先読み!マーケット 第二十四話

概要

先読み!マーケット 第二十四話
図1 オピニオンリーダー層の段階的抽出(概念図)

第二十四話 オピニオンリーダー層に聞く2014年の国内旅行動向

公益財団法人日本交通公社では、昨年11月末から12月上旬にかけて国内旅行市場の中心を担うオピニオンリーダー層を対象に調査を実施しました(「JTBFオピニオンリーダー層調査」)。
調査は、約5万人のインターネットモニターから1,148人のオピニオンリーダー層を抽出して質問を行いました(図1)(調査の概要)。

注)本稿で用いる「国内旅行」は観光やレジャー、保養などを主な目的とする旅行を指します。出張・業務、帰省など家事を主な目的とする旅行は除きます。

 

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報告

◇ 回数「増える」は、前回調査の40.4%から31.8%に減少 ◇

2014年の宿泊を伴う国内旅行回数については、昨年に比べて増加する(「かなり増える」+「少し増える」)との回答が31.8%と昨年調査の40.4%から8.6%ポイント減少しました。これは世界金融危機の影響を受けた2008年調査時の21.6%を除くと、調査開始以来最も低い数値になっています。「減る」と回答した人も15.9%と、昨年の12.8%より3.1%増加しています。オピニオンリーダー層の旅行意欲は鈍化していると言えるでしょう。
参考までに年代別の「増える」の比率は、「60代」で37.0%(昨年39.4%)、「20代」で35.4%(昨年48.9%)と他の年代よりも高くなっていますが、いずれも昨年よりも低下しています。

図2 今年1年間の旅行回数の増減

図2 今年1年間の旅行回数の増減

ところで、第一回調査以降のオピニオンリーダー層の旅行意欲と「家計調査」からみた実績値は東日本大震災のような突発的要因による影響を除くとある程度連動しています(図3)。4月以降、オンピークのGWや夏期を除くと、回数、単価ともに厳しい市場環境になる可能性があります。もっとも、1-3月期の増税の駆け込み需要や、政府の景気対策拡大といった要素もあり、暦年ベースで大きく落ち込む可能性は低いと考えられます。

図3 オピニオンリーダー層の旅行意向と実績(家計に占める宿泊費比率)

図3 オピニオンリーダー層の旅行意向と実績(家計に占める宿泊費比率)

資料: 「JTBFオピニオンリーダー層調査」、「家計調査年報」(総務省)

◇ 旅行回数が増えない理由は、消費税の増税がトップ ◇

旅行回数が「横ばい」または「減少する」と回答した方にその理由を聞いた結果が図4です。①「消費税率が8%に上がるので」が33.3%と最も高く、以下、②「混雑する時期に旅行に行きたくない」22.0(昨年度20.4%)、③「有給休暇をとりにくい」20.4%(同16.7%)、④「家族と休暇が重ならない」19.3%(同19.8%)、と続いています。昨年大幅に減少していた「自分や家族の給与やボーナスの減少」「景気の先行きが不透明」といった経済的要因が再び増加に転じており、オピニオンリーダー層の景気への警戒感が強まっていることが読み取れます。

図4 旅行が増えない理由

図4 旅行が増えない理由

また、国内宿泊旅行1回あたり費用の増減見込みについても、「増える」(「かなり増える」+「少し増える」)が28.1%(昨年32.0%)から3.9%ポイント減少しました。「減る」は15.9%(同11.0%)と増加に転じています(図5)。

図5 1回あたり旅行費用の増減

図5 1回あたり旅行費用の増減

◇ 格安旅行、いやし、鉄道旅行、LCCへの注目度が上昇 ◇

国内宿泊旅行について今後重視していきたいこと(引き続き重視したいことを含む。複数回答)については、この3年間で回答傾向に大きな変化はありませんでした(図6)。
「気分転換、リフレッシュすること」83.9%、「美味しいものを食べること」80.3%、「休養、リラックスすること」76.0%、「同行者と一緒に楽しむこと」70.6%の順で回答が多くなっています。昨年に比べて増加が目立つ選択肢は、「地域の文化に触れること」「日常の人間関係から解放されること」「できるだけお得な旅行をすること」などです。

図6 国内旅行で今後重視したい点

図6 国内旅行で今後重視したい点

オピニオンリーダー層からみて“2014年に増えそうな旅行活動や旅行スタイル”についても自由回答形式で聞きました。類似回答を分類した上で集計すると、「温泉」「自然体験」「グルメ」といった定番の活動がやはり上位に挙がっています(図7)。昨年調査と比べると、「格安旅行・低価格旅行」「いやし・ゆったり」「鉄道による旅行」「LCC」といった回答が増加しています。

図7 2014年に増える旅行活動・旅行スタイル

図7 2014年に増える旅行活動・旅行スタイル

オピニオンリーダー層の周囲への影響力を踏まえて、「今年行った国内の旅行先の中で他の人にもオススメしたい旅行先」についても聞いています。この回答比率は、訪問率と推薦意向の相乗的な指標であり、観光地の競争力を図る上で参考となるものと考えています。
都道府県別の集計結果をみると、1位から4位まで3年連続して①北海道、②沖縄県、③長野県、④京都府の順で変わっていませんが、いずれも回答率は減少しています(表1)。一方で、2012年には圏外にあった⑥熊本県、⑦三重県、⑨島根県が、九州新幹線全通や式年遷宮の効果で上昇しました。こうした地域については、来年自分が訪れたい地域としての回答も多く、当面好調が持続するものと考えられます。

表1 おススメの観光地(県別集計)上位県の動向

表1 おススメの観光地(県別集計)上位県の動向

(塩谷英生)

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発注者 公益財団法人日本交通公社
プロジェクトメンバー 塩谷英生
実施年度 2013年度