸村、道頓堀、各地の温泉に代表される「古き良き(典型的な)日本」の像だけでなく、京都鉄道博物館、キッザニア、歌舞伎町とゴールデン街、メイド喫茶やフクロウカフェ、国立新美術館といった「新時代の日本」像も、FITによって旺盛に発見され、体験されている。

いわば、日本を堪能しつくすといった旅行形態であり、「旅行の手段」も「旅行の目的」も多様性に富む、まさに心底「日本の旅を楽しんでいる」ことが分かる。

◎セグメントに応じた適切な情報提供手段(情報源)の必要性

FITが日本への来訪を決める情報源と日本国内のどこを訪問するか、どこに宿泊するかを検討する情報源はそれぞれ異なる。日本を旅行先に決めた情報源は、友人・知人からの情報が前回調査に比べて増加しており、ネット情報などではなく、信頼できる人からの情報が重要であることがわかる。

旅行先を日本に決めてからの情報源は、ロンリープラネットをはじめとするガイドブックやレビューサイトが使われており、SNSの利用はアジア圏に多いものの、欧米豪ではそれほど高くない。今後、多様な情報媒体をどう活用していくか、その戦略が問われていくこととなる。

ちなみに、OTA(Online Travel Agent)全盛の時代において、12室の澤の屋旅館が採用している予約方法はある意味ユニークであり、Eメールによる丁寧なコミュニーションが行われている。これによってニーズの読み間違いなどのミスマッチが減少し、良識ある堅実な宿泊客の獲得が可能となっている。小規模宿泊施設の一つの予約・販売戦略といえるかもしれない。

◎急速に進む地方分散化への対応

調査地が東京であることから当然東京への訪問が最も多いが、次に多いのが圧倒的に京都であり、大阪であることから未だゴールデンルート強しと言える。ただ、その次が「広島」、「金沢」という地方都市であることは、FITの訪問先が地方分散の傾向を示していることを示している。さらに「箱根」や「高野山」、「高山」といった地方の観光地にも足を運んでいる。いずれもジャパンレールパスの影響が大きいものと推察されるが、逆に民鉄やバスなどの利用は低いままとなっている。公共交通機関の利便性確保は地方分散のポイントともいえ、英語対応を含めた地方における受入れ環境整備が喫緊の課題となっている。

◎多様な体験と、より深い、質の高い体験の提供

今回、FITはどこで何をしたかという旅行行動について詳細な分析を試みた。確かに多様であり、日本人も知らない地域やお店、体験をしていることは事実であるが、地域の資源が十分活用されているかについては課題も見受けられる。具体的には「ナイトライフ」や「美容・休養」、「スポーツ・アクティビティ」、「エンターテイメント」などである。これらは、まさに外国語による「ガイド」の育成とガイドツアーの抜本的な充実が必要であり、それによってより深い、また質の高い日本文化体験が可能となる。

これは、また次回、日本に訪れてもらえるかどうか、リピーターとなってもらえるかどうかの重要なポイントであり、その意味では前回調査と比較して日本に対する「満足度」が相対的に低下していることは気になるところであり、今後、地域をあげたFIT対応が求められる。

この研究・事業の分類

発注者 公益財団法人日本交通公社
実施年度 2017-2018年度